2026年2月16日
マーケティングアルコール・タバコ広告の規制と自主基準 媒体審査で困らないための考え方と実務
アルコールやタバコに関する広告は、「どこまでやっていいのか分からない」「うっかり規制に引っかかりそうで怖い」と感じている方が多い分野です。
酒類メーカーやタバコ会社だけの話ではありません。居酒屋チェーンが交通広告で「生ビール半額」と打ち出す場合、酒類メーカーが協賛するイベントの告知を出す場合、商業施設が喫煙所の案内サインを設置する場合など、アルコールやタバコに関わる広告を扱う場面は意外と多くあります。
こうした広告を企画する際に知っておきたいのが、法律だけでなく、業界団体が定める自主基準の存在です。 アルコールやタバコは、健康や社会への影響に配慮が求められる商材であるため、一般的な商品とは異なるルールのもとで広告が行われています。「法律に違反していなければ問題ない」という考え方だけでは、実務上の判断が難しくなる場面が多いのです。
また、タバコに関しては、2020年4月に全面施行された改正健康増進法によって、飲食店や商業施設における受動喫煙防止対策が義務化されました。喫煙所の案内表示や分煙に関する告知も、広告や看板の一種として扱われることがあり、法律上のルールを把握しておく必要があります。
ここでは、アルコールおよびタバコの広告規制について、法律と業界団体の自主基準の違いを整理しながら、媒体審査で困らないための考え方と具体的な実務の進め方について説明していきます。
目次
アルコール・タバコ広告はなぜ規制されているのか
アルコールやタバコの広告規制を理解するには、まず「なぜこれらの商材だけが特別に扱われているのか」を知っておく必要があります。単に厳しいルールがあるわけではなく、その背景には社会的な理由があります。
アルコール・タバコが特別な商材とされる理由

アルコールは「致酔性飲料」としての特性を持っています。
飲酒や喫煙の習慣は個人の選択に委ねられる部分が大きいものの、過度な摂取や依存につながる可能性があることも広く知られています。タバコについても、消費と健康との関係が社会的に認識されており、広告によって消費を促進していると受け取られることに対して、慎重な姿勢が求められています。
そのため、これらの商品は食品や日用品とは異なり、広告によって消費行動を強く後押しすることに対して、一定の配慮が必要です。特に20歳未満の者への影響は重要な論点になります。判断力が十分に備わっていない世代に対して、誤解や憧れを与える表現は避けるべきだと考えられています。
こうした背景から、アルコール・タバコは「誰にでも自由に訴求してよい商品」ではなく、広告の在り方そのものを慎重に扱う商材として位置づけられてきました。
広告規制の目的は「禁止」ではなく「社会的配慮」
アルコールやタバコの広告規制というと、「広告してはいけない」「できることがほとんどない」といったイメージを持たれがちです。しかし、規制の本来の目的は、広告活動そのものを禁止することではありません。
消費者に誤った期待を持たせたり、過度な使用を連想させたりしないようにするために、一定の枠組みを設けています。広告規制は表現を縛るためのものではなく、社会とのバランスを取るための仕組みだと捉えるほうが実態に近いでしょう。
この考え方を理解していないと、「どこまでが許されるのか分からないから、何もしない方が安全だ」という判断に傾いてしまいがちです。しかし実際には、適切な配慮を前提とすれば、情報発信の余地が完全になくなるわけではありません。
広告担当者が誤解しやすいポイント
広告担当者がつまずきやすいのは、規制の内容そのものよりも、規制の捉え方です。よくある誤解のひとつが、「法律で禁止されていなければ問題ない」という考え方です。
アルコールやタバコの場合、法律とは別に業界団体が自主的に定めている基準があり、実務ではこちらを重視する場面が多くあります。この点を理解しないまま企画を進めると、制作の途中や媒体審査の段階で修正や差し戻しが発生しやすくなります。
また、「以前は問題なかった表現だから今回も大丈夫だろう」と過去の事例をそのまま当てはめてしまうのも注意が必要です。社会的な受け止め方や広告を取り巻く環境は変化しており、同じ表現でも評価が変わることがあります。
法律による広告規制と業界団体の自主基準の違い
アルコール・タバコ広告を考えるうえで、多くの広告担当者が戸惑うのが「法律と自主基準のどちらを基準に判断すればよいのか」という点です。結論から言えば、両方を前提にして企画を進める必要があります。それぞれの役割の違いを整理しておきましょう。
法律で定められている広告規制の考え方
