2026年1月26日

その他

「いい人」は広告のどこを見ているか?  採用広告のクリエイティブで応募の質が変わる

 

採用に関する広告の相談を受けていると、よく出てくる言葉があります。
「いい人が来ない」という声です。この「いい人」とは、学歴や職歴が立派な人だけを指しているわけではありません。面接で感じがよく、現場で周りとうまくやれて、変化にも踏ん張れる人。言い換えるなら、入社後にちゃんと戦力になり、長く働いてくれる人のことです。

ところが今、そうした人ほど「求人広告に載っていること」だけでは動きません。むしろ、広告を読む目がいちばん厳しいのがこの層です。採用難とは、応募数が集まりにくいという話だけではありません。応募の入口で候補者が会社を見抜く力が上がった時代だと捉えたほうが、実感に合います。

背景には市場のタイトさがあります。厚生労働省が公表する一般職業紹介状況によると、2024年12月の有効求人倍率は1.25倍で、正社員有効求人倍率も1.03倍とされています。仕事を探す人より求人のほうが多い状態が続く限り、候補者は「入る会社を選ぶ側」に立てます。加えて、総務省統計局の労働力調査では、2025年11月の就業者数は6862万人で前年同月比48万人増、完全失業率は2.6%と示されています。求人が足りないというより、人が動く理由が変わり、動く先の見極めがシビアになった、と見るのが自然です。

新卒採用でも同じ方向の変化が起きています。
リクルートワークス研究所のレポートでは、2025年卒の大卒求人倍率が1.75倍とされ、コロナ禍の影響が大きかった時期を除けば直近10年は高水準が続いていると整理されています。学生にとっても「選べる」感覚が戻り、企業理解の解像度を上げてから意思決定する動きが強まっています。だからこそ、採用サイトや説明会の資料だけでなく、求人原稿やSNS、社員の発信まで、全体の整合性が問われます。

ここで先に結論を置きます。
「いい人」が採用広告で見ているのは、キャッチコピーの上手さではありません。会社の矛盾の少なさと説明責任です。美辞麗句の巧みさではなく、生活と仕事がつながる具体性です。夢ではなく、地に足のついた約束です。求人広告は入口ですが、入口で感じた違和感は、SNSや口コミ、面接で確かめられて、早い段階で離脱につながります。
実際、転職活動では口コミの影響が大きいことが調査にも出ています。エン・ジャパンが『エン転職』ユーザー4513名に行った調査では、転職活動中に社員クチコミを見る人が50%で、そのうち社員クチコミの影響で応募や選考、内定を辞退した経験がある人が67%と報告されています。しかも、クチコミで不安になった点を企業に質問していない人が85%という結果も示されています。ここが重要です。候補者は疑問をぶつけて確認してくれるとは限りません。違和感があれば、静かに去ります。採用広告は「魅力を盛る場」ではなく、「疑いの余地を減らす場」になっています。

ここでは、採用難時代に「いい人」が求人広告のどこを見ているのか、そして嘘のない採用クリエイティブをどう作れば選考歩留まりを上げられるのかについて説明していきます。

 

採用難時代に「いい人」が見る求人広告の4つのポイント

候補者は、求人の文章を読み物として楽しむのではなく、意思決定の材料として読みます。慎重な人ほど、決まってチェックするポイントが似てきます。
まず押さえておきたいのは、採用広告は単体で読まれていないということです。マイナビの転職動向調査2025年版(2024年実績)では、情報収集での利用率は「転職サイト」がトップで半数弱、次いで「人材紹介会社」「職業安定所」と続くとされています。候補者は、ひとつの媒体で完結させず、いくつも横断して「同じ会社に見えるか」を確かめています。求人広告は、その横断の起点に置かれることが多いのです。だから一行の表現が、その後の企業研究の方向を決めてしまいます。

仕事内容の具体性

仕事内容の輪郭が曖昧な求人広告は、最初に落とされます。
職種名やミッションが立派でも、実際に何をするのかがぼんやりしていると、慎重な人ほど身構えます。彼らは自分の時間を守る感覚が強いので、「入社してから聞けばいい」は通用しません。具体的な業務の範囲、誰と連携するのか、成果物のイメージ、判断の権限、繁忙期の波。ここが書けていないと、候補者は「この会社は仕事を説明できないのか、それとも説明したくないのか」と疑います。

このとき、よくある誤解があります。具体的に書くと応募が減るのでは、という恐れです。たしかに、仕事内容を細かく書けば合わない人は離れます。でも、それは減るのではなく、最初から合わない人が去るだけです。採用が厳しい時代ほど、母集団の大きさより、選考の歩留まりが重要になります。面接枠が足りない、現場が疲れている、教育コストが重い。こうした状況では、合わない応募を減らすほうが経営の体力を守れます。嘘のない採用クリエイティブは、そのための道具です。

