2026年5月22日

マーケティング

じわる広告術 気づいた人ほど面白い広告表現の共通点

 

広告には、見た瞬間に内容が伝わるものもあれば、あとからじわじわ印象に残るものもあります。最初は何気なく見ていたのに、背景を知ったとたんに意味がつながり、思わず誰かに話したくなる。そんな広告には、強い記憶を残す力があります。

たとえば、消費者の疑問にまっすぐ答えた広告もあれば、ライバル企業との関係をにおわせることで面白さを生んだ広告もあります。ブランドのロゴや記号をあからさまに見せるのではなく、映像の中にさりげなく忍ばせることで、印象に残る広告もあります。こうした表現は、その場で全部を説明しきらないからこそ、気づいた人の中で意味がふくらみ、広告としての面白さが深まっていきます。

いまは、情報をただ並べるだけでは、人の記憶に残りにくい時代です。強い言葉や派手な映像だけでなく、受け手の頭の中で続いていく表現が、広告の印象を大きく左右するようになっています。目立つことだけを目指すのではなく、見た人が少し立ち止まり、意味に気づき、誰かに話したくなる。そんな設計が、広告の強さにつながります。
ここでは、気づいた人ほど面白い広告表現の共通点について説明します。

 

背景を知ると広告は強くなる

広告は、分かりやすいことが大切だとよく言われます。何の商品なのか、何を伝えたいのかがすぐに分からなければ、受け手の関心をつかめないこともあります。とくに、接触時間が短い広告では、その分かりやすさがとても重要です。
ただ、その一方で、すぐに分かることだけが広告の強さではありません。あとから意味がふくらむ広告にも、別の強さがあります。その場では何気なく見過ごしていたのに、背景を知ったとたんに見え方が変わる。そうした広告は、一度見ただけで終わらず、人の中に長く残っていきます。

見た瞬間に効く広告と、あとから効く広告

見た瞬間にわかる広告は、伝えたいことが整理されていて、受け手に負担をかけません。商品名や特長、訴求点がすぐに頭に入ってくるので、多くの人に同じ内容を届けやすくなります。広告としての基本がしっかりしているからこそ、幅広い場面で強さを発揮します。
それに対して、あとから効いてくる広告は、その場ですべてを言い切りません。短いコピーや一瞬の表情、ブランドの色や形、競合との関係など、いくつかの要素が受け手の中でつながることで、意味が立ち上がります。最初は少し引っかかるだけでも、背景を知ったときに納得が生まれ、その広告が急に印象深いものになります。

この違いは、情報量の多さではありません。むしろ、あとから効いてくる広告ほど、見た目は簡潔なこともあります。少ない表現の中に意味を込めているからです。すぐに受け止められる入口があり、その先にもう一段深い面白さがある。この二段構えがあると、広告はただ見られて終わるものではなくなります。

気づいた人が話したくなる仕掛け

あとから効いてくる広告が強いのは、記憶に残るからだけではありません。気づいた人が、思わず誰かに話したくなるからです。広告の中にちょっとした含みや文脈があると、それに気づいた人は、自分だけが見つけた小さな発見のように感じます。その感覚が、会話を生みます。

たとえば、あるコピーが実はライバル企業を意識していたと分かったときや、何気ない場面にブランドらしい記号が隠れていると気づいたとき、人はその面白さを人に伝えたくなります。商品そのものの説明ではなく、広告の仕掛け自体が話題になるのです。

こうした広告には、受け手を参加させる力があります。ただ情報を受け取るだけではなく、自分で意味を見つけたと感じられるからです。その小さな発見が、広告を一方通行の伝達ではなく、会話のきっかけに変えていきます。

面白さは文脈から生まれる

広告を見ていると、おもしろさは言葉や映像だけで生まれるわけではないことが分かります。なぜこの言い方なのか。なぜこの表情なのか。なぜこのタイミングなのか。そこに背景があるからこそ、広告の意味は深くなります。

ブランドの歴史や競合との関係、消費者が抱いている思い込み、ロゴや色に対する印象。企業のまわりには、もともとたくさんの意味が蓄積されています。強い広告は、それらを長々と説明するのではなく、短い表現の中にうまく折り込みます。だから、知っている人ほど面白く感じますし、知らない人でも気になって記憶に残ります。

広告は、目の前にある表現だけで完結しているわけではありません。その背後にある文脈まで含めて、ひとつのメッセージになっています。だからこそ、あとから効いてくる広告には、見た直後だけでは終わらない強さがあります。

 

