2026年8月21日
マーケティング業種別 広告の勝ち筋9 自治体は地域そのものの魅力を伝える広告戦略
自治体や官公庁が広告で伝えるべき相手は、移住を検討する人、観光で訪れる人、進出先を探す企業など多岐にわたります。それぞれ情報を集める手段もタイミングも異なるため、一つの媒体だけでこれらすべてに届けることはできません。
企業の広告であれば、ターゲットとなる顧客層を一つに絞り込んで媒体を選ぶことができますが、自治体の場合はそうはいきません。同じ地域という発信主体でありながら、届けたい相手も、伝えるべき魅力の切り口も、相手ごとに変わってくるからです。
だからこそ、交通広告、自治体メディア、Web、マスメディアを組み合わせた全方位のアプローチが必要になります。
ここでは、自治体・官公庁という立場において、なぜ複数のメディアを統合した地方創生ソリューションが有効なのか、その理由と具体的な考え方について説明します。
目次
東京一極集中の中で問われる地域の魅力発信
まずは、地域が置かれている構造的な課題を、客観的なデータで確認します。
東京圏への転入超過が示す構造的な課題

総務省が公表した2025年の住民基本台帳人口移動報告によると、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の転入超過数は12万3534人となり、4年ぶりに縮小したものの、依然として大幅な転入超過が続いています。都道府県別に見ると、転入超過となったのは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、滋賀県、大阪府、福岡県の7都府県にとどまり、残る40道府県はいずれも転出超過という結果でした。
この数字は、多くの地域が人口流出という同じ課題に直面していることを示しています。
同調査では、東京都単独の転入超過数が6万5219人で全国最多だったことも報告されており、依然として東京への一極集中傾向が根強く続いていることがわかります。
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が実施した調査では、東京圏在住者の約半数が地方圏での暮らしに関心を持っていると報告されており、関心そのものは一定数存在するものの、それが実際の移住行動には十分に結びついていないという構造がうかがえます。
関心を行動に変えるためには、地域の魅力や暮らしの具体像を、関心を持ったタイミングでしっかりと届ける情報発信が欠かせません。
ふるさと納税に見る「選ばれる自治体」への競争
総務省が公表したふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)によると、令和6年度のふるさと納税受入額は全国で1兆2728億円となり、5年連続で過去最高を更新しました。寄附件数は約5879万件、住民税控除の適用者数も約1080万人と過去最多を記録しています。
一方で、住民税控除額は東京都が突出して多く、大都市圏から地方への税収移転が進んでいることも読み取れます。ふるさと納税は返礼品の魅力だけでなく、その自治体がどれだけ知られているか、どれだけ応援したいと思われているかによっても結果が左右されます。実際、上位にランクインする自治体の多くは、返礼品の充実に加えて、自治体の取り組みや魅力を積極的に発信してきた歴史を持っています。
つまり、移住定住や観光誘致だけでなく、ふるさと納税という経済的な支援を集める場面でも、地域そのものの認知度や好感度が問われる時代になっているということです。
一つの媒体では届かない、多様な相手への全方位アプローチ
自治体が向き合う相手は一様ではありません。それぞれの相手に合わせて、届けるべきメディアも変える必要があります。
移住検討層・観光客・企業誘致の対象者はそれぞれ違う