条件と制度の透明性

次に見られているのは、条件の読みやすさです。
給与のレンジが広すぎないか、固定残業の扱いが曖昧ではないか、試用期間の条件が分かりにくくないか。候補者が知りたいのは難しい専門用語ではなく、生活が成り立つ見通しです。ここで効くのは「内訳」と「根拠」です。たとえば、同じ年収レンジでも、評価の基準と昇給の頻度が書かれている会社は、同じ金額でも安心されます。

制度や福利厚生も、「いい人」ほど細かく見ます。マイナビの転職動向調査2025年版(2024年実績)では、転職時に応募意欲が上がる制度として「退職金」が42.8%で最多と報告されています。制度は飾りではなく、生活の安全網です。だから「福利厚生充実」という一言では足りません。誰がどこまで使えるのか、実際に使われているのか。制度があることより、運用されていることが評価されます。

人間関係とマネジメントの実態

候補者が一番怖がるのは、人間関係とマネジメントです。
これは求人広告の中で一番書きにくい部分ですが、一番離脱につながりやすい部分でもあります。先のエン・ジャパンの調査でも、社員クチコミが影響した内容として「人手不足・人が辞める」「従業員の士気の低さ・人間関係の悪さ」が上位に入っています。候補者が怖いのは、能力不足で怒られることよりも、理不尽で逃げ場がない状況です。だから「風通しが良い」「アットホーム」といった抽象語より、相談の導線がどこにあるか、1on1の頻度、評価のフィードバックの形、困ったときに誰が助けるか、を具体化したほうが効きます。ここでも、きれいに言うより、運用の事実を書くほうが強いのです。

言葉の誠実さ

もう一つ、採用広告で見られているのが「言葉の誠実さ」です。
誠実さは、道徳の話ではありません。文章の中にある、逃げ道の作り方に出ます。たとえば「誰でも活躍できます」と言い切る求人広告は、候補者の目には不誠実に映りやすいのです。誰でも活躍できる職場はありません。活躍できる人の条件があるからこそ、採用は成立します。条件をぼかすほど、候補者は「採用してからふるいにかける会社なのでは」と警戒します。逆に「こういう人は合う」「こういう人は合いにくい」を言える会社は、現場が自分たちの仕事を理解していると伝わります。

ここで「嘘」と「表現」の境界を整理しておきます。
嘘は、事実と違うことを書くことだけではありません。事実の一部だけを切り取り、誤解が起きるように書くことも嘘になります。たとえば「リモート可」と書きながら、実際は週五で出社する部署しかない場合。あるいは「残業少なめ」と書きつつ、繁忙期は終電が続くのに説明がない場合。候補者は、言葉が間違っているかどうかよりも、説明の抜けを見ます。抜けがあると「都合の悪いことを隠す会社」という評価に変換されます。

 

"

 

応募の質を高める採用広告の作り方

採用のゴールを「応募数」から「入社後の定着」へ置き直すことが最初の一歩です。
応募数を追うと、表現はどうしても甘くなります。甘い表現は、入口の数字は伸ばしても、途中で離脱を増やします。採用が詰まるのは、多くの場合、応募の数ではなく、面接や内定承諾の歩留まりです。そこを改善するには、入口で誤解を減らすほうが効きます。

現場の一次情報を集める

そのために必要なのが、現場の一次情報です。
経営や人事の理想だけで求人原稿を作ると、現場の温度とズレます。ズレは文章の端々に出て、候補者は敏感に嗅ぎ取ります。たとえば「裁量がある」と書くなら、その裁量は何を指すのか。予算か、スケジュールか、提案の自由度か。誰が最後に決めるのか。ここが曖昧だと、裁量という言葉は空気になります。逆に、現場が語るエピソードが一つ入るだけで、裁量は手触りになります。

現場ヒアリングで大切なのは、成功談だけを集めないことです。むしろ、つまずいた話、怒られた話、失敗から立ち直った話に、会社の真面目さが出ます。候補者が知りたいのは「この会社はミスを許さないか」ではなく、「ミスが起きたとき、どう扱うか」です。厳しさがあるなら厳しさを、ただし理不尽ではないことを、運用の言葉で説明する。これができると、採用広告は一気に信頼されます。

整合性を設計する

求人広告の中の「比較される場所」を意識します。
候補者は求人媒体の中だけで比べていません。採用サイト、SNS、口コミ、ニュース、知人の評判、面接の受け答え。点ではなく線で見ています。だから採用広告のコピーは、単体で美しくあるより、他の接点と矛盾しないことが大切です。