疑問や誤解を味方にする

広告というと、企業が伝えたいことを一方的に発信するものだと思われがちです。けれど、長く記憶に残る広告の中には、消費者の疑問や違和感に真正面から向き合うことで力を持ったものがあります。
その代表として挙げられるのが、ポカリスエットです。発売当初のキャッチフレーズは「アルカリイオン飲料」でしたが、この言葉には独特の引っかかりがありました。リトマス試験紙で測ると、ポカリスエットは酸性を示すからです。アルカリ性と書かれているのに、実際に調べると酸性になる。この矛盾に気づいた人は、少なからずいたはずです。

ポカリスエットのCMが拾った疑問

当時のCMの中に、この疑問をそのまま会話として取り込んだものがありました。電車の中で、糸井重里さんと森高千里さんがやりとりをする場面です。「ポカリスエットってアルカリ性って書いてあるのに、どうして酸性を示すんですか」という問いに対して、「ポカリスエットはおなかの中でアルカリ性に変わるんだよ」と答える、そんな内容でした。

森高千里さんは、1986年に開催された第1回ポカリスエット・イメージガール・コンテストで優勝した人物で、そこから長くCMに起用された女性です。発売当初からのキャッチフレーズに向けられていた素朴な疑問を、よりによってそのブランドのイメージガールに語らせる。企業の側が、自社の言葉に対して寄せられる違和感を知らないふりをせず、むしろCMの中で正面から取り上げる。そこには、一方的な宣伝とは違う誠実さがあります。

アルカリイオン飲料という言葉に違和感を持った人なら、この会話にはっとするはずです。広告が、自分の中にあった疑問をそのまま口にしてくれたからです。宣伝だから都合のいいことしか言わないだろうと身構えていたところに、自分が引っかかっていた点を拾い上げる会話が流れてくる。このギャップが、広告の言葉を記憶に残るものへと変えていきます。

この事例のおもしろさは、誤解が生まれたこと自体を、ただ訂正すればよい話として終わらせなかったところにあります。ふつうなら、補足説明をして終わってしまいそうな場面です。けれど、ここではその違和感そのものが、人の記憶に残る広告の入口になりました。

正しさを、届く言葉に変える

企業の説明には、正しさが欠かせません。ただ、正しさだけでは、人の記憶には残りにくいものです。酸性とアルカリ性のような話は、理屈として説明しようとすると急に難しくなります。
実際、大塚製薬の公式Q&Aでも、ポカリスエットは飲み物としては酸性を示す一方で、体内での代謝後の性質からアルカリ性食品に分類されると説明されています。ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなど、体内で燃焼されるとアルカリ性を示す元素が多く含まれているためです。理屈としては筋が通っていますが、そのままでは広告の言葉になりにくい話でもあります。

そこで必要になるのが、届く言葉に変えることです。難しい理屈をそのまま並べるのではなく、相手が理解できる形へと言い換える。広告の役割は、事実をねじ曲げることではなく、正しいことを届く言葉に翻訳することにあります。電車の中の何気ない会話という形にしたことで、理科の教科書のような説明が、ぐっと身近なものになりました。

なお、ポカリスエットのキャッチフレーズはその後、「アイソトニック飲料」などを経て、現在は「イオンサプライドリンク」に変更されています。アルカリ性という言葉が持つ誤解の余地を整理しながら、ブランドの伝え方そのものも時代に合わせて磨かれてきたわけです。

誠実さがおもしろさになる

気づいた人がニヤリとする広告というと、競合への挑発や、ロゴの見立てのような仕掛けを思い浮かべやすいかもしれません。そうした表現には独特のおもしろさがあります。ただ、じわじわ効く広告はそれだけではありません。疑問にまっすぐ答えることそのものが、印象に残る場合もあります。

ポカリスエットのCMは、そのことをよく示しています。商品の特長を強く押し出したから記憶に残ったのではありません。受け手の中にある違和感を見逃さず、それに向き合う形で言葉を作ったからこそ、印象に残ったのです。広告は派手な表現だけで成立するものではなく、相手の疑問にどう向き合うかによっても強くなります。

広告のおもしろさは、相手を驚かせることだけから生まれるわけではありません。分からなかったことが、分かるようになる。その瞬間にも、面白さはあります。そして、その面白さが納得へつながるとき、広告はより深く記憶に残ります。

 

文脈が広告を面白くする

広告の中には、背景を知っている人ほど面白く感じられるものがあります。競合関係が分かっていると急に鋭く見えるコピーや、ブランドの記号を知っていると印象が深まる映像表現などがその代表です。
こうした広告は、その場で全部を説明しません。けれど、だからこそ、気づいた人の中で意味が大きくふくらみます。広告の面白さは、言葉や映像そのものだけでなく、その背後にある関係性まで含めて成り立っていることがよく分かります。