法律による広告規制は、社会全体に共通する最低限のルールを定めたものです。虚偽や誇大な表現を禁止することや、20歳未満の者を保護することなど、消費者に不利益が生じないようにすることが主な目的です。
アルコールについては、「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」によって20歳未満の者の飲酒が禁止されており、国税庁告示「二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準」によって、酒類の容器や包装への注意表示が求められています。
タバコについては、たばこ事業法第40条において、広告を行う者は「二十歳未満の者の喫煙防止」および「製造たばこの消費と健康との関係に配慮する」とともに、「広告が過度にわたることがないように努めなければならない」と定めています。また、財務大臣が広告に関する指針を示すことができるとしています。
ただし、これらの法律は「何をしてはいけないか」を大枠で示すものであり、広告表現の細かな判断まですべて網羅しているわけではありません。そのため、法律だけを基準にすると、「条文上は問題なさそうだが、実際に広告として出してよいのか判断に迷う」という状況が生まれやすくなります。
業界団体の自主基準とは何か

自主基準とは、法律で定められたルールを補完する形で、各業界が自主的に設けているガイドラインです。
アルコールやタバコのように社会的影響が大きい商材では、業界自らが責任を持って広告の在り方を定めることが求められてきました。
アルコールについては、日本酒造組合中央会、日本蒸留酒酒造組合、ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、全国卸売酒販組合中央会、全国小売酒販組合中央会、日本ワイナリー協会、日本洋酒輸入協会、全国地ビール醸造者協議会の9団体で構成される「飲酒に関する連絡協議会」が、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」を定めています。この基準は昭和63年に制定され、社会環境の変化に応じて改定を重ねてきました。
タバコについては、「一般社団法人日本たばこ協会」が「製造たばこに係る広告、販売促進活動及び包装に関する自主規準」を定めています。たばこ事業法の趣旨に沿って、20歳未満の者の喫煙防止や、消費と健康との関係への配慮、広告が過度にわたらないことなどを目的としています。
自主基準では、法律では触れられていない表現のニュアンスや、受け手の印象に関わる点まで踏み込んで示していることが多くあります。
たとえば、特定の表現が20歳未満の者に与える影響や、過度な使用を連想させないための配慮など、実務に直結する内容が盛り込まれています。
これらの基準は法的な強制力を持つものではありませんが、広告業界では広く共有されており、実質的な判断基準として扱われています。
なぜ広告実務では自主基準が重視されるのか
広告実務において自主基準が重視される理由のひとつは、媒体社やプラットフォームが審査の基準として自主基準を採用している点にあります。法律に違反していなくても、自主基準に反していると判断されれば、広告掲載が認められないことがあります。
また、自主基準は社会の受け止め方の変化を反映しやすいという特徴があります。法律の改正には時間がかかりますが、自主基準は比較的柔軟に見直されるため、最新の価値観や社会的要請が反映されやすくなっています。
広告担当者にとって重要なのは、「どちらが上か」を考えることではなく、両方を前提として企画を進めることです。法律を最低ラインとしつつ、自主基準を実務上の判断軸として捉えることで、後戻りの少ない広告設計が可能になります。
アルコール広告における自主基準の基本的な考え方
アルコール広告の自主基準で大切なのは、「どんな表現が禁止されているか」を覚えることではありません。その広告がどのように受け取られるかを想像し、問題になりやすいポイントを事前に避ける判断力が求められます。
酒類業界の自主基準が重視するポイント
酒類業界の自主基準では、一貫して「飲酒行為そのものを過度に肯定しないこと」を重視しています。
これは、飲酒が楽しいものであることを否定しているわけではありません。問題になるのは、飲酒によって生活が良くなる、成功につながる、人間関係が円滑になるといった印象を強く与えてしまう表現です。
たとえば、仕事の成功や人間関係の改善と飲酒を直接結びつける演出は、広告としては分かりやすい反面、飲酒を必要以上に価値づけていると受け取られやすくなります。こうした表現は、企画段階では魅力的に見えても、審査の過程で指摘されやすい典型例です。