ここで効くのが「整合性の設計」です。たとえば、求人原稿では仕事内容を具体的にし、採用サイトではその背景や価値観を補い、SNSでは日常の空気を見せる。役割分担ができると、どこか一つに無理が出ません。逆に、どの媒体も同じことしか言っていないと、候補者は「隠していることがあるのでは」と疑います。媒体ごとに言うべきことが違う。その前提で全体を組み立てると、嘘が入り込む余地が減ります。

理念を日々の業務に落とし込む

「いい人」が求人広告で見ているのは、企業が自分の課題と向き合えているか、という態度です。
採用広告でよくあるのが、世の中の理想像を借りてきてしまうことです。「挑戦」「多様性」「心理的安全性」。言葉自体は悪くありません。ただ、借り物の言葉は、会社の実態と結びついていないとすぐに見抜かれます。候補者が確かめるのは、理念の正しさではなく、理念が日常でどう運用されているかです。

だから、理念を語るなら、日常の行動に落とす必要があります。たとえば「挑戦」を掲げるなら、失敗したときの扱い方まで書く。「多様性」を掲げるなら、働き方の選択肢や評価の公平性に触れる。言葉を増やすのではなく、言葉の裏側にある手続きまで見せる。これが、嘘を減らす最短ルートです。

口コミへ先回りする

口コミとの付き合い方も、採用クリエイティブの一部になりました。
クチコミで不安になっても企業に質問しない人が多いなら、企業側から「よくある不安」と「事実」をセットで出しておくほうが合理的です。
たとえば「残業」の話題が出やすい職場なら、残業が発生する理由と、発生しないようにしている工夫、繁忙期の例外、代休や振替の運用までを一続きで説明する。人手不足が指摘されやすいなら、採用の方針や配置の見直し、外注やツール導入などの対策と、その途中経過を正直に書く。
もちろん、ネガティブな話題を自分から広めたくない気持ちは分かります。それでも、候補者は既にどこかでその情報に触れている可能性が高いのです。ならば、企業の言葉で文脈を足すことが、結果的に誤解を減らします。

 

採用広告で効果を出す実践的な表現テクニック

候補者が確かめたいのは、きれいな世界観ではなく、現実の運用です。運用に触れる情報が増えるほど、求人広告は強くなります。逆に、運用に触れない情報を増やすほど、広告は弱くなります。

抽象語を運用の事実に置き換える

採用広告でよく使われる言葉のうち、特に疑われやすいのは「成長できる」「裁量がある」「風通しが良い」「若手が活躍」「アットホーム」です。これらは便利ですが、候補者の目には「何も言っていない」と映りがちです。
置き換えるなら、成長は「何ができるようになったら次の仕事を任されるのか」。裁量は「どの範囲まで自分で決めていいのか」。風通しは「誰に、どのタイミングで、どう相談できるのか」。若手活躍は「何年目でどんな役割を担った事例があるのか」。アットホームは「仕事の場でどんな関わり方をしているのか」。抽象語を削って、運用の事実に寄せていく。この地味な作業が、採用難時代の勝ち筋になります。

求人原稿の具体的な書き換え例

たとえば、求人原稿のコピーをこう変えます。前者はよくある言い方、後者は嘘を減らす言い方です。

「裁量を持って働けます」という表現は、「入社後三か月は先輩とペアで担当し、四か月目からは小さな案件を一人で持ちます。見積と提案はあなたが作り、最終確認はリーダーが行います。慣れたら、クライアントへの提案同席も任せます」と書き換えられます。
「未経験歓迎です」という表現は、「未経験でも応募できます。ただし、入社後に学ぶ量は多いです。最初の一か月は基礎研修とOJTで、二か月目から実務に入ります。分からないことはチャットで質問でき、回答は当日中を目標にしています」と書き換えられます。

文章が長く見えるかもしれません。でも、候補者はこうした情報をどこかで探します。求人広告の中に置けば、探す負担が減り、信頼が増えます。

不安の先回りをする

いま強いのは「不安の先回り」です。先ほど触れたように、クチコミで不安になっても企業に質問しない人が多いという調査結果があります。ならば、質問が来るのを待たずに、採用広告の中で先に答えてしまう。
たとえば、忙しさがある職場なら「忙しい日の一日の流れ」を示す。クレーム対応がある職種なら「メンタルケアや相談体制」を書く。未経験歓迎なら「入社後の学び方」を具体化する。こうした情報は、応募数を増やす魔法ではありませんが、ミスマッチを減らし、選考歩留まりを上げ、結果として採用効率を上げます。

 

