2026年3月27日

マーケティング

その広告コピー、大丈夫? 特定商取引法のセーフとアウト

 

オンライン広告やランディングページを制作していると、「もっとインパクトのあるコピーにしたい」「競合より強い表現で訴求したい」と思う場面が多いと思います。特に、副業・投資・スクール・エステ・サブスク商材などは、コピー一つで反響が大きく変わる一方で、少しの行き過ぎが特定商取引法(以下、特商法)の違反リスクにつながります。

特商法は、訪問販売や通信販売、連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)、特定継続的役務提供(エステ・語学教室など)、業務提供誘引販売取引(副業・在宅ワーク商法)といった、トラブルになりやすい売り方に対して、事前にルールを定めた法律です。
消費者庁が公開している「特定商取引法ガイド」では、取引類型ごとに、広告で必ず表示しなければならない事項と、やってはいけない表現が明確に示されています。

ここでは、特商法の考え方を手がかりにしながら、広告コピーの「セーフとアウト」、「伝わる」と「やりすぎ」の境目について掘り下げていきます。

 

副業広告と業務提供誘引販売取引

SNSやウェブ広告で目にする「スマホ一つで高収入」「在宅で稼げる」といったコピーは、クリック率という観点では確かに機能することがあります。しかし、広告の作り方によっては特商法の規制対象になることがあり、注意が必要な領域です。

どこからが「業務提供誘引販売取引」になるのか

副業系・在宅ワーク系の広告で最初に意識したいのが、特商法上の「業務提供誘引販売取引」という類型です。
消費者庁の特定商取引法ガイドでは、業務提供誘引販売取引を「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で人を誘い、その仕事に必要だとして商品や役務を売りつけて金銭負担をさせる取引、と説明しています。

たとえば、高額な教材を購入するとその教材で学んだスキルを使う在宅ワークを紹介してもらえると説明しているケースや、最初にツール利用料を払えばそのツールを使ってできる仕事を企業から振ってもらえると説明しているケースをイメージしてみてください。見た目は「スキルアップ教材」や「業務ツール」の販売であっても、説明の中心が「仕事を紹介する」「報酬が得られる」であり、その前提としてお金を払わせている場合、業務提供誘引販売取引に当たる可能性が高くなります。
この場合、単なる「教材販売」や「ツール販売」とは扱いが変わり、広告に記載しなければならない項目や禁止される表現が法律で細かく規定されます。

広告に必要な表示事項

特商法第53条では、業務提供誘引販売取引について広告をするときに、一定の内容をわかるように表示することを義務付けています。

まず、「何を買わせようとしているのか」がわかるように、商品や役務の種類をはっきり書かなければなりません。教材なのか、講座なのか、ソフトウェアなのかといったことです。
次に、「いくら払うことになるのか」がイメージできるよう、特定負担の内容を説明する必要があります。ここでいう特定負担とは、初期の教材費、スターターキット代、機材購入費、毎月のシステム利用料、サポート料など、その仕事を始めるために消費者が支払う費用のことです。合計金額だけでなく、どんな名目でどのくらいかかるのかがわかるようにしておくことが望ましいとされています。

さらに、「どんな仕事をどんな条件で紹介するつもりなのか」も示さなければなりません。
応募者全員に必ず仕事を出すのか、審査のうえ一部の人だけなのか。どんな作業内容で、どの程度の単価なのか。こうした情報を隠したまま「誰でも稼げる」とだけ訴求すると、後で「話が違う」というトラブルにつながりやすくなります。
そして、誰がそのビジネスを運営しているのかを明らかにするため、事業者の名称・住所・電話番号の表示が必要です。法人の場合にインターネット広告を出すときは、代表者またはその取引に責任を持つ人の氏名も表示することになっています。

誇大広告とオプトイン規制もセットで考える

業務提供誘引販売取引については、表示すべき項目が定められているだけではありません。
特商法第54条では、「著しく事実と違う表示」や「実際よりも著しく優良・有利であると誤認させる表示」を禁止しています。実際にはごく一部の人しか高い報酬を得ていないのに、その金額だけを前面に出して「誰でも簡単に」「必ず稼げる」といった形で表現すると、誇大広告に当たるおそれが高くなります。

また、第54条の3では、いわゆる「オプトイン規制」が設けられています。あらかじめ承諾をしていない人に、一方的に業務提供誘引販売取引の広告メールを送ってはいけないというルールです。
メールアドレスリストを購入して「副業で月〇〇万円」の案内メールを一斉配信するやり方は、この規制に抵触する可能性があります。メールでの広告を検討する場合は、事前に承諾をもらっている人だけに送っているか、承諾や配信停止の管理がきちんとできているかを必ず確認することが大切です。

