2026年8月10日

マーケティング

業種別 広告の勝ち筋1 医療・クリニックは信頼と権威が安心感を生む

病院やクリニックを選ぶとき、多くの人は「この先生なら安心して任せられそうだ」という感覚を大切にしています。
医療分野の広告は他業種に比べて表現できる範囲が狭く、スマートフォン広告をはじめとするWeb広告は多くの患者層に高い効果を発揮する一方で、特に高齢の患者が中心となる診療科では、紙の情報や日常の生活動線で目にする広告のほうが届きやすい層も一定数存在します。

ここでは、医療・クリニックという業種において、Web広告の強みを踏まえたうえで、なぜ交通広告と自治体メディアの組み合わせが有効なのか、その理由と具体的な考え方について説明します。

 

医療広告が抱える制約と、届かない患者層という現実

医療業界の広告には、他の業種にはない特有の難しさがあります。表現の自由度が限られていることに加えて、患者層に高齢層を含む診療科では、Web広告だけでは接触しきれない層が一定数存在するという課題です。

医療広告ガイドラインという高い壁

医療機関の広告には、厚生労働省が定める「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」、いわゆる医療広告ガイドラインが適用されます。
このガイドラインは平成30年の医療法改正によってウェブサイトでの情報提供も規制の対象に含まれるようになったもので、媒体の種類を問わず適用される点が特徴です。具体的には、専門医の資格認定に関する誇張した表現や、費用に関する曖昧な記載などが禁止されており、違反した場合は行政指導や罰則の対象になる可能性もあります。
詳細は厚生労働省の公式ページで確認できますが、要するに医療機関は「言いたいことを自由に言えない」という前提のもとで、患者に選ばれるための情報発信を組み立てる必要があるということです。

厚生労働省はこのガイドラインについて、事例解説書やQ&Aといった補足資料を継続的に改訂しながら公開しており、令和8年にも指針そのものの一部改正が行われています。そのたびに広告主側は最新の解釈を確認しなければならず、表現の自由度は今後も大きく広がりにくい構造にあります。
だからこそ、言葉の巧みさで差をつけようとするよりも、媒体そのものが持つ信頼性に頼るという発想のほうが、長期的には安定した効果を生みやすいといえます。

Web広告だけでは届かない高齢層

総務省が令和7年に実施した通信利用動向調査によると、個人全体のインターネット利用率が85.6パーセントであるのに対し、65歳以上の利用率は60.8パーセントにとどまっています。年齢が上がるほどこの差はさらに大きくなる傾向にあり、スマートフォン広告を含むWeb広告が若年層から中年層にかけて高い費用対効果を発揮する一方で、内科や整形外科、眼科など高齢の患者が中心となる診療科では、Webだけでカバーしきれない層が一定数生まれるということがうかがえます。

一方で、日本広報協会が行った自治体広報紙の閲読率調査では、広報紙を「毎号読む」「ときどき読む」を合わせた閲読率は年代が上がるほど高くなり、70歳以上では8割を超えるという結果も出ています。つまり、Web広告の得意な層と、自治体メディアの得意な層は年代によってきれいに補い合う関係にあるということがすでにデータとして示されているのです。

なお、消費者庁の消費者白書では、世帯主が70歳代以上の世帯でもモバイル端末そのものの保有率は8割を超えている一方で、スマートフォンやパソコンの保有率は他の年代より低く、いわゆるガラケーを使い続けている世帯が一定数残っていると指摘されています。
端末は持っていても、Web広告が想定するような使い方をしているとは限らないというこのギャップこそが、医療機関の情報発信において見落とされやすい落とし穴です。

 

患者の行動心理と、信頼を積み重ねるメディアの力

広告を届ける側の理屈だけでなく、実際に患者がどのような心の動きで病院を選んでいるのかを理解することが、媒体選びの精度を高める近道になります。

病気や不調を感じたときの情報収集行動

体調に不安を感じたとき、人はまず身近な情報源に頼ります。家族や知人に相談したり、以前から目にしていた病院の名前を思い出したりすることが多く、そこから初めてスマートフォンで検索するという順番をたどるケースが目立ちます。
特に高齢の患者の場合、本人が検索するのではなく、同居する家族や近くに住む子ども世代が代わりに情報を集め、病院を勧めるという流れも珍しくありません。この場合、検索を担う家族世代の記憶に病院の名前がすでに残っているかどうかが、選択の分かれ目になります。
つまり、検索行動が始まる前の段階で、すでに「知っている」「見たことがある」という記憶が形成されているかどうかが、選ばれるかどうかを大きく左右します。

