2026年1月8日
交通・屋外広告交通広告は災害時に何ができるのか ―全国で考える防災と情報提供―
大きな地震や豪雨が起きたとき、人々の行動を左右するのは、どこにとどまり、どこへ向かえば良いのかという情報です。
内閣府が公表している「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」(内閣府防災担当ウェブサイト掲載)では、発災直後は「むやみに移動を開始しない」ことが基本原則として示されており、一斉帰宅を抑制することが強く求められています。
一方で、国土交通省の資料によれば、東日本大震災で約515万人の帰宅困難者が発生したことが示され、主要駅周辺や地下街などで混乱が生じたとされています。
このような状況のなかで、どこで待機し、どのように情報を得るかというテーマは、国の防災計画の中でも重要な位置づけになっています。ここでは、内閣府や国土交通省、総務省消防庁、各自治体が公表している資料をもとに、交通広告やデジタルサイネージが防災、特に帰宅困難者対策の中でどのような役割を果たせるのかを整理していきます。
目次
地域ごとに違う災害と、人が集まる場所

札幌市の「札幌市地域防災計画」(札幌市公式サイトで公開)では、地震災害に加えて、風水害対策編や雪害対策編が用意されており、冬季には雪害による交通障害を含めた対応が必要とされています。
仙台市の防災環境都市サイトでは、JR仙台駅など交通結節点周辺において、一時滞在場所として駅構内やホテル、商業施設、大学キャンパスなどを確保していることが説明されています。
また、国土交通省の資料によれば、都市部等で大量の帰宅困難者が発生した場合には、行政施設だけでなく民間施設を主体とした一時滞在施設の確保が必要であり、発災時に必要な情報提供や徒歩帰宅者への支援を官民連携で進めることが求められています。
さらに、東京都の「一時滞在施設などの情報」(東京都防災ホームページ)でも、帰宅困難時の一時滞在施設として、都立施設に加えて民間事業者や区市町村の協力により施設を確保していることが示され、災害発生後に利用可能な施設が開設情報とともに発信される仕組みが説明されています。
これらの資料を通じて共通して見えてくるのは、災害の種類や都市の規模にかかわらず、鉄道駅周辺、商業施設、バス停周辺といった「普段から人が向かう場所」が、発災後にも一時的な滞在場所や通過点として重要な役割を持つという点です。
国の防災計画と「情報をどう届けるか」という課題

内閣府の「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」では、一斉帰宅抑制の基本原則とともに、一時滞在施設の確保、施設管理者による利用者保護、情報提供のあり方が章立てで示されています。
同ガイドラインの中で、駅や大規模な集客施設などにおける利用者保護については、「大規模な集客施設や駅等における利用者保護」の項目として、施設内待機や一時滞在場所の確保、情報提供の必要性が整理されています。また、一時滞在施設の章では、民間施設を含めて帰宅困難者を受け入れるための協定や運営の準備が詳しく説明されています。
国土交通省の「避難者・帰宅困難者」(同省PDF)でも、都市部での帰宅困難者対策として、民間施設を主体とした一時滞在施設の確保とともに、「発災時に必要な情報提供」を進める必要があると明記されています。
一方で、総務省消防庁が公表する「消防・防災における通信について」(消防庁ウェブサイト掲載資料)では、災害情報の伝達手段として、防災行政無線や緊急速報メールなど複数の経路を組み合わせる「多重化」の考え方が提示されています。同資料では、災害情報を文字や映像で伝える視覚的な装置として「デジタルサイネージ」が挙げられ、大規模商業施設に設置されている広告発信媒体との連携も含めて検討すべき手段とされています。
また、総務省消防庁の「119番緊急通報」のページでは、「通信・通話障害が発生し、携帯電話等から119番通報がつながりにくい場合」が想定されており、そうした時には公衆電話の利用や周囲への協力依頼が案内されています。
これは、大規模災害では携帯電話などの通信手段が必ずしも安定して使えないことを前提に、防災情報の伝達手段を複線化する必要があることを示しています。
このように、国の防災計画や関連資料を見ていくと、帰宅困難者対策の柱として、一斉帰宅の抑制、一時滞在施設の確保と運営、そして多様な手段による情報提供が位置づけられていることが分かります。その中で、視覚的に情報を届ける手段として、デジタルサイネージや館内表示を活用する方向性が公的な資料のなかにも現れ始めています。
交通広告・デジタルサイネージが担える役割

