2026年1月6日

交通・屋外広告

5秒の壁、3分の価値 ―Web広告と交通広告の視認時間がROIを左右する理由―

 

広告に触れたとき、人がその情報をどれだけの時間受け取っているのかという視点は、広告効果を考えるときに欠かせない要素です。広告に触れた瞬間に判断が終わる場合もありますし、数十秒から数分という単位でじっくり触れ続けることで、知らないうちに記憶が積み上がっていく場合もあります。
同じ広告という言葉で語られますが、視認されている時間の長さによって効果の性質は大きく変わります。特にWeb広告と交通広告では、この視認時間の構造がまったく異なっており、広告主がメディア戦略を考えるときに見落としがちな部分が多くあります。

ここでは、視認時間という観点からWeb広告と交通広告の特性を整理し、それぞれをどう組み合わせることで広告効果を最大化できるのかについて見ていきます。

 

Web広告の現実と5秒という壁

短時間との勝負が強いられる環境

デジタル広告における視認時間は短く、ユーザーの行動によってその時間がさらに短縮されやすいという特徴があります。
YouTubeをはじめとする動画広告の場合、5秒を過ぎるとスキップできるという仕様が一般的に広がっており、多くの利用者が5秒でスキップを行います。
Google広告では、インストリーム広告は5秒経過するとスキップ可能になります。多くのユーザーが5秒でスキップするため、この5秒間が広告の記憶に大きく影響します。

ジャストシステムが2015年に実施した調査では、YouTubeで5秒以内に動画広告をスキップしなかった経験がある人の割合は43.4パーセントでした。つまり、半数以上の視聴者が5秒でスキップしているという現実があります。
この5秒という時間は、広告主にとって極めて短い勝負の時間です。ブランドロゴを見せる、キャッチコピーを伝える、商品の特徴を印象づける。これらをすべて5秒以内に詰め込む必要があるため、クリエイティブの設計は必然的に冒頭に集中します。

スクロールで即座に消えるディスプレイ広告についても、画面上に滞在する時間が極端に短いため、広告として成立する瞬間を確保することがそもそも難しくなっています。
スマートフォンでニュースサイトやSNSを見ているとき、多くの人は素早くスクロールしながら情報を探します。その中で広告が視界に入るのはほんの一瞬です。バナー広告が画面上に表示されている時間は、平均すると数秒程度とも言われており、その短い時間の中でユーザーの注意を引き、クリックという行動につなげなければなりません。

 

短時間接触の利点と限界

この短い時間の中で効果を出すのがWeb広告の特徴であり、利点でもあります。
短い接触が大量に積み重なることで、ユーザーにブランド名やサービスの存在を繰り返し想起させる効果があります。広告の視聴率はプラットフォームや業界によって異なりますが、YouTube広告では10パーセントから15パーセントが標準値とされており、視聴単価は2円から5円程度と、コストパフォーマンスに優れた側面もあります。

電通とディーツーコミュニケーションズが実施した調査では、広告を確かに見たと答えた人の割合は、バナー広告では8.9パーセント、動画広告では14.7パーセントでした。動画広告はバナー広告に比べて記憶に残りやすいという結果が出ています。
また、同じ調査では広告の訴求内容を認知している人は、動画広告認知者では71.4パーセント、バナー広告認知者では60.6パーセントとなっており、動画広告の方が内容まで伝わりやすいことが示されています。

しかし、短時間の接触だけでは、ブランドの理解や情緒的な好意といった深い記憶が形成されにくいという側面もあります。動画広告の記憶定着率がバナー広告より高いとはいえ、これは瞬間的な印象に留まることが多いのです。
多くの広告主が広告運用において感じる、クリック率の伸び悩みや獲得単価の上昇には、ブランドに対する基盤が弱いことが影響している場合が少なくありません。ブランドの理解が浅い状態では、Web広告の効果が限定的になり、効率の良い獲得活動を行おうとしても限界が生まれます。

Web広告のもうひとつの課題は、広告を避ける行動が定着してきていることです。
広告ブロックツールの利用者は年々増加しており、特に若年層ではスキップやスクロールによって広告を意図的に回避する傾向が強まっています。広告が多すぎると感じるユーザーも増えており、広告そのものに対する抵抗感が高まっている側面もあります。
こうした環境の中で、短時間の接触だけに頼った広告戦略は、徐々に効率が落ちていく可能性があります。