まず確認したい取引の実態

ここまでを踏まえると、副業系・在宅ワーク系の広告では、まず最初に「単に教材やツールを販売しているのか」「教材やツールに加えて仕事のあっせんまで約束しているのか」を整理することが出発点になります。後者であれば、特商法上の業務提供誘引販売取引として扱われる可能性が高く、その前提で広告やランディングページの設計を考えた方が安全です。

「教材を売る」という形を取っていても、LPの大半が収入事例や「稼げる理由」の説明に割かれており、商品そのものの説明がほとんどないような構成は、実態として業務提供誘引販売取引に近いと判断される可能性があります。広告コピーだけでなく、ページ全体の訴求軸を振り返ってみることが大切です。
どちらに当たるか判断が難しい場合は、消費者庁の特商法ガイドや条文を一度確認し、必要に応じて専門家に相談したうえでコピーや構成を決めていくとよいでしょう。

 

定期購入・サブスクの広告と返品ルール

「初回500円」「今だけ90%OFF」といった訴求は、定期購入やサブスクの広告でよく使われます。しかし、通販にはクーリングオフがないことや、解約条件の表示ルールを知らないまま広告を作ると、思わぬトラブルを招くことがあります。

通販には法律上のクーリングオフがない

ネット通販や定期購入の広告でよくある誤解が、「通販だからクーリングオフできる」というイメージです。
国民生活センターは「通信販売には原則としてクーリング・オフ制度は適用されない」と明確に説明しています。つまり、インターネット通販やテレビショッピング、DM通販などでは、法律上のクーリングオフは期待できず、返品できるかどうか、いつまでなら返品できるかは、事業者側が決める「返品特約」の内容によって決まります。

なお、特約がまったく設けられていない場合については、特商法第15条の3に別のルールが定められています。
これはクーリングオフとは異なる制度で、商品を受け取った日から8日以内であれば返品できますが、クーリングオフと違って返送費用は消費者の負担となります。また、事業者が返品特約を設けた場合はその特約が優先されるため、あくまで「特約がない場合の補充的なルール」という位置づけです。

定期購入で気をつけたい表示の仕方

特商法第11条では、通信販売の広告について、販売価格、送料、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期、申込み撤回や契約解除に関する特約などを表示する義務が定められています。

たとえば、画面いっぱいに「初回限定500円」「通常価格の90%OFF」と大きく書かれていて、かなりスクロールしないと「実は定期購入」「〇回受け取りが条件」といった情報が出てこない構成を考えてみます。このような設計だと、消費者が「一回だけお試しで買える」と勘違いしやすくなり、「定期コースだとは思わなかった」というトラブルになりやすくなります。
定期購入の広告では、最初から「定期コース」であること、何回以上の継続が条件なのか、解約できるタイミングと受付方法といった情報を、ファーストビューに近い位置でわかるようにしておくことが求められます。

返品・解約条件は「読む気になれば読める場所」に

多くのランディングページでは、「特定商取引法に基づく表記」ページに詳細な条件をまとめる運用が一般的です。このこと自体は問題ではありませんが、リンクがフッターの目立たない場所にしかなく、本文中にも返品・解約についてほとんど触れていないと、重要な情報を意図的に隠していると受け取られるおそれがあります。
本文の中に短い段落を一つ設けて、「このコースは定期購入であり、〇回以上の継続が条件になります」「解約を希望される場合は、次回お届け予定日の〇日前までに、マイページまたはお電話でご連絡ください」といった要点だけでも触れておくとよいでしょう。

特に定期購入の場合、「解約したくてもどこに連絡すればいいかわからない」「電話がつながらない」「メールフォームしか窓口がなく、期日までに受理されなかった」といったトラブルは国民生活センターへの相談件数でも上位に挙がっています。
解約方法を明示しておくことは、消費者への誠実な対応であるとともに、問い合わせ対応コストを下げる観点からも合理的な判断です。そのうえで詳細は「特定商取引法に基づく表記」や利用規約に誘導する構成にしておけば、広告としての分かりやすさと法令上の説明義務の両立に近づいていきます。

 

継続型サービスの広告と誇大表現

エステや語学教室、結婚相談所など、継続して通うことを前提としたサービスは、特商法上「特定継続的役務提供」として規制される場合があります。この類型は、効果の約束しすぎや解約条件のギャップによるトラブルが起きやすく、広告表現の設計において特に慎重さが求められます。