広告では、商品やブランドの背景、味わい、製法などを伝えることは可能です。一方で、「飲むこと自体」を主役にしすぎていないかという視点を常に持つことが、自主基準を踏まえた判断につながります。
20歳未満の者への配慮と表現上の注意

アルコール広告で最も慎重な判断が求められるのが、20歳未満の者への影響です。ここで注意すべきなのは、「20歳未満の者が登場していないから大丈夫」という単純な判断が通用しない点です。
酒類の自主基準では、テレビ広告において25歳未満の者を広告のモデルに使用しないこと、また25歳以上であっても25歳未満に見えるような表現は行わないことを定めています。登場人物の年齢が明示されていなくても、服装や言動、シチュエーションによって若年層を想起させる場合、問題視される可能性があります。
また、学校生活や部活動、学生の集まりを連想させる場面と飲酒が結びつくと、意図せず20歳未満の者向けの印象を与えてしまうことがあります。20歳未満の者を対象としたテレビ番組、新聞、雑誌、インターネットなどには広告を行わないことも基準に含まれています。
実務では、「この広告を20歳未満の者が見たとき、どう感じるか」という視点でチェックすることが重要です。年齢制限を設けている媒体であっても、広告素材そのものが不適切だと判断されるケースは少なくありません。
テレビ広告における時間帯や表現の制限
テレビ広告については、放送時間帯の制限も設けられています。
酒類の自主基準では、午前5時から午後6時までの時間帯はテレビ広告を行わないこととしています。
また、喉元を通る「ゴクゴク」「グビグビ」などの効果音を使用しないこと、お酒を飲むシーンについて喉元アップの描写はしないことなども定めています。これらは、飲酒欲求を過度にあおらないための配慮です。
デジタル広告・SNSで判断が難しくなる理由
近年、アルコール広告で特に難易度が上がっているのが、デジタル広告やSNSでの運用です。テレビや紙媒体と異なり、WebやSNSでは広告が意図しない文脈で拡散される可能性があります。
投稿単体では問題がなくても、コメントや引用、他の投稿との並びによって、飲酒を過度に肯定しているように見えてしまうことがあります。また、フォロワーの年齢層が完全に把握できない場合、20歳未満の者への配慮が十分でないと判断されるリスクもあります。
そのため、デジタル領域では「表現そのもの」だけでなく、「どのような環境で、どのように見られるか」まで含めて判断する必要があります。
自主基準を踏まえた実務上の判断軸
アルコール広告で迷ったときは、「この表現は飲酒を必要以上に価値づけていないか」「20歳未満の者が見たときに誤解を招かないか」という二つの軸で考えることが有効です。
自主基準は曖昧に感じられることもありますが、判断の軸を整理しておくことで、企画段階での迷いは大きく減ります。細かな可否を追いかけるよりも、広告全体の印象を俯瞰して確認する姿勢が、結果としてリスクの少ない広告につながります。
タバコ広告における自主基準の基本的な考え方
タバコ広告は、アルコール広告以上に厳しい目で見られる分野です。「ほとんど何もできないのではないか」と感じている方もいるかもしれません。しかし、タバコ広告特有の前提を理解しておけば、判断に迷う場面を減らすことができます。
タバコ広告が特に厳しく扱われる背景

タバコ広告が厳しく規制されている背景には、消費と健康との関係に関する社会的な認識があります。
喫煙による健康リスクは広く共有されており、広告によって喫煙を促進していると受け取られることに対して、強い警戒感が持たれています。
そのため、タバコ広告では「喫煙が望ましい行為である」という印象を与えないことが、他の商材以上に重視されます。喫煙行為そのものを肯定的に描く表現は、問題視されやすい傾向があります。
自主規準による媒体や表現の制限
日本たばこ協会の自主規準では、表現の自由度がかなり限定されています。
テレビ、ラジオ、インターネット(技術的に成人のみを対象とすることが可能な場合を除く)での製品広告は行わないこととしています。屋外広告や電車・バスなどの公共交通機関での広告も同様です。新聞や雑誌についても、統計調査において閲読者の90%以上が成人であるとの結果が得られている場合に限り、広告が可能としています。
広告モデルについても厳しい制限があります。25歳未満の者を使用しないこと、20歳未満の者に人気のあるタレント、モデル、キャラクターを用いないこと、20歳未満の者の人気度が50%以上のタレントやモデルを使用しないことなどを定めています。