 

交通広告が持つ時間の価値

長時間視認される環境

これに対して交通広告は、視認時間が長いという点でWeb広告とはまったく異なる価値を持っています。
電車内のドア横や妻面に掲出されるB3ポスター、窓上のポスター、バス車内の窓ステッカーなど、こうした広告は乗客の視界に自然と入り続ける位置にあります。通勤ラッシュの時間帯であれば、10分から30分程度の乗車時間の中で、同じ広告が視界に入り続けることになります。
これは、Web広告のように意識的にスキップすることができない環境です。

電車のドア横ポスターは、乗客が立っているときに最も目に入りやすい位置にあり、窓上ポスターは座っている乗客の視線の先にあります。バスの窓ステッカーも同様に、外の景色を見ようとしたときや、ふと視線を動かしたときに自然と目に入ります。電車内のデジタルサイネージの場合は、15秒から30秒程度の映像が繰り返し流れ、乗車時間の中で同じ広告に3回から5回触れることも珍しくありません。
いずれの媒体も、乗客が移動という目的を持って滞在している空間の中で、繰り返し視界に入るという共通の特徴を持っています。

駅の大型広告はさらに視認時間が長く、立ち止まる時間や歩く速度によって視界に入り続けるため、意識しなくても情報が処理されていきます。駅のホームで電車を待っている間、乗客は特に目的もなく周囲を見渡します。その視線の先に広告があれば、自然と目に入ります。
歩きながらスマホを見ている人でも、ふとした瞬間に顔を上げたときに大型ビジョンの映像が視界に飛び込んできます。ポスター広告についても、乗客の視線が動くたびに周辺視野へ入り続け、無意識に情報が蓄積されていきます。

JR東日本企画の調査によると、電車内ではスマートフォンを使う人が多い一方で、電車内の広告や車両ビジョンを見る人も相当数おり、両方に同時に接触している人がいることが確認されています。スマホを操作していても、ふとした瞬間に視線を上げて車内広告に目をやる。そうした行動が自然に繰り返されているのです。

 

周辺視野と記憶の蓄積

人間の視覚は中心視野だけで構成されているわけではなく、周辺視野から入った情報も脳が処理します。特に駅や車内のように視線の動きが少なく、同じ空間に一定時間滞在する環境では、広告が周辺視野に入り続ける構造ができあがります。この時間の積み重ねが深い記憶の形成につながり、ブランドへの理解や好意が時間とともに育っていくという特徴があります。

心理学の研究では、人は意識的に見ていないものでも、視界に入り続けることで無意識に記憶される現象が確認されています。これは単純接触効果とも呼ばれ、繰り返し接触することで好意度が高まるというものです。
交通広告は、この単純接触効果が働きやすい環境にあります。毎日同じ路線を使う通勤客にとって、同じ位置にある広告は自然と目に入ります。意識的に見ようとしなくても、視界の端に入り続けることで、ブランド名や商品のイメージが少しずつ刷り込まれていきます。

長く視界に存在し続ける広告は、瞬発的な反応ではなく、後日なんとなく覚えている、見たことがあるという状態を作り出し、将来の購買行動に影響を与える資産として蓄積されていきます。
交通広告メジャメント標準化検討会が公開したガイドラインでも、駅広告媒体における媒体接触可能人数の推計手法が標準化されつつあり、交通広告の効果を数値で可視化する取り組みが進められています。

 

反復接触による刷り込み効果

交通広告の大きな特徴は、反復訴求にあります。
通勤や通学で毎日同じ路線を利用する人々は、同じ広告に何度も接触します。この反復接触は、意識的に広告を見ていなくても、脳に情報が刷り込まれていく効果を生み出します。1週間の掲出期間であれば、平日5日間の往復で最低10回は同じ広告に接触する計算になります。2週間であれば20回、1か月であれば40回以上です。

