2025年12月3日

その他

Z世代に刺さる広告デザインとは ―― 共感・リアリティ・“自分ごと化”がブランドを動かす時代 ――

 

広告の世界がここ数年で大きく変わったことを、現場で感じている方も多いのではないでしょうか。
どれだけ予算をかけて美しいビジュアルを作っても、どれだけ練り込んだ話題性のあるコピーを出しても、「思ったほど反応がない」「若者に響かない」という経験はありませんか。

その背景にあるのは、世代の変化です。特にZ世代――1990年代後半から2010年代前半に生まれた若者たちは、これまでの広告の常識が通用しない存在として、今や多くのブランドを悩ませています。彼らは生まれた時からスマートフォンを手にし、YouTubeやSNSが日常の延長にある生活を送ってきました。

彼らにとって広告は「わざわざ見るもの」ではなく、「自然に流れてくるもの」。情報は自分で探すものではなく、流れてくるものの中から“自分に必要なもの”を選び取る感覚を持っています。そのため、彼らの興味を引くには「目立って主張すること」よりも、「共感できること」が何より重要になるのです。

ここでは、Z世代の心に響く広告デザインの共通点と、具体的な事例について説明します。

 

Z世代に響く3つのキーワード:リアリティ、誠実さ、自分ごと化

広告の形は多様化しました。電車内のサイネージ、TVerやYouTubeなどの動画広告、そしてSNSのタイムラインまで、あらゆる場所でZ世代に触れる機会が増えています。だからこそ、彼らの心に残る表現とはどんなものかを見極める必要があります。
そこに共通してあるのは、次の3つの要素です。

リアリティ(生っぽさ)
作り込まれた完璧なものではなく、少し不完全で飾らない「日常」を感じさせること。
誠実さ(透明性)
企業が何を伝えたいかではなく、ユーザーに寄り添う「正直な姿勢」であること。
自分ごと化(参加)
自分も広告やブランドの世界に「参加できる」「関われる」と感じられること。

Z世代は、「広告らしい広告」にとても敏感です。彼らに響くのは、どこか「自分と地続きの世界」を感じられる表現なのです。

 

リアルな日常が心を掴む:交通広告の新たな役割

交通広告の世界でも、この変化ははっきりと見て取れます。以前のように派手な色や大きな文字で一気に注意を奪うスタイルではなく、静かな余白を活かした広告が、むしろ印象に残るケースが増えてきました。

たとえば、スターバックスが展開した「47JIMOTOフラペチーノ」の駅ポスターは、白を基調とした大きな余白の中に商品が一つだけ置かれた、極めてシンプルな構成でした。それでも多くの若者が足を止め、写真を撮ってSNSに投稿し、その“静けさ”が逆に強い存在感を生んだと話題になりました。
余白があることで、見る人が自分の感情をそっと重ねられる。Z世代が好む広告のあり方は、こうした「広告らしさのない広告」の中にあらわれています。

交通広告は、生活者の移動という「日常」の中に存在します。だからこそ、その日常にそっと溶け込み、「共感」を生む静かな表現が力を発揮するのです。

 

動画広告は「物語」と「温度」で勝負する

スマートニュースやTVerのようなニュース・エンタメ系プラットフォームでZ世代は“ながら視聴”する傾向があります。音を出さずに流し見することも多いため、動画広告では冒頭の3秒で心をつかむ工夫が欠かせません。

日清食品の「カップヌードル」シリーズは、まさにその代表例です。若者の葛藤やユーモアを短い映像で切り取り、最後にそっと商品を添える。企業が一方的に商品の良さを語るよりも、“人の物語”として見せる構成が、Z世代の共感を呼んでいます。
TVerなどの動画プラットフォームでは、いかに「最初の一言」で世界観を伝えるかが勝負です。最近増えているのは、ナレーションではなく、“登場人物のつぶやき”から始まるパターンです。

たとえば、「うまくいかない日もある。でも、少し救われる瞬間がある。」。そんな小さな言葉があるだけで、Z世代は自分の感情を重ね合わせてくれます。説得よりも共感、説明よりも空気感。Z世代は、そうした「温度」を読み取る感度が非常に高い世代なのです。

 

SNSは「完璧さ」より「余白」がリアル

SNS広告の領域でも、Z世代が反応するのは“完璧ではない表現”です。
無印良品のInstagramでは、プロが撮った商品写真よりも、スタッフの日常や暮らしの断片を見せる投稿が高いエンゲージメントを得ています。整いすぎていない手元の写真、使いかけの文房具、自然光で撮ったテーブルの上の影。こうした“余白”のあるビジュアルが、Z世代にとっての“リアル”なのです。

広告が単なる「情報」ではなく、「感情の共有」になった瞬間、ブランドへの信頼が生まれます。彼らは、企業が作り込んだ虚像ではなく、「中の人」が見せる素の姿や、実際に商品が使われている「生活の温度」を求めているのです。