競合への一言が効く理由

この種の広告としてよく語られるのが、ライバル企業を意識したコピーです。自動車業界では、トヨタのセリカが1979年のマイナーチェンジ時に「名ばかりのGT達は、道をあける。」というコピーを打ち出した話が知られています。DOHCエンジンを搭載した新型セリカが、シングルカムエンジンしか設定のなかったスカイラインを暗にライバルとして意識したものでした。その後、1980年にターボエンジンを搭載した日産のスカイラインが「今、スカイラインを追うものは誰か」と返します。事情を知らずに見れば、どちらも自信に満ちたコピーです。けれど、競合関係を知っていると、その言葉が急に挑発的に見えてきます。

こうした表現が面白いのは、社名を大きく出して正面からぶつかっているわけではないのに、誰に向けた言葉なのかが伝わるからです。知っている人には、ひと言の奥にライバル意識や市場の空気まで見えてきます。短いコピーでも、背景があることで受け手の中では大きな意味を持つようになります。

トヨタと日産の応酬は、このあともしばらく続きました。その都度、エンジンの方式や出力といった技術の進化が背景にあり、コピーはその節目を印象づける役割を果たしています。ただ単に強い言葉が並んだのではなく、その時々の開発競争や市場の関心と結びついていたからこそ、多くの人の記憶に残ったわけです。当時のクルマ好きにとっては、カタログを読むより前に、コピーを見ただけで両社の立ち位置が伝わってしまうくらいでした。

だからこそ、競合を意識した広告は、ただ強いだけではなく、会話を生みやすくなります。あれは誰に向けた言葉なのか。あの時代にあのコピーが出たのはなぜか。そうした話題が、広告を一度見ただけで終わらせません。

ロゴはさりげなく効く

競合関係だけでなく、ブランドの記号も、広告の印象を深める大きな要素です。ロゴや色、形のようなものは、前面に大きく出さなくても、受け手の記憶のどこかに残っています。だからこそ、ほんの一瞬でもブランドらしさを感じさせることができます。

AmazonのCM「毎日が、まわってく。雨のロマンス篇」では、雨の中での出来事をきっかけに、必要なものがすぐ届くことで一日の流れが変わっていく様子が描かれています。雨に濡れながら感情が動く場面で、女性がそっとスマホを取り出し、必要な商品を注文する。その翌日、商品が届いて表情が変わる、そんな構成です。

印象的なのは、ラストの表情です。女性がふっと見せる口元のカーブが、どこか見覚えのある形に感じられます。Amazonのロゴにあるスマイルを思い出す人もいるかもしれません。公式に「ロゴを意識した演出です」と発表されているわけではありませんが、SNSでもこのラストカットに触れる声は多く、ロゴとのつながりを見出した人は少なくないようです。

こうした見せ方のよさは、押しつけがましくないことです。ブランドを前に出しすぎず、それでも見た人の中でブランドとつながる。受け手が自分で気づいたと感じられるからこそ、記憶に残りやすくなります。

仕掛けが会話を生む

こうした広告は、その場で完結しません。あとから気づいた人が、人に話したくなるからです。競合を意識したひと言も、ブランド記号を忍ばせたひとコマも、理解した瞬間に小さな気持ちよさがあります。その感覚が、会話を生みます。

バーガーキングが2023年に渋谷センター街で出した屋外広告は、その分かりやすい例です。新商品「BigBet」の看板は、通りから見ると文字やバーガーの写真が斜めにゆがんで見えるのですが、向かいのマクドナルド店内から見ると、きれいに整って読めるという仕掛けでした。アナモルフォーシスと呼ばれる遠近法の応用で、見る場所によって意味が変わります。

この広告の面白さは、看板そのものだけでは完結していないところにあります。マクドナルドという競合店の存在があって、はじめて成立しているからです。看板のコピーは「正面から大勝負」というもので、直球の挑戦状にも見えますし、あえてゆがませた見せ方そのものが競合店の店内で初めて意味を結ぶ仕掛けにもなっています。気づいた人は、わざわざマクドナルドの店内から確認したくなりますし、その体験を誰かに話したくなります。

SNSで大きく拡散したのも、そうした参加のしやすさがあったからでしょう。実際に見に行った人が写真を撮り、解説を添えて投稿し、それを見た別の人がまた現地に足を運ぶ。広告が一度出稿されたら終わりではなく、受け手の行動を経由して情報が広がっていく構造になっていました。屋外広告という限られた掲出期間の中で、物理的な掲出場所を超えて話題が伸びていった背景には、この受け手参加型の仕掛けがあります。

ここに共通しているのは、企業が全部を言い切っていないことです。気づく余地があるから面白い。受け手の側でつながるから記憶に残る。広告が話題になるとき、そこには派手さだけではなく、見た人が参加できる小さな発見があることが多いのです。