メトロアドエージェンシーが実施した調査では、広告到達率として、掲出期間内に見たまたは見たような気がすると回答した人の割合が測定されています。この数値は路線や媒体によって異なりますが、反復接触による記憶の定着が確認されています。特に、毎日同じ路線を利用する定期利用者の到達率は高く、広告の掲出期間が長いほど到達率も高まる傾向があります。

この反復接触は、Web広告のように広告主が意図的にフリークエンシー(接触頻度)をコントロールするのとは異なる自然な形で起こります。
Web広告では、同じユーザーに何度も広告を表示すると嫌悪感を持たれるリスクがありますが、交通広告の場合は生活動線の中で自然に目に入るため、押し付けがましさを感じさせにくいという特徴があります。毎日通る道にある看板と同じように、そこにあることが当たり前の風景の一部として受け入れられていきます。

 

Web広告と交通広告の役割の違い

時間軸で見る効果の特性

広告主がメディアを選ぶとき、Web広告と交通広告のどちらが良いかを比較しようとする場面がありますが、実際には比較ではなく役割の違いで捉えるほうが本質に近づきます。
短期的な成果を出す目的ではWeb広告が非常に強く、顕在層の獲得や特定ターゲットへの即時接触に優れています。中期ではブランドの認知を安定させる段階になり、Web広告と交通広告の併用が効果を高めます。長期ではブランドの資産を築く段階となり、交通広告が持つ長時間接触の価値が大きくなります。

広告投資を短期、中期、長期で見たとき、企業はしばしば短期の成果に偏りがちですが、長期の資産形成を怠るとWeb広告の効率が低下するという問題が起こります。ブランドの基盤が弱いまま獲得施策だけを強化しても、クリック率や獲得単価が悪化していくという現象が起きるのです。
これは、消費者がそのブランドを知らない、または信頼していない状態でいくら広告を表示しても、反応が得られにくいためです。

例えば、新しいサービスを立ち上げた企業がWeb広告だけで集客を試みた場合、最初のうちは物珍しさや興味から一定の反応が得られるかもしれません。しかし、ブランドとしての認知や信頼が積み上がっていないため、継続的な利用や口コミにはつながりにくくなります。
一方で、交通広告を併用してブランドの存在を広く認知させた上でWeb広告を展開すると、すでにブランドを知っている人、見たことがある人が広告に反応するため、クリック率や獲得率が高まります。

 

相乗効果を生む組み合わせ

交通広告でブランドの土台をつくることで、Web広告のクリック率が高まり、広告投資全体の効率が改善するという調査結果も各所で報告されています。交通広告を見た人がそのブランドを検索する行動が増えるという傾向もあり、検索行動が増えるということは、Web広告の成果にも良い影響をもたらすという意味があります。

このように、Web広告と交通広告は単独で評価するのではなく、接触の順序や重ね方を理解しながら組み合わせることで、広告の効果は大きく変わってきます。
短時間で多くの接触を生むWeb広告は、市場に向けた広い入口をつくり、長時間視界に存在する交通広告は、その入口を通ってきたユーザーの理解を深める役割を担います。この二つが連動することで、短期と長期の両方の成果に貢献する広告投資が可能になります。

実際の広告展開の順序としては、まず交通広告でブランドの認知を広げ、その後Web広告で刈り取りを行うという流れが効果的です。あるいは、Web広告で興味を持った人が、交通広告で繰り返し接触することでブランドへの信頼が深まるという逆の流れもあります。
どちらの順序であっても、複数のメディアで接触することで、単一のメディアだけでは得られない相乗効果が生まれます。

 

クリエイティブ設計における視認時間の考慮

Web広告におけるクリエイティブの最適化

Web広告では、冒頭数秒の設計が極めて重要になります。
どのようにブランドを見せるか、どのタイミングで情報を提示するかによって記憶される量は変わります。音がなくても理解できる構造が必要ですし、スクロールされても瞬間的に印象を残せるようなデザインが求められます。

動画広告では、最初の数秒で視聴者の注意を引きつけ、興味を持たせることができれば、最後まで見てもらえる可能性が高まります。
強烈なキャッチコピーや鮮やかなビジュアルを使って、この広告は見る価値があると思わせる工夫が必要です。冒頭でブランドロゴを大きく表示する、商品の特徴を端的に伝える一言を入れる、意外性のある映像で引きつける。
こうした工夫によって、5秒でスキップされる前に最低限のメッセージを伝えることができます。

