2026年10月14日

交通・屋外広告

鉄道広告はどう届くのか 日々の移動と外出の目的から考える接点

 

毎朝同じ駅から電車に乗る人もいれば、通院や買い物のために利用する人、旅行先で初めてその駅を訪れる人もいます。鉄道はさまざまな目的の移動に使われ、その途中にある駅や車内は、企業や商品、地域のサービスを知る場所にもなっています。

鉄道広告の特性の一つは、同じ経路を使う人に、くり返し接する機会があることです。一方で、ふだんは使わない駅や路線で、新しい情報に出会う機会もあります。広告を見る回数に加え、どこへ向かう途中なのか、駅を歩いているのか、車内で過ごしているのかによっても、情報の受け取り方は変わります。鉄道広告を考えるときは、利用者数とあわせて、こうした移動の中身にも目を向けたいところです。

ここでは、通勤・通学から通院、買い物、観光まで、日々の移動と外出の目的をもとに、鉄道広告の特性と、消費者との接点のつくり方について説明します。

 

移動のなかで接する鉄道広告

鉄道広告は、駅を歩くとき、列車を待つとき、車内で過ごすときなど、移動の途中にあります。そこで新しい情報を知る機会と、同じ経路を使うことでくり返し接する機会が生まれます。まずは、この二つの特性から広告の届き方を見ていきます。

駅と車内で生まれる情報との出会い

商品やサービスについて知りたいとき、多くの人は名前や関連する言葉で情報を探します。鉄道広告には、そうした検索よりも前に、企業や商品を知ってもらう接点としての役割があります。駅や車内で目にした広告が、それまで知らなかった名前や、自分からは調べようとしていなかった情報にふれるきっかけになることもあります。

ジェイアール東日本企画と野村総合研究所が2021年に発表した共同研究では、交通広告の特徴の一つとして、見る人が自分から目を向ける「自主視認性」を挙げています。駅や車内に広告があっても、全員が同じように見るわけではありません。目に入った情報のなかから、関心を持ったものに目を向けるという届き方です。

たとえば、駅を通り抜ける途中で企業名が目に入ったり、列車を待つ間に近くのポスターを読んだりすることがあるでしょう。車内では、乗っている間に広告の写真や言葉へ目が向くこともあります。どの場面でも、広告を見るために時間を取っているわけではありません。その場所から何が見え、どこまで読めるかが届き方を左右します。

広告をつくるときは、まず何を知ってもらいたいかを決めることが大切です。企業名なのか、商品やサービスの中身なのか、店舗の場所なのか。伝えたいことの中心がはっきりしていれば、移動中に少し目を向けただけの人にも受け取ってもらいやすくなります。鉄道広告の接点を生かすには、掲出する場所と、そこで伝える内容を一緒に考える必要があります。

同じ経路で重なる広告との接触

通勤・通学で鉄道を使う人は、同じ駅や路線をくり返し利用することが多くなります。その経路に広告があれば、別の日にも目にする機会が生まれます。一度の乗車で伝えきるだけでなく、日々の移動のなかで続けて情報を届けられることも、鉄道広告の特性です。

接触の長さと認知の関係を考える資料として、メトロアドエージェンシーが2026年4月に公表した、東京メトロの車内ビジョンに関する調査があります。BtoB企業・ブランドの平均認知率を掲出期間別に比べると、短期(平均約1週)のグループが12.6%、中期(約6週)が18.6%、長期(約65週)が24.9%でした。
ただし、これは掲出期間の異なる企業グループどうしを比べた調査で、企業ごとの知名度やほかの広告活動などの条件はそろっていません。同社も、調査結果の一例であり、個別の広告効果を保証するものではないとしています。掲出期間だけの効果とは言い切れませんが、長く掲出した企業グループほど認知率が高い傾向は、続けて接点をつくることを考える参考になります。