「特定継続的役務提供」に当たるサービス

特定継続的役務提供として特商法の対象になるのは、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7種類です。
ただし、すべての契約が対象になるわけではなく、政令で定められた期間と金額の条件を超えた場合に限られます。

たとえばエステティックであれば、契約期間が1か月を超え、かつ契約金額が5万円を超える場合が該当します。
この類型に入ると、契約前後に交付する書面の内容や中途解約のルール、違約金の上限などが法律で細かく定められます。広告の時点で「ごく短期間で劇的な効果が出る」と約束しすぎると、後から「聞いていた話と違う」という苦情につながりやすく、行政の指導や報道につながるケースもあります。

「必ず痩せる」「誰でも3か月でペラペラ」は危険信号

特商法第43条では、特定継続的役務提供の広告について、誇大広告等の禁止が定められています。
「1か月で必ずマイナス10kg」「誰でも3か月で英語がペラペラになる」「入会者の9割が年収100万円アップ」といったコピーを考えてみます。実際には生活習慣や学習時間、個人の状況によって結果が大きく変わるにもかかわらず、このような断定的な言い方をすると、「著しく事実と違う表示」「実際より著しく優良・有利であると誤認させる表示」と評価されるリスクが高くなります。

ビフォーアフター写真や体験談を使う場合にも、「これは個人の体験談であり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません」「効果には個人差があります」などを、写真やグラフのすぐ近くでわかるように説明しておくと、期待値が過度に膨らみすぎるのを防ぎやすくなります。

解約・違約金まわりと広告コピーの整合性

特定継続的役務提供では、中途解約や違約金についても特商法で上限や計算方法が定められています。
広告だけを見ると「いつでも解約OK」「気に入らなければ全額返金」など、気軽に始められそうな印象でも、実際の契約書には「提供済み回数分の料金に加え、上限〇%の解約手数料」と細かい条件が書かれていることがあります。このギャップが大きいほど、「こんな条件があるなら申し込まなかった」という不満につながりやすくなります。
解約まわりの条件を広告本文の中にどこまで書くかは悩ましいところですが、少なくとも途中解約が可能かどうか、可能ならどのタイミングでどのような負担が発生する可能性があるか、といった概要だけでも触れておくと、後のトラブルを減らす効果が期待できます。

 

紹介報酬型ビジネスの広告と連鎖販売規制

「会員を紹介すれば報酬がもらえる」というビジネスモデルの広告相談を受けることがあります。こうした案件は、特商法で規制される「連鎖販売取引」に当たる場合もあれば、そもそも違法な「ねずみ講」に該当してしまう場合もあります。

「連鎖販売取引」と「無限連鎖講」の違い

特商法が対象にしているのは「連鎖販売取引」で、商品や役務の販売を伴うマルチ商法のことです。
一方、「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止されているのは、いわゆる「ねずみ講」です。こちらは商品販売がほとんどなく、後から加入した人の拠出金を上位者に配当するだけの仕組みで、開設・運営・勧誘などが全面的に禁止されています。

実態として商品の販売がほとんどなく、後から入ってきた人のお金を分け合っているだけという構造であれば、広告以前にビジネスの仕組みそのものが問題になります。

紹介報酬が中心の広告は慎重に

たとえば、会員は高額なスターターキットを購入して登録し、自分が商品を販売しなくても新しい会員を紹介すれば高額の報酬が入り、説明会やLPでは主に「紹介報酬」の魅力が語られ、商品・サービスそのものの魅力はほとんど語られない、というケースを考えてみます。
このような場合、連鎖販売取引としての規制だけでなく、無限連鎖講に近い構造とみなされるおそれもあり、非常に慎重な判断が必要です。

連鎖販売取引に該当する場合、広告では商品・役務の種類、初期費用などの特定負担の内容、特定利益の計算方法、事業者の名称・住所・電話番号などを表示する義務があります。さらに、特定利益について「著しく有利であると誤認させる表示」や「利益が確実に得られると誤解させるような断定的な言い方」も禁止されています。
説明会やLPの段階でこうした情報がほとんど出てこず、収入のイメージだけが強調されている場合は、特商法や無限連鎖講防止法の観点から、一度立ち止まって考えた方がよい領域です。

 

