2026年8月13日

マーケティング

業種別 広告の勝ち筋3 士業は日ごろの信頼が「いざという時」の安心を作る

 

弁護士や税理士、社会保険労務士といった士業は、多くの人にとって「困ったときに初めて探す」存在です。相続、離婚、経営トラブル、税務調査など、士業への相談が必要になる場面の多くは突然訪れ、しかも本人にとっては人生で数えるほどしか経験しない出来事です。
そのため、いざ相談先を探そうとしたときに、まったく知らない事務所を一から比較する不安は大きく、結果として「知っている人」や「聞いたことがある事務所」が選ばれやすいという傾向があります。

この傾向は個人の相談に限らず、経営者が事業承継や顧問契約の相手を選ぶ場面でも同様に見られます。
ここでは、士業という業種において、日ごろの接触がなぜ「いざという時」の安心につながるのか、その理由と具体的な考え方について説明します。

 

無形商材ゆえの難しさと、相談へのハードル

士業のサービスは形のない専門知識そのものであり、事前に品質を確かめる手段が限られています。この特性が、広告のあり方にも独特の難しさをもたらしています。値段や仕様を比較するだけでは判断がつきにくいからこそ、依頼する側は「この人になら任せられる」という感覚的な安心感を強く求める傾向があります。

弁護士への相談は「知っている人」から始まる

株式会社円陣がマーケティング・リサーチ企業の協力を得て2021年に実施したアンケート調査(回答1523件)によると、弁護士に相談した経験がある人が実際にどのような経路で相談に至ったかを聞いたところ、「もともと知り合いだった弁護士」が最も多く、次いで「友人・知人の紹介」という結果でした。
弁護士会や法テラス経由、行政機関への相談経由がこれに続き、弁護士事務所のホームページ経由や弁護士紹介サイト、SNS経由は比較的少数派だったと報告されています。

同調査では、弁護士(事務所)を選ぶ基準としても「友人や知人」が最多で、次いで「相談内容の専門性」「立地」が挙げられており、まったくの初対面で検索だけから依頼に至るケースよりも、何らかの形ですでに接点があった相手が選ばれやすい実態が浮かび上がっています。
同調査ではあわせて、弁護士の人柄や特徴がわかるサイトがあれば利用したいと答えた人が80パーセントを超えたことも報告されており、専門性や実績だけでなく、話しやすさや人柄への関心が高いこともうかがえます。

もちろん弁護士ドットコムのような検索・比較サイトも一般的な入り口として定着していますが、その手前に「以前から名前を知っていた」という土台があるかどうかで、比較検討のしやすさが変わってくると考えられます。

相談しない理由の半数は「不安」

同じ調査では、弁護士に相談したいと思う問題を抱えながら実際には相談しなかった人に理由を聞いたところ、回答の半数近くが費用面の不安を挙げ、次いで「どの事務所に頼んでよいかわからない」という不安が続きました。
この結果は、士業に対する心理的なハードルの高さを裏づけています。専門性の高さや料金体系のわかりにくさが、かえって相談へ踏み出す一歩を重くしているということです。

逆にいえば、日ごろから「この事務所なら安心できそうだ」という印象を持ってもらえていれば、いざ問題が起きたときに相談へのハードルを下げることができます。
同調査で「相談しなかった人」に、どのような弁護士なら相談したいかを尋ねた結果でも、専門性、人柄、手頃な費用という順に票が集まっており、費用や専門性と並んで、事前に人柄や雰囲気が伝わっているかどうかが相談への後押しになることがわかります。

税理士や社会保険労務士についても、経営者が日常的に接点を持つ機会は限られているため、同様の構造があると考えられます。

 

決裁者・経営者層への接点と、日ごろの信頼構築

士業が信頼を積み重ねるには、検索されるタイミングを待つだけでなく、検索される前の段階でどれだけ接点を持てるかが重要になります。

自治体メディアが持つ権威性という日ごろの安心材料

自治体が発行する広報紙や、自治体公式サイトに掲載されるバナー広告は、行政という公的な立場からの発信であるという点で、他の広告にはない権威性を帯びています。場所によっては市役所や公民館といった自治体施設内への広告掲載が可能なケースもあり、来庁者という地域住民に直接接触できる点も特徴です。

日本広報協会が行った自治体広報紙の閲読率調査では、広報紙を「毎号読む」「ときどき読む」を合わせた閲読率は年代が上がるほど高くなる傾向が示されています。相続や高齢者の財産管理など、年齢層の高い層が抱えやすい相談テーマとの相性を考えると、広報紙という媒体を通じて日ごろから事務所名や取扱分野を目にしてもらっておくことには一定の意味があります。

