2026年2月12日

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エレベーター広告の選び方 オフィスビル用と住宅マンション用、目的別の活用法と費用感

 

エレベーターに乗っている数十秒間、私たちは何をしているでしょうか。
スマートフォンを眺める人もいれば、何となく表示パネルを見つめている人、気まずさから視線の置き場に困っている人もいます。会話はほとんど生まれず、外に出ることもできない。その時間は短いはずなのに、なぜか印象に残りやすい空間です。
近年、このエレベーターという空間が広告メディアとして注目を集めています。オフィスビルではB2B向けのサービス広告が、住宅マンションでは地域密着型ビジネスの広告が、それぞれ成果を上げ始めています。しかし、エレベーター広告と一口に言っても、設置場所によって届く相手も届け方もまったく異なります。

ここでは、エレベーター広告の基本的な特性から、オフィスビル用と住宅マンション用の違い、向いている業種、費用感、そして失敗しないためのポイントまで、導入を検討するうえで必要な情報を整理していきます。

 

エレベーター広告とは何か

まずはエレベーター広告の基本を押さえておきましょう。どのような場所で、どのような形式で展開されているのか。そして、なぜ今注目されているのか。

エレベーター広告の仕組み

エレベーター広告とは、エレベーターの内部やエレベーターホールに設置されたデジタルサイネージを通じて映像や静止画を配信する広告手法です。主にオフィスビル、住宅マンション、商業施設などに設置されており、建物の利用者に向けて情報を届けます。
配信される広告は15秒から30秒程度の動画が中心で、複数の広告がローテーションで流れる仕組みです。設置場所によっては音声付きの広告も可能ですが、住宅マンションでは音量を抑えた設定になっているケースも多くあります。

日本ではまだ普及の初期段階にあり、あるエレベーター広告事業者によると、国内に存在する約80万台のエレベーターのうち、広告メディアとして活用されているのはわずか0.3%程度にとどまっています。言い換えれば、これから本格的に広がっていく市場です。

なぜ今、エレベーター広告なのか

エレベーター広告が注目される背景には、いくつかの要因があります。
一つは、Web広告の限界が見え始めていることです。ターゲティング精度は上がっても、広告ブロックや閉じるボタンで簡単にスキップされてしまう。そもそも見てもらえないという課題を抱える企業が増えています。

もう一つは、コロナ禍を経てオフィス回帰が進み、オフィスビルにおける広告価値が再評価されていることです。さらに、デジタルサイネージの技術進化により、設置コストが下がり、参入しやすくなったことも追い風になっています。

 

エレベーター広告の強みは何か

エレベーター広告には、他の広告メディアにはない独自の強みがあります。その特性を理解することで、自社に合っているかどうかの判断がしやすくなります。

逃げ場のない数十秒という環境

エレベーター広告の最大の特徴は、「見ないという選択」が難しい環境にあることです。
あるエレベーター広告事業者の調査によると、都内のエレベーターの平均乗車時間は約20秒。この短い時間ですが、乗った以上はその空間から離脱できません。Web広告のように閉じることも、屋外広告のように通り過ぎることもできない。視線を下げることはできても、空間そのものから逃げることは不可能です。

同じ調査では、エレベーター内での広告視聴率は90%に達するというデータも報告されています。また、広告を「見た」もしくは「見たような気がする」と回答した人の到達率は64.6%という数字もあります。滞在時間は短いものの、接触の確実性という点では他の広告メディアを上回る可能性があります。

繰り返し接触による認知定着

オフィスビルで働く人は、出社時、昼休み、退社時と、1日に複数回エレベーターを利用します。住宅マンションの住民も同様です。
この反復接触は、心理学で「単純接触効果」と呼ばれる現象につながります。最初は意識していなくても、繰り返し目にするうちに親しみや信頼感が生まれるという効果です。エレベーター広告は、この単純接触効果を自然に発生させやすいメディアです。

仕事モードで情報に触れる

特にオフィスビルのエレベーターでは、利用者の多くが「仕事モード」の状態にあります。出社途中、会議への移動、外出先からの戻り。頭の中は仕事のことで占められています。
この状態で目にするB2B向けの広告は、単なる娯楽情報として流されるのではなく、「仕事に関係がありそうな情報」として無意識に分類されやすくなります。これは、B2Bマーケティングにとって大きな強みです。

 

オフィスビル用と住宅マンション用の違い

エレベーター広告には、大きく分けてオフィスビル用と住宅マンション用があります。この二つは、届く相手も、適した広告内容も、費用感もまったく異なります。ここでは、それぞれの特徴を整理します。