嘘のない採用クリエイティブがもたらす採用効果

弱点を書くのは怖い。けれど、候補者側は「弱点がない会社」ではなく、「弱点を放置しない会社」を探しています。人手不足で忙しいなら、その忙しさをどうコントロールしているのか。未整備な制度があるなら、いつ誰が整えるのか。成長フェーズで混乱があるなら、混乱をどう学びに変えるのか。弱点を隠すと、口コミや面接で露見した瞬間に信頼が崩れます。最初から認めたうえで、対処の筋道を示せば、むしろ「誠実な会社」という評価に変わります。

採用ブランディングへの効果

嘘のない採用クリエイティブは、企業側にとってもメリットがあります。
採用活動の説明責任が増し、現場の言語化が進むからです。言語化が進むと、面接の質問が揃い、評価軸が揃い、オンボーディングの設計にもつながります。採用広告は、外向けの広報であると同時に、内向けの整理整頓でもあります。結果として、採用マーケティングと人事の連携が深まり、採用ブランディングが強くなります。

ここでいう採用ブランディングは、かっこいい動画を作ることではありません。働く約束を、社内外で同じ言葉で言えるようにすることです。会社が候補者に提供できる価値を、社員自身が説明できる状態にすることです。「この会社に入ると、何が得られて、何が大変で、何を求められるか」。これを嘘なく言えることが、採用難時代の武器になります。

中小企業における優位性

中小企業や個人事業に近い規模の組織ほど、このやり方は効きます。大企業のように待遇で圧倒できない分、誠実さと具体性で勝てるからです。
たとえば、制度が整っていないなら、その代わりに意思決定が早い、提案が通りやすい、顧客と近い、学びが濃い、といった強みがあるはずです。ただし、強みも言い切りではなく、事実で支える。どういう案件で、どんな裁量があり、どんな支援があるのか。小ささの強みは、具体例が出しやすいという点にあります。

整合性という基準

採用難時代に勝つための「嘘のない」採用クリエイティブの基準を置いておきます。それは、候補者が別の場所で確かめても、同じ会社に見えることです。求人原稿、採用サイト、SNS、口コミへの向き合い方、面接の受け答え。すべてが一枚の絵としてつながっていること。ここまで揃うと、採用広告は奇抜である必要がなくなります。むしろ、落ち着いたトーンでも「信頼できる会社」として記憶に残ります。

 

採用広告についてよくある疑問

採用広告に弱点を書くと応募が減るのではないか、という心配をよく聞きます。
結論から言えば、合わない人が離れるだけで、適切な候補者の選考歩留まりはむしろ上がります。採用難時代ほど、母集団の大きさより選考の効率が重要です。弱点を隠すと口コミや面接で露見し、そこで信頼が崩れます。最初から認めて対処の筋道を示せば、誠実な会社として評価されます。

求人広告で「いい人」が最も見ているポイントは何か、という質問もあります。
仕事内容の具体性、条件の透明性、人間関係の実態、言葉の誠実さの4点です。特に「仕事内容の輪郭」と「運用の事実」が書かれているかを確認しています。抽象的な言葉より、具体的な業務の流れや制度の運用実態が評価されます。

中小企業でも効果的な採用広告は作れるのか、という不安もあるかもしれません。
中小企業ほど、このやり方は効きます。大企業のように待遇で圧倒できない分、誠実さと具体性で勝てるからです。制度が整っていない代わりに、意思決定の速さや顧客との距離の近さなど、小ささの強みを具体例で示せます。

採用広告の整合性とは何か、という点も補足しておきます。
求人原稿、採用サイト、SNS、口コミ、面接の受け答えなど、すべての接点で同じ会社に見えることです。候補者は複数の媒体を横断して確認するため、どこか一つでも矛盾があると信頼を失います。媒体ごとの役割分担を明確にし、全体として一枚の絵になるよう設計することが重要です。

 

まとめ

「いい人」は、甘い言葉に動かされません。
彼らは求人広告を、会社の人格がにじむ文章として読みます。だからこそ、採用クリエイティブは、コピーのうまさだけで勝負しないほうがいいのです。言葉を飾るより、事実を磨く。隠すより、説明する。その積み重ねが、採用難時代のいちばん強い近道です。

採用広告でお悩みの企業様は、ぜひ当社へご相談ください。当社は交通広告からデジタルサイネージ、各種メディアまで幅広く取り扱っており、採用広告の制作から媒体選定まで一貫してサポートいたします。求人原稿の作成から採用ブランディングまで、貴社の採用課題に合わせた最適なソリューションをご提案いたします。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

 

 

運営者情報

運営者
株式会社キョウエイアドインターナショナル
住所
東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル17階
お問い合わせ
https://kyoeiad.co.jp/contact/
電話番号
0120-609-450

関連記事