喫煙シーンを前面に出した演出や、喫煙による満足感や高揚感を強調する表現は、審査の段階で指摘を受けやすくなります。若年層を想起させる表現や、ファッション性を過度に強調したビジュアルは、喫煙への憧れを助長すると受け取られる可能性があります。
情報提供と広告表現の境界線
タバコ広告で判断が難しいのが、「情報提供」と「広告表現」の境界線です。
商品の仕様やブランドの歴史、企業としての取り組みを伝えること自体は可能な場合がありますが、それが喫煙を促す表現につながっていないかどうかが常に問われます。製品の特徴を伝える際でも、使用感や満足感に焦点を当てすぎると、広告としての色合いが強くなります。一方で、企業情報や社会的な取り組みを中心にした発信であれば、比較的受け入れられやすい傾向があります。
なお、企業広告や喫煙マナー向上広告については、製品広告とは別の自主規準が設けられており、テレビでの放送も可能としています。ただし、喫煙を促進しないような内容であることが求められます。
タバコ広告では、「何を伝えたいか」だけでなく、「どう受け取られるか」をより慎重に考えることが、自主基準を踏まえた実務判断につながります。
広告担当者が押さえておきたい実務上の注意点
アルコール・タバコ広告で問題が起きる多くのケースは、悪意のある表現や明確なルール違反によるものではありません。「そこまで問題になるとは思わなかった」「過去に似た表現を使ったことがある」という、判断の甘さや認識のズレが原因になることがほとんどです。
法律はクリアしているのに問題になるケース
広告担当者が最初に戸惑うのが、「法律上は問題ないはずなのに、広告として止められる」という場面です。アルコールやタバコ広告では、このケースが珍しくありません。
法律に触れない表現であっても、飲酒や喫煙を前向きに捉えすぎていると判断されると、自主基準の観点から修正を求められることがあります。ここで重要なのは、広告審査が「違反かどうか」ではなく、「社会的にどう見えるか」を基準に行われている点です。
広告は企業の姿勢を象徴するものでもあります。そのため、消費者や第三者から見て誤解を招く可能性がある表現は、法的な問題がなくても避けるべきだと判断されます。このギャップを理解していないと、「なぜダメなのか分からない」という不満だけが残ってしまいます。
企画段階で見落とされやすいポイント

実務でよくあるのが、企画書の段階では問題にならなかった表現が、制作が進んでから指摘されるケースです。これは、企画段階ではコンセプトや狙いに意識が向きすぎており、最終的な見え方まで十分に検討できていないことが原因です。
特にアルコール・タバコ広告では、ビジュアルやコピーが与える印象が重視されます。文章としては控えめでも、写真や動画の雰囲気によって、飲酒や喫煙を過度に魅力的に見せてしまうことがあります。
広告担当者としては、「企画意図」ではなく「完成物」を基準に判断する視点を持つことが重要です。第三者が見たときに、どのような印象を受けるかを一度冷静に確認するだけでも、差し戻しのリスクは大きく下がります。
制作会社・媒体社との認識ズレが起きる理由
アルコール・タバコ広告では、制作会社や媒体社との間で認識ズレが生じやすくなります。その理由の一つは、自主基準の解釈に幅があることです。
制作側は表現として成立していると考えていても、媒体社は掲載リスクを重く見て慎重な判断をする場合があります。このとき、「前回は通った」「他社ではやっている」といった理由は、ほとんど意味を持ちません。
広告担当者の役割は、両者の間に立って基準をすり合わせることです。そのためには、「なぜこの表現が問題視される可能性があるのか」を言語化できる必要があります。自主基準を単なるルールとしてではなく、判断の背景まで理解しておくことが、調整の精度を高めます。
判断に迷ったときの現実的な考え方
アルコール・タバコ広告で判断に迷ったときは、「通るかどうか」ではなく、「なぜ通らない可能性があるのか」を先に考える方が現実的です。問題になる理由を想定できれば、修正の方向性も見えてきます。
また、迷う表現は、たいてい別の言い方や見せ方が存在します。自主基準は創造性を否定するものではなく、表現の方向を調整するための指針と捉える方が、実務では有効です。
アルコール・タバコ広告では、無理に攻めるよりも、リスクを理解したうえで適切な表現を選ぶことが、結果としてスムーズな進行につながります。
受動喫煙防止対策と施設における表示のルール
タバコに関しては、製品広告の自主基準とは別に、施設運営者が知っておくべきルールがあります。2020年4月に全面施行された改正健康増進法により、飲食店や商業施設では受動喫煙防止対策が義務化されました。喫煙所の案内や分煙の告知を行う際にも、このルールを踏まえておく必要があります。
改正健康増進法で何が変わったのか