オフィスビル用エレベーター広告の特徴

オフィスビルに設置されるエレベーター広告は、主にB2B向けのコミュニケーションに適しています。
利用者の多くは、そのビルに入居する企業の社員や、訪問する取引先、営業担当者などです。つまり、企業活動に関わる人々が日常的に接触する環境です。さらに、役職者や決裁権を持つ人も含まれるため、B2Bサービスの認知拡大には好条件がそろっています。
都心部の大規模オフィスビルであれば、IT企業、金融機関、コンサルティング会社など、業種が比較的絞り込まれたターゲティングも可能です。特定のビルを指定して出稿できるプランを提供している事業者もあります。

ただし、費用は高めです。東京都心部の大規模オフィスビルに3,300台以上のエレベーターで放映する場合、1週間で350万円程度からが目安になります(税別)。決して気軽に試せる金額ではありませんが、決裁者層への確実なリーチという点では、タクシー広告やテレビCMと比較検討される位置づけになっています。

住宅マンション用エレベーター広告の特徴

住宅マンションに設置されるエレベーター広告は、そのマンションの住民に向けた広告です。オフィスビル用とは性質がまったく異なります。
届く相手は、そのマンションに住む個人や家族です。朝の出勤前、夕方の帰宅時、週末の外出時など、生活の動線上で自然に接触します。そのため、個人消費者向けの商品やサービス、あるいは地域密着型のビジネスに適しています。

住宅マンション用の大きな強みは、エリアターゲティングができることです。特定のエリア、特定のマンションを指定して広告を出稿できるため、商圏が限定されているビジネスには特に相性が良いと言えます。
費用もオフィスビル用に比べると抑えられます。エリアを絞った住宅マンション向けの場合、4週間で30万円程度から出稿できるプランもあります(税別)。もちろん、対象エリアの広さやマンションの規模によって変動しますが、地域密着型のビジネスにとっては検討しやすい価格帯です。

 

どんな業種・企業に向いているか

エレベーター広告は、すべての企業に向いているわけではありません。自社のビジネスモデルやターゲットに合っているかどうかを見極めることが大切です。ここでは、オフィスビル用と住宅マンション用それぞれについて、相性の良い業種を整理します。

オフィスビル用が向いている業種

オフィスビルのエレベーター広告は、B2B向けのサービスや商品を扱う企業に向いています。具体的には以下のような業種です。

SaaSやクラウドサービスを提供する企業は、オフィスビル広告との相性が良い代表例です。業務効率化ツール、人事管理システム、会計ソフトなど、企業の導入担当者や決裁者に直接リーチできます。
人材サービスや採用支援を行う企業も適しています。採用担当者や経営層が日常的に利用するオフィスビルで、サービスの存在を認知してもらうことで、後の営業活動がスムーズになります。
コンサルティングや業務支援サービスも、オフィスビル広告との相性が良い領域です。具体的な機能やサービス内容を詳しく伝えるのではなく、「この会社は見たことがある」という認知をつくることが目的になります。

いずれの場合も、オフィスビル広告は「今すぐ問い合わせがほしい」という短期的な施策ではなく、「検討のタイミングで思い出してもらう」ための中長期的な施策として捉えるのが現実的です。

住宅マンション用が向いている業種

住宅マンションのエレベーター広告は、個人消費者向けのサービスや、地域密着型のビジネスに向いています。

クリニックや歯科医院は、住宅マンション広告との相性が特に良い業種です。「近所にこんな医院がある」という認知は、いざ通院が必要になったときに真っ先に思い出される存在になる可能性があります。
リフォーム業や建設業も適しています。マンションの住民は、自宅の修繕やリフォームを検討する機会があります。そのタイミングで選択肢に入るためには、日常的に名前を見せておくことが有効です。
不動産業、特に売買仲介や賃貸管理を行う企業も、住宅マンション広告を活用しています。住み替えを検討している住民に対して、地域の不動産会社として認知を広げることができます。
その他、フィットネスジム、学習塾、デリバリーサービスなど、商圏が限定されているビジネスであれば、住宅マンション広告のエリアターゲティングを活かせる可能性があります。

一方で、最低出稿額がそれなりにかかるため、小規模な個人商店には負担が大きいかもしれません。一定の広告予算を確保できる事業規模であれば、検討する価値があります。

 

よくある失敗パターン

エレベーター広告は、正しく使えば効果的なメディアですが、使い方を誤ると「費用をかけたのに何も残らなかった」という結果になりかねません。ここでは、よくある失敗パターンを紹介します。これから導入を検討する方は、ぜひ参考にしてください。