移住を検討している人、観光で一度訪れてみたい人、進出先の候補地を探している企業の担当者では、情報を得る手段もタイミングもまったく異なります。
移住検討層は時間をかけてWebで比較検討することが多く、子育て環境や医療体制、住宅費用といった生活に直結する情報を求める傾向があります。観光客は駅や空港での偶然の接触から興味を持つことが多く、旅先での体験や食といった非日常への期待を求めます。企業の担当者は経済誌やビジネス系メディアでの露出を目にすることが多く、交通アクセスや用地の確保しやすさ、税制優遇といった投資判断に関わる情報を重視します。
このように相手ごとに求める情報の中身も、接点となるメディアも異なるため、一つの媒体、一つのメッセージですべての相手に届けようとすると、結果としてどの相手にも刺さらない、あいまいな発信になりかねません。
交通・自治体メディア・Web・マスを組み合わせる意味
交通広告は生活動線の中での反復接触に強く、自治体メディアは行政という立場からの権威性を持ち、Webは検討段階での深掘りに強く、マスメディアは広範囲への信頼形成に強いというように、それぞれのメディアには異なる役割があります。
地域そのものをPRする場合、これらを単独で使うのではなく、目的別に組み合わせることで、移住検討層には自治体公式サイトやWeb広告で暮らしの具体像を、観光客には全国ネットワークの交通広告で非日常への期待を、企業には経済メディアやビジネス誌で立地の優位性を、というように、相手ごとに最適な組み合わせを設計することができます。
一つの部署が発信をすべて担う体制だと、どうしても手慣れた媒体に発信が偏りがちですが、目的と相手を先に整理してから媒体を当てはめることで、こうした偏りを防ぐことができます。
導入イメージと、明日からできること
理屈だけでは実感が湧きにくいものです。ここでは仮の設定をもとに、この組み合わせがどのように機能しうるかを考えてみます。
もしある自治体がこの組み合わせを取り入れたら

たとえば、移住促進と観光誘致の両方に力を入れたい地方自治体があったとします。仮にこの自治体が、都市部のターミナル駅に地域の魅力を伝える交通広告を出稿し、あわせて自治体公式サイトに移住者インタビューや支援制度の情報を整備し、さらに地元のテレビ番組で特産品や祭りを紹介する企画を実施したとしたら、どうなるでしょうか。
駅で広告を目にした人が興味を持ってWebサイトを訪れれば、具体的な暮らしのイメージや支援制度を知ることができ、移住検討の第一歩につながるかもしれません。テレビ番組を見た視聴者が、旅行先の候補としてその地域を思い浮かべることもあるでしょう。同じ交通広告の掲出でも、駅で見た人がその場で移住を決めるわけではなく、まずは軽い興味や好感を持つところから始まり、後日Webサイトを訪れて詳しい情報を確認し、さらに時間をかけて移住フェアへの参加や現地訪問へとつながっていくという段階を踏むのが実際の姿に近いと考えられます。
仮にこの自治体が、こうした発信を単発で終わらせず、季節ごとや制度改定のタイミングに合わせて継続していったとすれば、駅の広告を見た人、Webサイトを訪れた人、テレビ番組を見た人のそれぞれが、時間をかけて少しずつ地域への理解と関心を深めていくことも考えられます。
むろん実際の効果は地域ごとの事情によって左右されますが、一つのメディアだけでは生まれにくい多方面からの認知と関心を、複数の媒体を組み合わせることで同時につくり出せることがイメージできるのではないでしょうか。
媒体選びの視点
自治体が媒体を選ぶ際には、まず何を目的とした発信なのか、移住定住なのか、観光誘致なのか、企業誘致なのかを明確にすることが出発点になります。目的によって届けるべき相手が変わり、相手が変われば有効なメディアも変わるためです。
限られた予算をすべての目的に薄く広く使うのではなく、優先順位をつけたうえで、目的ごとに適したメディアの組み合わせを設計することが重要です。人口減少が特に深刻な自治体であれば移住定住を、観光資源に恵まれた自治体であれば観光誘致を優先するというように、地域が抱える課題や強みに応じて重点を変えることも欠かせません。
全国に拠点を持つ広告代理店であれば、地元の自治体メディアから全国ネットワークの交通広告まで、一貫した窓口で相談できるという利点もあります。
まとめ
東京一極集中という構造的な課題の中で、地域そのものの魅力をどう伝えるかは、多くの自治体にとって共通の課題です。
移住検討層、観光客、進出を検討する企業など、相手によって届けるべきメディアが異なるからこそ、交通広告、自治体メディア、Web、マスメディアを組み合わせた全方位の発信が力を発揮します。届けたい相手の生活動線や情報収集行動を理解したうえで、複数のメディアの役割を組み合わせるという考え方が、限られた予算で最大の効果を引き出す近道になります。一度きりの発信で終わらせず、目的ごとに継続的な発信を積み重ねていくことも、地域への理解や関心を確かなものにするうえで欠かせません。
自治体・地域の魅力発信について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。