改正健康増進法は、「望まない受動喫煙」をなくすことを目的として、2018年7月に成立し、2020年4月1日に全面施行されました。これにより、受動喫煙を防止するための取り組みが「マナー」から「ルール」へと変わりました。
多くの人が利用する施設では、原則として屋内禁煙が義務づけられています。学校、病院、児童福祉施設、行政機関などは敷地内禁煙となり、屋内に喫煙室を設けることもできません。飲食店やオフィス、商業施設などは原則屋内禁煙ですが、一定の基準を満たした喫煙室を設置することは認められています。
違反した場合は、指導、勧告、命令等の対象となり、改善が見られない場合は罰則(過料)が適用されます。喫煙禁止場所で喫煙した場合は最大30万円、施設管理者が必要な措置を講じない場合は最大50万円の過料が科される可能性があります。
施設管理者に求められる対応
飲食店や商業施設の管理者には、いくつかの対応が求められています。
まず、喫煙可能な場所を設ける場合は、法令で定められた標識を掲示する義務があります。施設の出入口や喫煙室の入口に、喫煙可能な場所であることを示す標識を掲示しなければなりません。標識のデザインは厚生労働省が示すモデルがあり、それに準じた形式で掲示することが求められています。
また、喫煙室には技術的基準が設けられています。たばこの煙が喫煙室の外に流出しないよう、出入口において室外から室内へ毎秒0.2メートル以上の空気の流れを確保すること、壁や天井で区画されていること、たばこの煙を屋外に排気することなどが求められます。
さらに、喫煙可能なエリアには20歳未満の者を立ち入らせてはいけません。これは来店客だけでなく、従業員も含まれます。店舗全体を喫煙可能室とした場合は、20歳未満の者を入店させることができません。
喫煙所案内や分煙表示を行う際の注意点
商業施設やビルで喫煙所の案内サインを設置する場合、単なる誘導表示であっても、いくつかの点に注意が必要です。
喫煙所の案内は、喫煙を促進する広告ではなく、施設利用者への情報提供として位置づけられます。そのため、タバコ製品の広告に関する自主基準とは異なる扱いになりますが、表現によっては「喫煙を推奨している」と受け取られる可能性があるため、中立的な表現にとどめることが望ましいでしょう。
また、喫煙所の案内と合わせて、20歳未満の者の立入禁止を明示することや、受動喫煙防止に関する注意喚起を添えることも、施設管理者としての配慮として有効です。
なお、東京都など一部の自治体では、国の法律よりも厳しい受動喫煙防止条例を定めている場合があります。施設が所在する自治体のルールも確認しておくことをおすすめします。
媒体審査をスムーズに通すための実務ポイント
ここまで自主基準の考え方を中心に説明してきましたが、実際の広告制作では「具体的にどう動けばいいのか」が分からないと現場では使えません。媒体審査で手戻りを減らすために、企画から掲載までの流れに沿って押さえておきたいポイントを整理します。
企画段階で確認しておきたいこと
アルコール・タバコ広告の企画を始める前に、まず確認しておきたいのが「どの媒体に出すのか」と「その媒体の審査基準はどうなっているのか」です。
媒体によって審査の厳しさや重視するポイントは異なります。
テレビや新聞のような従来型のマスメディアは、業界の自主基準に沿った審査体制が整っていることが多く、基準も比較的明確です。一方、Webメディアやプラットフォーム広告では、媒体ごとに独自の審査ガイドラインを設けていることがあり、事前に確認しておかないと想定外の指摘を受けることがあります。
企画段階でやっておくと効果的なのは、該当する自主基準の原文に目を通しておくことです。
飲酒に関する連絡協議会や日本たばこ協会の自主基準は、いずれもWeb上で公開されています。すべてを暗記する必要はありませんが、「何が問題視されやすいのか」の感覚を持っておくだけで、企画の方向性を誤るリスクが下がります。
また、過去に同じ媒体で掲載した広告があれば、そのときの審査でどのような指摘があったかを確認しておくことも有効です。媒体社によっては、過去の審査結果を記録として残している場合もあります。
たとえば、居酒屋チェーンが駅構内に「生ビール半額」の交通広告を出す場合、飲酒を過度に促進する表現になっていないか、20歳未満の者への配慮がされているかといった点が審査で見られます。酒類メーカーが協賛するイベントの告知であれば、アルコールの訴求が前面に出すぎていないか、イベント内容との バランスが取れているかが問われます。商業施設の喫煙所案内であれば、改正健康増進法に基づく標識の掲示義務を満たしているか、喫煙を推奨するような表現になっていないかを確認しておく必要があります。