 

広告を「見るもの」から「共に作るもの」へ

Z世代の大きな特徴として、「自分も参加したい」という欲求があります。SNS上で広告をただ見るだけでなく、自分の投稿やコメントが反映されると、ブランドへの関心が一気に高まります。
この「自分ごと化」の力を最大限に引き出す手法として、近年、デジタルとリアルを連動させた参加型キャンペーンが注目されています。

たとえば、企業がユーザーの「願い」や「共感コメント」をハッシュタグで募集し、それを駅や街頭の大型ビジョンなどの交通広告で実際に流す手法です。

このように、ユーザーのSNS投稿というデジタル空間で生まれた「感情のムーブメント」を、大規模な交通広告という形で公に承認・可視化する手法は、視聴者が“広告の一部”になる体験を提供します。特に、「あなたたちの声が街を動かしている」という感覚は、参加者により強い自分ごと化を感じさせ、さらなる共感と関心を促しました。

広告を「見るもの」から「共に作るもの」に変える。この「自分ごと化」の発想こそが、これからの時代の鍵になっていくでしょう。彼らは、企業が主導する一方的なメッセージよりも、人々が自発的に参加できるデザインを求めているのです。

海外事例に学ぶ「信頼」の築き方

海外でも、Z世代に刺さる広告デザインの成功事例が多く見られます。
アメリカのDoveが展開した「Real Beauty」キャンペーンは、まさに“リアルの力”を象徴するものでした。一般の女性を起用し、加工のない姿をそのまま広告に使用したことで、多様な美しさへの共感が世界中に広がりました。Doveは、製品の魅力ではなく「あなたのままでいい」というメッセージを伝えることで、信頼という形のブランド価値を築いたのです。

一方、Coca-Colaの「Share a Coke」キャンペーンは、“自分ごと化”の極致でした。ボトルに人の名前を印字し、「自分や友人の名前を探す楽しみ」を提供したことで、消費行動がまるで“ゲーム”のように変化しました。SNS上では「友だちとシェアした」「恋人と撮った」といった投稿が自然に広がり、広告がユーザーによって拡散されていきました。

また、ニューヨーク発のコスメブランド「Glossier」は、広告のほとんどが一般ユーザーの投稿で構成されています。商品を手に取る手元や、鏡越しに撮った写真など、プロの撮影とは思えない自然さですが、その「リアルさ」がZ世代の心を掴みました。Glossierは“広告を出す”のではなく、“共感を育てる”ことに成功した数少ないブランドです。

 

日本のローカル広告にも広がる「共感」の波

日本でも、同様の流れが確実に広がっています。
地方交通広告の分野では、地域の若者と企業が共同で制作する事例が増えています。たとえば、長野県のローカル鉄道では、高校生が撮影した風景写真を使って沿線の魅力を伝えるポスターを展開しました。デザインの完成度というより、そこに映る“目線のリアルさ”が人々の共感を呼び、SNS上で多くのシェアを生み出しました。広告が地域と人をつなぐコミュニケーションとして機能した好例です。

企業が中心ではなく、生活者が主役であること。そして、言葉やビジュアルの奥に「感情の手触り」があること。これが、Z世代に刺さる広告デザインの共通点です。広告とは、何かを売るためのものではなく、共感を通じて信頼を積み重ねるためのものへと変わりつつあります。

 

「人の温度」を込めるということ

交通広告であれ、デジタル広告であれ、媒体の形は違っても、根底にある考え方は同じです。
「あなたの気持ちを、ちゃんとわかっていますよ」というまなざしがあるかどうか。
Z世代は、そこに企業やブランドの本音を感じ取ります。言葉やデザインの裏にある意図を敏感に感じ取り、少しでも押しつけを感じるとすぐに離れてしまいます。だからこそ、ブランドは“語る”よりも“寄り添う”姿勢を持つことが大切です。広告が上から目線ではなく、となりに座って話しかけるような温度であること。その“距離の近さ”がブランドの印象を決定づけます。

これからの広告デザインに求められるのは、見た目の派手さでも、技術の新しさでもありません。
人の心に触れる“誠実な表現”をどう生み出すか。広告の中に、どれだけ“人の温度”を込められるか。
その問いに真摯に向き合うブランドこそが、Z世代と共に歩み、未来を築くことができるのだと思います。

私たちは、そんな時代の広告をつくりたいと考えています。
交通広告の一枚から、SNSの一本の投稿まで。その中にある「共感の一瞬」をデザインすることで、ブランドと人との間に新しい信頼の形を生み出すこと。それが私たちの仕事です。

Z世代に届く広告デザインをお考えの際は、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの想いを、生活者の心へと翻訳するお手伝いをいたします。
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