この検索前の記憶形成こそが、交通広告や自治体メディアが果たす本質的な役割です。Googleが定める検索品質評価ガイドラインでも、医療や健康に関する情報はYMYLと呼ばれる領域に分類されています。YMYLとは「Your Money or Your Life」の略で、人のお金や健康、安全に重大な影響を与える可能性がある情報ジャンルを指す言葉です。
医療はこのYMYLの代表格とされており、E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が特に強く求められるとされています。
この考え方はWeb上の評価基準ですが、実生活における病院選びの心理とも重なる部分が大きく、権威性や信頼性を日常の中でどう積み重ねるかが問われているといえます。

交通広告と自治体メディアが持つ「反復性」と「権威性」

バス車内のステッカー広告や駅の看板といった交通広告は、通勤や通院、買い物などの生活動線の中で繰り返し目に触れるという特性を持っています。一度きりの接触ではなく、日常的に何度も視界に入ることで、無意識のうちに「よく見る病院」という印象が積み重なっていきます。

一方、自治体が発行する広報紙や、自治体公式サイトに掲載されるバナー広告は、行政という公的な立場からの発信であるという点で、他の広告にはない権威性を帯びています。場所によっては、市役所や公民館といった自治体施設内への広告掲載が可能なケースもあり、来庁者という明確な地域住民層に接触できる点も特徴です。前述の日本広報協会の調査でも高齢層ほど広報紙への接触頻度が高いことが示されており、これらのメディアを組み合わせることで、反復による記憶形成と、行政発信による信頼担保の両方を同時に実現できることになります。

交通広告が「毎日のすきま時間に何度も見る」メディアであるのに対し、自治体メディアは「腰を据えて読む」メディアであるという性質の違いも見逃せません。前者が浅く広い接触を担い、後者が深く濃い信頼を担うという役割分担が成り立つことで、単独のメディアでは得にくい相乗効果が期待できます。

 

導入イメージと、明日からできること

理屈だけでは実感が湧きにくいものです。ここでは仮の設定をもとに、この組み合わせがどのように機能しうるかを考えてみます。

もし駅前のクリニックがこの組み合わせを取り入れたら

たとえば、開業から数年が経ち、近隣での認知はあるものの新規患者の伸びが鈍化してきた駅前のクリニックがあったとします。仮にこのクリニックが、最寄り駅を通るバスの車内ステッカー広告を出し、あわせて地域の広報紙の広告枠に医院名や診療案内を掲載したとしたら、どうなるでしょうか。

バスのステッカー広告は通勤や通院で毎日その路線を利用する人の記憶に少しずつ蓄積されていき、広報紙は自宅でじっくり読まれることで、家族に「この病院、広報紙に載っていたね」と話題にのぼるきっかけになりえます。検索する段階ではすでに名前を知っている状態がつくられているため、検索結果に表示されたときの安心感も高まりやすくなると考えられます。
もちろんここで描いたのは一つの想定にすぎませんが、Webだけでは生まれにくい「事前の記憶」を、この二つのメディアが補い合う形で築いていけることがイメージできるのではないでしょうか。

さらに、このクリニックが半年、一年と広告を継続したとすれば、バスを利用する人々の中で「あのステッカーの病院」という認識が徐々に定着し、たとえ体調を崩していない時期であっても、いざというときに真っ先に名前が思い浮かぶ存在になっていく可能性があります。
広告は単発の集患施策ではなく、地域における記憶の蓄積であるという視点を持つことが、医療機関の広告戦略には特に求められます。

媒体選びの視点と、まず考えるべきこと

医療機関が広告メディアを選ぶ際にまず考えるべきなのは、診療科や患者層の年齢構成によって最適な組み合わせが変わるという点です。小児科であれば保護者世代の生活動線を、内科や整形外科であれば高齢層の生活動線を意識した媒体選定が求められます。また、医療広告ガイドラインに準拠した表現であるかどうかも、企画の初期段階から確認しておく必要があります。

どの路線にどんなステッカー広告を出すべきか、どの自治体の広報紙や公式サイトが地域内での接触率が高いのかといった判断には、専門的な知見と地域ごとのデータの蓄積が欠かせません。
最初から大規模な出稿を行う必要はなく、まずは自院の商圏を通る主要なバス路線を一つに絞り、あわせて所在する自治体の広報紙や公式サイトのバナー広告枠への掲載可否を確認するところから始めるだけでも、これまでとは違う層への接触が生まれるはずです。

 

まとめ

医療・クリニックの集患において、スマートフォン広告を中心としたWeb広告は多くの患者層に高い効果をもたらす有力な手法です。
そのうえで、医療広告ガイドラインという表現上の制約と、高齢層を中心としたインターネット利用率の壁という二つの現実を踏まえると、日常の生活動線の中で繰り返し接触できる交通広告と、行政という立場からの権威性を持つ自治体メディアを組み合わせる発想は、Web広告を補完するもう一つの選択肢として、これからの医療機関にとって現実的な手法になります。

自院の診療科や患者層に合った媒体の組み合わせについて詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

 

 

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