制作会社・媒体社への事前相談のタイミング
アルコール・タバコ広告で手戻りが発生しやすいのは、制作がかなり進んでから媒体審査に出すケースです。完成に近い状態で「ここは修正が必要です」と言われると、スケジュールにもコストにも影響が出ます。
これを避けるためには、ラフ案や絵コンテの段階で媒体社に相談しておくことが効果的です。正式な審査ではなくても、「この方向性で問題になりそうな点はあるか」を事前に確認しておくことで、大きな方向転換を防ぐことができます。
制作会社に対しても、最初の段階で「この案件はアルコール(またはタバコ)広告であり、自主基準の制約がある」ことを共有しておくことが大切です。制作会社が規制商材の経験が少ない場合、表現の自由度を広く見積もってしまい、後から修正が必要になることがあります。
相談のタイミングとしては、コンセプトが固まった段階、ラフ案ができた段階、完成前の最終確認という三段階を意識しておくと、手戻りを最小限に抑えられます。
審査で指摘を受けたときの対応
どれだけ事前に準備をしていても、審査で指摘を受けることはあります。そのときに大切なのは、「なぜその指摘が出たのか」を正確に理解することです。
媒体社からの指摘は、具体的な修正箇所だけでなく、その背景にある考え方を確認するようにしましょう。「この表現がNGです」という結果だけを受け取ると、同じような問題が別の箇所でも起きてしまいます。指摘の理由を把握しておけば、代替案を考える際にも方向性を誤りにくくなります。
修正案を出すときは、「なぜこの修正で問題が解消されるのか」を説明できる状態にしておくことが望ましいです。ただ表現を変えるだけでなく、自主基準のどの考え方に照らして問題がなくなるのかを言語化できると、媒体社とのやり取りがスムーズになります。
また、どうしても表現を変えたくない場合は、その理由を整理したうえで媒体社と交渉することも選択肢のひとつです。ただし、自主基準の根幹に関わる部分については譲れないケースが多いため、交渉が成立する範囲は限られることを理解しておく必要があります。
社内での確認体制を整えておく
アルコール・タバコ広告では、広告担当者一人の判断だけで進めるとリスクが高くなります。企画段階から法務やコンプライアンス部門、場合によっては経営層にも確認を取る体制を整えておくことが重要です。
特に、過去に広告表現で問題が起きた経験がある企業では、社内でのチェック体制が厳格化されていることがあります。その場合、社内承認に時間がかかることを見越してスケジュールを組む必要があります。
社内確認のポイントとしては、「この表現で社会的な批判を受ける可能性はないか」「媒体審査で止められるリスクはないか」「万が一問題になった場合、会社としてどう説明するか」という三点を軸に確認しておくと、判断の精度が上がります。
まとめ
アルコール・タバコの広告規制は、細かな禁止事項を覚えることが目的ではありません。広告実務で本当に求められるのは、法律と業界団体の自主基準がそれぞれどのような役割を担っているのかを理解し、その前提に立って企画を組み立てることです。
法律は、広告活動における最低限のルールを示すものです。一方で、自主基準は、社会的な受け止め方や業界としての姿勢を反映した、実務上の判断軸として機能しています。アルコール・タバコ広告では、この自主基準を無視して企画を進めることは、結果的に手戻りやリスクを増やすことにつながります。
また、自主基準は「表現を縛るためのルール」ではありません。広告が社会とどのように向き合うべきかを示した指針であり、広告担当者が迷ったときに立ち戻るための基準でもあります。問題になりやすいポイントを事前に理解しておくことで、不要に萎縮することなく、現実的な判断ができるようになります。
アルコールについては「飲酒に関する連絡協議会」の自主基準、タバコについては「日本たばこ協会」の自主規準が、それぞれ公開されています。広告担当者としては、これらの原文に一度目を通しておくことをおすすめします。細かな条文を暗記する必要はありませんが、どのような考え方に基づいて基準が設けられているのかを把握しておくと、判断の精度が上がります。
アルコールやタバコといった規制商材を扱う際には、「通るかどうか」だけでなく、「なぜこの表現を選ぶのか」を説明できる状態を目指すことが重要です。その積み重ねが、広告の質を高め、社内外との調整をスムーズにします。
アルコールやタバコの広告を交通広告・屋外広告で展開したいとお考えの方は、媒体選定から掲載可否の確認まで、当社がサポートいたします。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。