行政発の媒体に掲載されているという事実そのものが、専門知識を売り物にする士業にとって、地味ながら効果的な信頼の担保になります。窓口が近くにあるという安心感も、高齢の相談者やその家族にとっては見過ごせない要素です。

タクシー広告が経営者層に直接届く理由

一方、企業の経営やBtoB案件を扱う士業にとっては、経営者や役職者との接点をどうつくるかが課題になります。
国内最大級のタクシーサイネージメディアであるTOKYO PRIMEが公開している媒体資料によると、タクシー利用者のうち43.1パーセントが課長以上の役職者であり、社内でソフトウェア購入などの意思決定権を持つ人の割合は15.8パーセントにのぼるとされています。
営業訪問や飛び込みの電話とは異なり、タクシー広告は移動中というプライベートな時間帯にリラックスした状態で自然に目に入るため、押しつけがましさを感じさせずに接触できる点も特徴です。

顧問契約や事業承継、M&Aといった経営者本人が意思決定を行うテーマを扱う士業にとって、タクシー広告は日常の生活動線の中では出会いにくい層に届く数少ない手段のひとつです。

 

導入イメージと、明日からできること

理屈だけでは実感が湧きにくいものです。ここでは仮の設定をもとに、この組み合わせがどのように機能しうるかを考えてみます。

もし相続に強い税理士事務所がこの組み合わせを取り入れたら

たとえば、相続税の申告支援を強みとする税理士事務所があったとします。仮にこの事務所が、地域の自治体広報紙に相続相談に関する情報を広告枠で掲載し、あわせて都心部を走るタクシーのサイネージ広告で事業承継をテーマにした動画を配信したとしたら、どうなるでしょうか。

広報紙を読んだ高齢の読者やその家族は、将来の相続について考え始めたときに「広報紙に載っていた事務所」として名前を思い出すかもしれません。一方、タクシーで移動する中小企業の経営者は、自社の事業承継について漠然とした不安を抱えているタイミングでこの広告に触れることで、顧問税理士との会話のきっかけにするかもしれません。
どちらの場合も、検索によって初めて事務所の存在を知るのではなく、すでに名前を知っている状態から相談が始まるという点が共通しています。

仮にこの事務所が、相続をテーマにした広報紙掲載を定期的に続け、あわせて決算期や年度替わりのタイミングに合わせてタクシー広告を配信するという形を数年にわたって継続したとすれば、地域の個人と経営者の双方にとって「相続や事業承継といえばあの事務所」という認識が少しずつ形づくられていくことも考えられます。
実際の反応は事務所ごとに異なるとしても、世代の異なる二つの層に対して、それぞれの生活動線に合ったメディアで日ごろの接点をつくっておくことの効果がイメージできるのではないでしょうか。

媒体選びの視点

士業が媒体を選ぶ際には、まず自事務所が主に扱う相談テーマと、その相談者像を明確にすることが出発点になります。

相続や家族の問題など個人向けの相談が中心であれば、地域の消費者に広く長く接触できる自治体メディアとの相性がよく、事業承継やM&A、顧問契約といった経営者向けの相談が中心であれば、タクシー広告のように決裁者層に直接届くメディアが効果を発揮しやすくなります。

一つの事務所の中で複数の相談分野を扱っている場合は、分野ごとに主戦場となるメディアを分けて考えることも有効です。もちろん、検索から事務所にたどり着く経路も引き続き重要であるため、広報紙やタクシー広告で得た認知を、事務所のWebサイトでの専門性の説明や実績紹介と連動させておくことも欠かせません。
日ごろの接点づくりと、検討段階での情報提供を分けて設計することが、士業の広告戦略の基本になります。

 

まとめ

士業への相談は、突然のトラブルや人生の節目という限られた場面で発生するからこそ、検索が始まる前の「知っている」という状態をどれだけつくれているかが、選ばれるかどうかを大きく左右します。

行政という立場からの権威性を持つ自治体メディアと、経営者層に直接届くタクシー広告は、それぞれ異なる層に対して日ごろの信頼を積み重ねる役割を担います。費用面の不安や「どこに頼めばいいかわからない」という不安を抱えたまま相談を諦めてしまう人を減らすためにも、事務所の名前や取り扱い分野を日常の中でさりげなく知ってもらう取り組みは、地味に見えて着実な効果が期待できます。

自事務所の相談テーマや対象層に合った媒体の組み合わせについて詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

 

 

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