情報を詰め込みすぎる

最も多い失敗は、15秒から30秒の広告に情報を詰め込みすぎることです。
サービスの特徴、導入メリット、価格、キャンペーン情報、問い合わせ先。伝えたいことがたくさんあるのは分かります。しかし、エレベーターに乗っている人は、広告を見るために乗っているわけではありません。移動のついでに目に入っているだけです。
詰め込まれた情報は、ほとんど記憶に残りません。むしろ「ごちゃごちゃした広告だったな」という印象だけが残り、ブランドイメージを損なうこともあります。

エレベーター広告の役割は、詳しく伝えることではなく、存在を認知してもらうことです。会社名とロゴ、何をしている会社なのかが一目で分かる。それだけで十分です。

Web広告のクリエイティブをそのまま流用する

Web広告で使っている動画をそのままエレベーター広告に流用するケースがありますが、これもうまくいかないことが多いです。
Web広告は、ユーザーが能動的に画面を見ている状態を前提に設計されています。小さな文字、細かい説明、クリックを促すボタン。これらは、パソコンやスマートフォンの画面では機能しますが、エレベーター内のサイネージでは読み取れません。

エレベーター広告用には、離れた場所から見ても認識できる大きな文字、シンプルな構成、短時間で伝わるメッセージが必要です。既存素材の流用ではなく、エレベーター広告専用のクリエイティブを用意することをお勧めします。

短期間で成果を求める

「1週間出稿してみたけど、問い合わせが来なかった」という声を聞くことがあります。しかし、これはエレベーター広告に対する期待値の設定が間違っています。
エレベーター広告は、直接的なコンバージョンを狙うメディアではありません。認知を広げ、記憶に残し、後の検討タイミングで思い出してもらうためのメディアです。1週間や2週間で目に見える成果が出ることは、まずありません。

効果を実感するには、最低でも数か月単位での継続出稿が必要です。短期間で成果を求めるなら、エレベーター広告ではなく、検索広告やリスティング広告の方が適しています。

単体で効果を測ろうとする

エレベーター広告だけを切り出して「何件問い合わせが来たか」を測定しようとすると、ほぼ確実に「効果がなかった」という結論になります。
しかし、これは測定方法の問題です。エレベーター広告の効果は、他の施策と組み合わせたときに発揮されます。たとえば、営業訪問時に「御社のサービス、エレベーターで見たことがあります」と言われる確率が上がる。Web広告のクリック率が改善する。展示会での名刺交換がスムーズになる。

エレベーター広告を単体で評価するのではなく、マーケティング全体の中での役割として捉えることが大切です。

 

効果測定の考え方

エレベーター広告は「効果が見えにくい」と言われることがあります。確かに、Web広告のようにクリック数やコンバージョン数を直接測定することはできません。しかし、効果を把握する方法がないわけではありません。ここでは、現実的な効果測定の考え方を紹介します。

認知率の変化を測る

最もシンプルな方法は、出稿前と出稿後で認知率がどう変化したかを調べることです。
たとえば、営業担当者が商談の際に「弊社のサービスをご存じでしたか」とヒアリングする方法があります。エレベーター広告を出稿しているビルと、出稿していないビルで回答を比較すれば、広告の効果を推測できます。

より正確に測定したい場合は、広告出稿後にアンケート調査を実施する方法もあります。対象エリアの企業担当者や住民に対して、サービスの認知度や広告の視認有無を調査します。費用はかかりますが、定量的なデータを得ることができます。

営業活動との連動で効果を見る

B2B向けのオフィスビル広告であれば、営業活動と連動させて効果を見る方法が有効です。
エレベーター広告を出稿しているビルのテナント企業に対して、営業アプローチをかけます。その際の反応率、アポイント獲得率、商談からの成約率を、広告を出稿していないビルの企業と比較します。認知があることで、営業の初動がスムーズになるかどうかを検証できます。

実際に、あるエレベーター広告事業者の報告では、広告を放映しているビルと放映していないビルで、営業時のサービス認知率に大きな差が出たというデータもあります。

他施策の効果変化を見る

エレベーター広告を出稿する前と後で、他のマーケティング施策の効果がどう変化したかを見る方法もあります。

たとえば、Web広告のクリック率が改善した、指名検索の件数が増えた、メールマガジンの開封率が上がった。これらの変化は、エレベーター広告による認知拡大が間接的に寄与している可能性があります。
もちろん、他の要因も影響するため、エレベーター広告だけの効果とは断言できません。しかし、複数の指標を組み合わせて見ることで、広告の効果をある程度推測することは可能です。