「特商法に基づく表記」と広告表現の整合性

ECサイトやLPには「特定商取引法に基づく表記」ページがつきものですが、テンプレートをコピーするだけで済ませていませんか。広告コピーとこのページを連動させて設計することで、トラブルを防ぎながら信頼感のある訴求ができるようになります。

テンプレのコピペだけでは足りない

インターネット上にはテンプレートがたくさんありますが、他社サイトの内容をそのままコピーして社名だけ変えたような状態だと、「法律を守っているつもり」でも実態と合っていないことがよくあります。
実務では後払いをやめているのに特商法表示には「後払い可」と残っていたり、返品条件が古いキャンペーンのままになっていたりすると、「表示された条件」と「実際の運用」にギャップが生まれます。

特商法は「ページがあればよい」という考え方ではなく、表示された内容が事実と合っているかどうかが重要です。広告や価格設定を変えたときは、特商法表示の方も忘れずに見直しておくと、思わぬ落とし穴を防ぎやすくなります。

広告本文と特商法表示の整合性

広告の世界では、どうしてもコピーやデザインに目が行きがちです。しかし本来、「広告本文」と「特商法に基づく表記」は対立するものではなく、セットで設計した方が全体として説得力のあるコミュニケーションになります。

広告本文で「いつでも解約できます」と書くなら、特商法表示にも「どのタイミングで、どんな方法で解約できるか」を具体的に書いておく。「全額返金保証」と打ち出すなら、その条件である期間・対象・手続きを特商法表示かFAQで丁寧に説明しておく。
こうしておけば、問い合わせがあったときにも「広告と表示と約款が同じことを言っている」状態になり、説明がしやすくなります。

ステマ規制と「広告であることを隠さない」姿勢

最後に、特商法とは別の法律ですが、いまの広告環境で外せないのが景品表示法によるステルスマーケティング規制です。
2023年10月から、広告であるにもかかわらずそれを隠す、いわゆるステマが景品表示法違反として扱われるようになりました。インフルエンサーに商品を提供してSNSで投稿してもらう場合や、アフィリエイト付きの記事広告などで、「PR」「広告」「提供」などの表示をしないまま紹介すると、事業者の広告であることがわからない表示と判断されるおそれがあります。

特商法が「売り方」や「契約の条件」を対象にしているのに対して、景品表示法は「表示そのものの分かりやすさ」「広告であることの明示」を対象にしています。副業・サブスク・エステ・紹介ビジネスなど、少しセンシティブなジャンルで広告を出すときは、どちらの観点も頭の片隅に置いておきたいところです。

 

まとめ

特商法というと、「あれもダメ、これもダメ」と制限ばかりが目につくかもしれません。しかし視点を変えれば、トラブルを避けながら消費者に届く広告を作るための道しるべでもあります。

消費者庁が公開している特商法ガイドや条文を読んでいくと、その多くは「ここをきちんと説明しておくと、あとでトラブルになりにくいですよ」というナビゲーションの役割を担っていることがわかります。
副業広告であれば、仕事の実態や必要な費用、どのくらいの収入を期待できるのか。サブスクや定期購入であれば、初回の安さだけでなく、継続回数や解約のしやすさ。エステやスクールであれば、夢のような変化ではなく、現実的に目指せる変化。紹介型ビジネスであれば、商品そのものの価値と紹介報酬のバランス。
こうしたポイントを一つひとつ意識していくことで、自然と特商法や景品表示法の考え方に近づいていきます。

もう一つ付け加えると、法律を意識した広告設計は、クレームや返金対応にかかるコストを下げる効果もあります。
問い合わせやクレームの多くは、広告と実際のサービスの間にあるギャップから生まれます。そのギャップをあらかじめ小さくしておくことは、結果的に顧客満足度を高め、リピートや口コミにつながりやすくなります。「法律を守ること」と「売れる広告を作ること」は、本来矛盾するものではないと考えています。

今お使いのランディングページや広告の中に「この言い方は少し強すぎるかもしれない」「ここは大事な条件が伝わりきっていない気がする」と感じる箇所があれば、それが見直しのタイミングです。
特商法や景品表示法を意識したからといって、売れないコピーしか選べないわけではありません。伝えるべき条件をきちんと伝えたうえで、それでも読み手にとって魅力的に感じられる言い方を探していくことが、これからの広告づくりには求められているのではないでしょうか。

自社の広告やランディングページについて「少し気になるところがある」と感じた方は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。日々の集客や販売促進のご相談をお受けしながら、特商法や景品表示法に配慮した、長く続けられる広告コミュニケーションについて一緒に考えていきます。

 

 

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