実際の広告計画では、掲出期間とあわせて、届けたい人がその駅や路線をどれくらい利用するのかを確かめたいところです。長く掲出しても、その人が使わない経路では接点は生まれません。また、同じ駅を利用していても、広告のある改札や通路を通るとは限りません。利用する経路と掲出場所が重なっていることが、くり返し接してもらうための前提になります。

こうした継続的な移動は、通勤・通学に限りません。定期的な通院や買い物、習い事などでも、同じ駅や路線を使うことがあります。利用の頻度と移動の目的をあわせて見ることで、鉄道広告を届けられる相手や場面を、より広く考えられます。

 

 

移動の目的で変わる広告との接点

同じ駅を使う人でも、向かう先や外出の目的はさまざまです。通勤・通学に加えて、通院や買い物、旅行などの移動にも目を向けると、鉄道広告が届く相手や場面が広がります。利用の頻度と目的の両面から、その接点を考えてみます。

通院や買い物でも続く日常の移動

鉄道をくり返し利用するのは、毎日職場や学校へ通う人だけではありません。定期的に病院へ通う人、買い物のために隣の駅まで出かける人、週に一度の習い事へ向かう人にも、決まった移動の道筋があります。

国土交通省が2021年に実施した「全国都市交通特性調査」でも、人の移動を通勤や業務のほか、買物、通院、食事・社交・娯楽などの目的に分けて集計しています。日々の移動をとらえるときは、仕事や学校との往復以外にも、多くの用事があることをふまえる必要があります。
こうした外出では、利用する曜日や時間帯、駅から向かう先が、通勤・通学とは違う場合があります。朝夕の混雑だけを見ていると、昼間に買い物や通院で訪れる人の動きは見えにくくなります。届けたい相手がその地域でどう動いているかを考えるには、駅周辺の施設や店舗との関係にも目を向けたいところです。

買い物に向かう途中であれば、店舗や商品の情報を、その後の行動に近い場所で伝えられる可能性があります。

ジェイアール東日本企画も、購買地点に近いところで接触できることを交通広告の特性の一つとし、広告にふれた後の行動に結びつきやすいと説明しています。たとえば駅周辺の店舗を知らせるなら、所在地や使う出口など、そこへ行くために必要な情報を添えることが考えられます。

ただし、移動の目的だけで、その人の関心を一つに決めることはできません。通院のために駅を使う人も、帰りに買い物をしたり、食事をしたりすることがあります。目的地だけでなく、その前後にどんな行動があるかまで考えることで、広告の接点をとらえやすくなります。

観光やイベントで使うふだんと違う経路

旅行や観光、イベントへの参加では、ふだん使わない駅や路線を利用することがあります。日ごろからその地域に通う人とは違い、駅の周辺や店舗の場所をよく知らない人にも情報を届けられる機会です。
こうした人に地域の施設やサービスを知らせるときは、地元で知られている名前だけでは伝わらないこともあります。何ができる場所なのか、駅からどう向かえばよいのかを、短くわかりやすく示す必要があります。広告を見た後の行動まで考え、初めて訪れた人にもわかる内容にしておくことが大切です。

同じ外出でも、行きと帰りでは置かれている状況が変わります。目的地へ向かう途中に伝える情報なのか、用事を終えた後の立ち寄り先として知らせる情報なのかで、考え方も変わるでしょう。ただし、これは広告を企画するときの視点であり、行きなら必ず関心が高まる、帰りなら購入につながると決められるものではありません。

日本鉄道広告協会などが進める「交通広告共通指標推進プロジェクト」の2025年度版の調査では、車内広告が印象に残る状況について、平日の時間帯に加えて、休日の往路と復路も分けて尋ねています。対象は、1都3県に住む15~59歳の鉄道利用者です。回答者の感じ方を調べた結果ではありますが、曜日や移動の場面まで分けて広告との接触を考える参考になります。

 

移動に合わせた広告の考え方

鉄道広告の特性を広告計画に生かすには、届けたい人の移動と、掲出する場所を結びつける必要があります。ここでは、駅や路線を選ぶときに確かめたいことと、移動中に受け取ってもらうための伝え方を考えます。