長期的な視点で評価する

エレベーター広告の効果は、短期間では見えにくいものです。1週間や1か月で判断するのではなく、3か月、6か月、1年という単位で評価することをお勧めします。

認知は、繰り返し接触することで徐々に定着していきます。継続的に出稿することで、「よく見かける会社」「名前を知っている会社」というポジションを築くことができます。このポジションが、後の商談や購買検討の場面で効いてきます。
短期的なROIだけで判断すると、エレベーター広告の本当の価値は見えません。ブランド認知への投資として、長期的な視点で効果を評価することが大切です。

 

効果的に使うためのポイント

ここまで、失敗パターンや効果測定の考え方を紹介してきました。ここでは改めて、エレベーター広告を効果的に使うためのポイントを整理します。

売り込まない設計を前提にする

繰り返しになりますが、エレベーター広告の役割は、売ることではなく、存在を認知してもらうことです。
会社名、サービス領域、特徴的なビジュアルやフレーズ。このうちどれか一つでも引っかかりを残せれば成功です。詳しい説明は、後の検索やWebサイト訪問、営業接触に任せましょう。

他の施策と組み合わせて設計する

エレベーター広告単体で完結させようとせず、マーケティング全体の設計の中で役割を明確にしておくことが大切です。
エレベーター広告で認知を広げ、Web広告やメールマーケティングで具体的なアクションを促す。営業担当者が訪問する前に、先方の社員がすでに社名を知っている状態をつくる。このように、他の施策との連携を前提に設計することで、投資対効果を高めることができます。

クリエイティブはシンプルに

エレベーターという環境では、凝った演出よりもシンプルさが有効です。
視認性の高いロゴ、読みやすいフォント、記憶に残るキャッチコピー。これらを短時間で確実に伝えることを優先します。背景がごちゃごちゃしていたり、文字が小さすぎたりすると、せっかくの接触機会を無駄にしてしまいます。

また、同じ広告を繰り返し見ることになるため、飽きにくいクリエイティブであることも大切です。奇をてらった演出は一時的に目を引きますが、何度も見ると逆効果になることもあります。長く出稿するほど、シンプルで品のあるクリエイティブの方が効果を発揮します。

継続出稿を前提に計画する

エレベーター広告は、継続することで効果が積み上がっていくメディアです。予算が許す限り、単発ではなく継続出稿を前提に計画することをお勧めします。

もし予算に制約がある場合は、出稿エリアを絞って継続する方が、広いエリアに短期間だけ出稿するよりも効果的です。特定のビルやエリアで「よく見かける」存在になることを目指しましょう。

 

エレベーター広告を始めるには

エレベーター広告に興味を持ったとしても、実際にどう始めればよいのか分からないという声は少なくありません。ここでは、検討から出稿までの流れを簡単に整理します。

まずは目的とターゲットを明確にする

最初に考えるべきは、「誰に」「何を」伝えたいのかです。
B2B企業の認知を広げたいのか、地域密着型ビジネスの集客につなげたいのか。目的によって、オフィスビル用と住宅マンション用のどちらを選ぶべきかが決まります。

ターゲットが明確であれば、エリアやビルの選定もスムーズになります。逆に、ここが曖昧なまま出稿すると、費用だけがかかって成果が見えないという結果になりかねません。

費用感を把握して予算を確保する

エレベーター広告の費用は、設置場所や期間によって大きく異なります。
オフィスビル用の場合、東京都心部で3,300台以上のエレベーターに1週間放映する場合、350万円程度からが目安です(税別)。住宅マンション用でエリアターゲティングをする場合は、4週間で30万円程度から出稿できるプランもあります(税別)。

いずれも最低出稿額が設定されているケースが多いため、事前に費用感を把握したうえで、予算を確保しておく必要があります。

広告代理店に相談する

エレベーター広告は、複数の事業者がサービスを提供しており、それぞれ設置ビルや対象エリア、料金体系が異なります。自社で最適なプランを比較検討するのは手間がかかります。
広告代理店に相談すれば、目的やターゲット、予算に応じて適切なメディアを提案してもらえます。クリエイティブの制作や効果測定のサポートを受けられる場合もあります。

エレベーター広告を含めた広告施策の設計にご興味がある方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。オフィスビル用、住宅マンション用、それぞれの特性を踏まえたうえで、御社に合った活用方法をご提案いたします。

 

 

 

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