 

気づかせる広告の作り方

ここまで見てきた広告には、それぞれ違う面白さがありました。消費者の疑問にまっすぐ答えたものもあれば、競合との関係をにおわせたものもあり、ブランドの記号をさりげなく映像に織り込んだものもありました。見せ方が違っていても、根っこにある考え方には共通点があります。
それは、受け手にただ情報を渡すのではなく、受け手の中で意味が立ち上がるように設計していることです。広告が一方通行の説明で終わらず、見た人の頭の中でもう一歩先へ進む。そこで初めて、じわじわ効いてくる広告になります。

余白が記憶を残す

広告では、伝えたいことをはっきり言うことが大切です。ただ、何もかも言い切ってしまうと、受け手の中に残る余地がなくなることもあります。その場では理解できても、それ以上ふくらまないからです。反対に、少しだけ余白がある広告は、見た人の中で意味が続いていきます。

この余白は、分かりにくさとは違います。意味が伝わらないまま終わってしまえば、広告としては弱くなります。そうではなく、入口はきちんと開いていながら、その先にもう一段深い意味があることが大切です。ぱっと見ても受け止められるけれど、背景を知ると印象が深まる。そうした作り方ができると、広告は長く記憶に残ります。

蓄積が短い表現を生かす

気づいた人ほど面白い広告は、その場の思いつきだけでは成り立ちません。競合との関係が知られていること。ブランドの色やロゴが記憶されていること。商品に対して世の中がどんなイメージを持っているかが共有されていること。そうした土台があるからこそ、短い表現でも意味が深くなります。

競合を意識したひと言が効くのは、受け手の側にその関係の記憶があるからです。ブランド記号を前面に出さなくても伝わるのは、その記号がすでにブランドの一部として蓄積されているからです。消費者の疑問に答える広告が強いのも、企業と生活者のあいだに、もともとずれや誤解があるからです。広告だけが単独で面白いのではなく、それまで積み重ねられてきたブランドの見られ方があるから、面白さが立ち上がります。

つまり、こうした広告を考えるときに大事なのは、表現案を先に出すことだけではありません。いま自社はどう見られているのか。どんな誤解を持たれているのか。どんな記号や言葉がすでに共有されているのか。そこを丁寧に整理しておくことが必要です。

目立つより、残る広告へ

広告を考えるとき、どうしても目立つことに意識が向きやすくなります。見てもらえなければ始まりません。ただ、見られることと、記憶に残ることは同じではありません。その場で強く印象づけても、すぐに忘れられてしまう広告もあります。反対に、見た直後は静かでも、あとから意味が効いてくる広告は、長く人の中に残ります。

これからの広告では、何を言うかだけでなく、どう気づかせるかがますます大事になっていきます。強いコピーや派手な映像だけで勝負するのではなく、背景や余韻まで含めて設計することが求められます。受け手が自分で意味を見つけたと感じられる広告は、ただ消費されるのではなく、会話の中で生き続けます。

 

まとめ

見た瞬間に伝わる広告には、分かりやすさという強さがあります。その一方で、背景を知ったときに初めて面白さが立ち上がる広告にも、また別の強さがあります。消費者の疑問に向き合ったポカリスエットのCMのような例もあれば、競合との関係をにおわせることで印象を深めた自動車メーカーの広告合戦や、ブランドの記号をさりげなく織り込んだAmazonのCM、競合店の存在まで取り込んで話題になったバーガーキングの屋外広告もあります。どれにも共通していたのは、ただ目立つことを目指していたのではなく、受け手の中で意味がふくらむように設計されていたことでした。

いまは、情報を届けるだけでは広告が埋もれやすい時代です。だからこそ、見た人が少し立ち止まり、気づき、納得し、誰かに話したくなる余地を持った表現が、これまで以上に大切になっています。商品やサービスの特徴を並べるだけではなく、そのブランドだからこそ成立する文脈をどう活かすか。そこまで考えられた広告は、短い接触でも印象に残りやすくなります。

じわる広告は、特別な遊び心だけでできているわけではありません。自社がどう見られているのかを知り、どんな誤解があるのかを捉え、どんな記号や言葉がすでに共有されているのかを見極めたうえで、はじめて生まれる表現です。派手さだけに頼らず、あとから効いてくる広告を考えたいときには、表現そのものだけでなく、ブランドの文脈まで含めて見直すことが欠かせません。

広告や販促の表現を考えるなかで、ただ伝えるだけで終わらない見せ方を探したい、自社ならではの文脈を活かした企画を形にしたいとお考えでしたら、お問い合わせフォームからぜひご相談ください。

 

 

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