目的地と利用経路から考える掲出場所

駅や路線を選ぶとき、利用者数は基本となる資料です。鉄道事業者や媒体社が公表するデータから、その場所を使う人の規模を確かめられます。利用者の年齢など、属性に関する資料が公開されていれば、届けたい相手との関係を考える参考にもなります。
そこに、移動の目的と経路を重ねて考えます。広い地域で企業名を知ってもらいたい場合と、駅周辺の店舗や施設を知らせたい場合とでは、候補になる場所が変わります。まず広告で何を伝えたいのかを決め、そのうえで対象となる人が使う路線や駅を探す順番がよいでしょう。

地域の店舗や施設を知らせる場合は、地図で最寄り駅を確かめ、駅から目的地までの道順を見ます。駅には改札や出口が複数あることも多く、同じ駅の利用者でも通る場所は違います。目的地へ向かう人がどの出口を使い、どの通路を歩くのかがわかれば、広告を出す場所を具体的に検討できます。
一方で、最寄り駅に着く前の路線にも、情報を届ける接点があります。目的地へ向かう途中で知ってもらいたいのか、着いてから場所を案内したいのかによって、広告に持たせる役割が変わります。車内と駅を組み合わせる場合も、それぞれで何を伝えるかを整理しておくことが大切です。

候補を絞った後は、実際に広告が出る位置を確かめます。対象となる人が通る道筋から見えるか、進む方向に対してどう配置されているか、周りの案内表示や柱との関係はどうか。こうした点を見ることで、利用者数のデータを、具体的な接触の機会へとつなげられます。

移動中の状況に合わせた伝え方

広告を出す場所が決まったら、そこで見る人の状況を考えます。乗り換えで通路を歩いているときと、ホームで列車を待っているときでは、立ち止まれるかどうかや、目を向けられる時間が違います。車内でも、立っている場所や座席の位置によって、広告までの距離や見える範囲が変わります。
歩きながら目にする場所では、企業名や商品名など、中心となる情報を見つけやすくすることが大切です。文字を増やす前に、最初に何を受け取ってもらいたいかを絞ります。詳しい説明が必要な場合も、名前や特徴が先に目に入り、そのあとに補足が続く形を考えます。

店舗や施設の場所を知らせたい広告では、名前に加えて、所在地や駅からの行き方が必要です。新しいサービスを知ってもらう広告なら、名前だけでなく、何に使えるものなのかが伝わる短い説明を添えます。目的に応じて情報の順番を決めておけば、限られた広告スペースを生かしやすくなります。
さらに、広告を見た後で詳しく調べるための手がかりも用意できます。読みやすい企業名やサービス名、覚えやすい検索語は、その後の情報収集への入口になります。二次元コードを使う場合は、広告までの距離や、立ち止まって読み取れる場所かどうかも確かめておきたいところです。

届けたい人が通る場所を選び、その場所で受け取りやすい形に整える。この二つをあわせて考えることが、鉄道広告を生かす基本になります。

 

まとめ

鉄道広告には、日々の移動でくり返し接する機会と、外出先で新しい情報に出会う機会があります。通勤・通学だけでなく、通院や買い物、観光などにも目を向けると、広告を届けられる相手や場面が見えてきます。

広告を考えるときは、駅や路線の利用者数に加えて、届けたい人が通る経路や、広告を見るときの状況を確かめることが大切です。どこで接してもらうかと、そこで何を伝えるかを一緒に考えることで、鉄道広告の特性を計画に生かせます。次回は、車内・駅・映像といった鉄道広告の種類と、その選び方について考えます。

当社では、広告の目的や対象地域に合わせた鉄道広告のご相談を承っています。自社のお客様が使う駅や路線をどう選ぶか、どんな内容を伝えるかで迷ったときは、ぜひお問い合わせフォームからご相談ください。

 

 

 

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