バナー広告では、視線を引きつける色使いや、一目で内容が分かるシンプルなデザインが効果的です。
文字が多すぎると読まれる前にスクロールされてしまうため、短いキャッチコピーと強いビジュアルで瞬間的にメッセージを伝える必要があります。また、スマートフォンの小さな画面でも読みやすいよう、文字サイズや余白にも配慮が必要です。

 

交通広告におけるクリエイティブの最適化

交通広告では、時間をかけて情報を見せることができますので、読み物として成立する文章表現や、世界観を自然に感じさせるような構成が合っています。視界に何度も入る環境では、情報を詰め込みすぎず、反復で印象が積み上がるような適度な余白を持ったクリエイティブが効果を発揮します。

電車内のモニターでは、15秒から30秒という時間を使ってストーリーを語ることができます。
商品の開発背景、使用シーン、ユーザーの声など、Web広告では伝えきれない情報を丁寧に伝えることが可能です。ただし、音声は流れない、または小さな音量でしか流れない場合が多いため、映像だけで内容が伝わる構成にする必要があります。字幕を効果的に使う、映像の展開で物語を語るといった工夫が求められます。

駅の大型ビジョンやポスター広告では、遠くからでも目を引くビジュアルと、近づいたときに読める詳細な情報の両方を盛り込むことができます。大きなビジュアルで注意を引き、キャッチコピーで興味を持たせ、詳細情報で理解を深める。このような段階的な情報設計が可能です。

交通広告では、基本的に同じクリエイティブが長期間掲出されます。デジタルサイネージのように時間帯によって内容を変えられる媒体も一部にはありますが、ポスターや看板など多くの交通広告は、一度掲出したら数週間から数か月間は同じ内容が表示され続けます。
そのため、何度見ても飽きないデザイン、繰り返し見ることで理解が深まる構成が理想的です。朝の通勤時に見て、夕方の帰宅時にまた見る。そのたびに新しい発見があったり、記憶が強化されたりするような工夫が効果的です。

 

視認時間を軸にした広告戦略の構築

広告効果の評価方法は進化していますが、人が情報を処理する仕組みは大きく変わっていません。
短い接触と長い接触の違いを理解し、それぞれの広告が持つ時間の価値を把握することは、広告主が冷静で確かな投資判断を行うために必要な視点になります。Web広告で成果を出しながらも、交通広告でブランドの基盤を育てていく。この二つを合わせることで、広告が短期的な成果だけでなく、企業の長期的な資産をつくる力へと変わっていきます。

広告の投資対効果をより高めたいと考える企業にとって、視認時間を軸にしたメディアの見直しは、避けて通れないテーマになりつつあります。
短い時間で成果を生む広告と、長い時間で価値を積み上げる広告。どちらも企業の成長には必要であり、そのバランスを最適化することこそが、これからの広告戦略の中心になります。

視認時間という観点から見ると、Web広告と交通広告はそれぞれ異なる時間軸で効果を発揮します。
Web広告は秒単位の短い時間で瞬発力を発揮し、交通広告は分単位、日単位の長い時間で持続力を発揮します。この二つの時間軸を組み合わせることで、広告は立体的な効果を生み出します。消費者の購買行動も、一瞬の衝動で決まるものもあれば、時間をかけて醸成された信頼によって決まるものもあります。その両方に対応するためには、異なる時間軸の広告を組み合わせることが不可欠です。

 

終わりに

視認時間という観点から広告を見直すと、それぞれのメディアが持つ本来の役割が見えてきます。
Web広告の瞬発力と交通広告の持続力は、対立するものではなく、補完し合う関係にあります。Web広告だけに頼れば短期的な成果は出ても長期的な資産が積み上がりにくく、交通広告だけに頼れば認知は広がっても即座の行動につながりにくい。両方を適切に組み合わせることで、認知から興味、検討、購買まで、消費者の行動を一貫してサポートすることができます。

自社の広告投資を見直したいと考えている方や、Web広告と交通広告の組み合わせについて詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。御社の状況に合った最適な組み合わせを一緒に考え、成果につながる広告設計をお手伝いします。

 

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