総務省消防庁の「消防・防災における通信について」では、災害情報の伝達手段の一つとして「デジタルサイネージによる視覚情報伝達」が明示され、「大規模商業施設に設置している広告発信媒体であるデジタルサイネージとの連携」を含むと記載されています。
この記述が示しているのは、デジタルサイネージが「広告媒体」であると同時に、「災害情報を映像や文字で届けるインフラ」として、公的な議論の場に上がりつつあるという事実です。
駅構内や商業施設、バスターミナル、空港など、人が集まる地点に設置されたサイネージは、平常時は広告や案内を表示し、災害時には避難情報や一時滞在施設の開設状況などを伝えるポテンシャルを持っています。
内閣府のガイドラインや国土交通省の資料では、具体的な媒体名までは示されていませんが、一時滞在施設や駅、商業施設が帰宅困難者対策の拠点として位置づけられていることは明確です。そこに設置されている案内表示やサイネージを、防災情報の伝達にも使うことは、国の方針と矛盾しないどころか、むしろ一貫した方向性の中にあると言えます。
さらに、仙台市の帰宅困難者対策のように、駅周辺で民間事業者と連携して一時滞在場所を確保している例では、商業施設やホテルなど、元々広告や案内表示を多く備えた場所が、災害時の受け皿にもなっています。ここに防災情報の表示を組み込むことは、設備の二重利用という意味でも合理的です。
商業施設と生活動線、車移動が多い地域での意味

自家用車での移動が多い地域では、鉄道駅周辺だけでなく、日常的に利用する商業施設が生活動線の結節点になることが少なくありません。
内閣府の帰宅困難者対策のガイドラインでは、一時滞在施設として行政施設だけでなく民間施設も対象に含めることが想定されており、国土交通省の「避難者・帰宅困難者」でも、民間施設を主体とした一時滞在施設の確保が打ち出されています。
こうした施設には、館内案内や広告用の表示装置がすでに整備されているケースが多く、総務省消防庁が示す「大規模商業施設に設置されたデジタルサイネージとの連携」という方向性と重なります。
自家用車利用が中心の地域であっても、商業施設を拠点に、サイネージを使って一時滞在の案内や帰宅方針を伝えることは、現実的な防災施策の一つと考えられます。
企業と自治体が一緒にできること

内閣府のガイドラインは、帰宅困難者対策を行政だけで完結させるのではなく、民間企業や施設管理者と連携して進めることを前提にしています。国土交通省の資料でも、民間施設を主体とした一時滞在施設の確保が強調されており、官民連携は避けて通れないテーマです。
広告を出す広告主企業やメディアを扱う媒体元企業にとっては、災害時に地域社会を支える情報提供に自社のメディアを使うことは、単なるイメージの向上にとどまらず国や自治体の方針とも整合した取り組みになります。
総務省消防庁の資料に示されているように、デジタルサイネージは正式に「災害情報伝達手段の一つ」として位置づけられていますから、広告メディアとしての役割に加えて、防災インフラとしての機能を平時から設計しておくことには、公的な裏付けがあります。
終わりに
災害時に求められるのは、混乱の中でも確実に届く情報です。国の計画や各自治体の資料を見ても、駅や商業施設、バス停といった生活動線上の拠点が、帰宅困難者対策の中心になるという方向性は共通しています。
そして、その場所にはすでに多様な媒体や表示装置が設置されており、平常時は広告を届けるメディアとして機能し、非常時には地域の安全を支える情報インフラとして活用できる可能性があります。
近年は、広告メディアそのものが防災と結びついて価値を広げる例も出始めています。
例えば、モバイルバッテリーシェアリングサービスでは、利用料と広告費を主な収益源として運営されていますが、災害時にはバッテリーを無償開放し、停電下でも携帯電話の充電手段を確保できるようにする仕組みが導入されています。この仕組みには、設置場所となる商業施設や交通拠点が、日常的な利便性の提供を通じて、結果的に地域の防災力を支えているという側面があります。
災害時の情報発信に使えるサイネージと、命綱となる電源の確保が重なれば、広告媒体はより強い公共性を持つ存在になっていきます。
交通広告やデジタルサイネージは、単に“広告を届ける装置”ではなく、地域の安全に貢献できるメディアへ変わりつつあります。駅、商業施設、バス停、空港など、日常と災害時の両方で人が必ず経由する場所にある媒体だからこそ、その価値は大きく広がります。
平常時はブランドのメッセージを伝え、非常時には地域の行動を安定させる——そんなメディア活用のあり方がこれから必要とされていきます。
私たちは、交通広告やサイネージの特性を生かしながら、防災時にどのような情報発信ができるか、どのような媒体設置が効果的かといった点を、企業や自治体の皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。広告出稿が地域の防災力向上につながる形をつくることは、企業の社会的価値を高めるだけでなく、住民や利用者にとって安心につながる取り組みにもなります。
災害時に人を守る情報を、ふだん使っているメディアでどう届けるか——その可能性を、一緒に探っていければと考えています。ぜひ、ご相談ください。






