2026年3月19日

マーケティング

フォントで広告の印象は変わる 明朝体とゴシック体の違いと使い分け

 

チラシやホームページ、ランディングページ、営業資料、SNS投稿など、企業の発信は常に文字とともにあります。しかし、その文字をどのフォントで表現するかまで意識している企業は、意外と多くありません。
デザインソフトの初期設定のまま、あるいはなんとなく見慣れた書体を使い続けている。そんな現場は珍しくないのではないでしょうか。

けれども、同じ文章でも、明朝体で書かれているのかゴシック体で書かれているのかによって、受け手が感じる印象は大きく変わることがあります。
落ち着いて見える、やわらかく感じる、信頼できそうに思える、あるいは少しかたいと感じる。こうした違いは単なる好みの問題ではなく、可読性や認知心理学の研究でも検討されてきたテーマです。文字の形は、読みやすさや理解のしやすさに影響し、それが文章全体の評価にも関わると考えられています。

フォントは、企業の印象を決める要素のひとつです。高級感を出したいのか、親しみやすさを重視するのか、誠実さを伝えたいのか。同じメッセージでも、フォントの選び方ひとつで伝わり方は変わります。
しかもフォントの見直しは、大きな予算をかけずに取り組める改善策でもあります。基本的な違いと判断基準を知っていれば、自社のホームページやチラシ、広告バナーの印象を整えることができます。小さな修正が、問い合わせや資料請求の増加につながる可能性もあります。

ここでは、明朝体とゴシック体の違いと、それぞれをどのように使い分ければよいのかについて、実務に役立つ視点でくわしく見ていきます。

 

なぜフォントで印象が変わるのか

フォントの違いは見た目だけの話に思われがちですが、背景には読みやすさや理解のしやすさといった認知の働きがあります。まずは、文字の形がどのように印象に関わるのかを整理します。

読みやすさが判断に影響する

心理学の分野では、情報がどれだけスムーズに処理できるかが、人の判断や評価に影響するという研究が積み重ねられてきました。この「処理のしやすさ」は、処理流暢性(processing fluency)と呼ばれています。

ミシガン大学のHyunjin SongとNorbert Schwarzは、2008年にPsychological Science誌でこの現象を示す実験を発表しています。
ある運動メニューの説明文を、読みやすいフォント(Arial)と読みにくいフォント(Brush)で被験者に提示したところ、読みにくいフォントで読んだグループは、同じ運動にかかる時間をほぼ2倍に見積もりました。さらに、読みにくいフォントで読んだグループのほうが、その運動を日課に取り入れる意欲も低かったと報告されています。

内容はまったく同じなのに、フォントが違うだけで「大変そうだ」「自分にはむずかしい」と感じてしまう。この結果は、フォントが単なる見た目の問題ではなく、情報の伝達効率に直接関わることを示しています。
企業の情報発信に置き換えれば、サービスの説明文や製品紹介を読みにくい書体で掲載していると、内容そのものの評価が下がるおそれがあるということです。

形の違いが生むイメージ

書体は、線の太さやコントラスト、角の処理、装飾の有無など、さまざまな視覚的要素で構成されています。人は日常生活の中でいろいろな書体を目にしており、場面ごとの使われ方を経験として蓄積しています。

たとえば、新聞や書籍、公式文書などで多く使われる書体には、自然と落ち着きや信頼感が結びつきます。ポスターや広告、看板で目にする書体には、力強さや親しみやすさが結びつきやすくなります。このように、フォントの印象は過去の閲覧経験に基づいて形成されます。

企業がどの書体を選ぶかは、自社をどのような文脈に位置づけるかという意思表示でもあります。格式を感じさせたいのか、軽やかさを持ってもらいたいのか。書体の選択は、言葉にしなくても受け手に伝わるメッセージになります。

身近な例で考えると、百貨店の案内表示や高級ブランドの広告には明朝体が使われていることが多く、コンビニのPOPやスマートフォンアプリの画面にはゴシック体が多く使われています。私たちはこうした日常の中で書体と場面の結びつきを無意識のうちに学んでいます。だからこそ、企業が発信する媒体のフォント選びは、受け手の第一印象に影響を与えるのです。

日本語書体の基本構造

日本語の書体は大きく明朝体とゴシック体に分けられます。

明朝体は縦線が太く横線が細いという特徴を持ち、はねやはらいといった装飾があります。横線の右端には小さな三角形の飾り(うろこ)がつくのも特徴です。こうした要素が文字に抑揚を生み、繊細で落ち着いた印象につながります。縦線と横線の太さの差が視線の流れを助けるため、長文の読みやすさにも適しているとされています。

一方のゴシック体は、線の太さがほぼ均一で装飾が少なく、文字の輪郭がはっきりしています。遠くからでも形が認識しやすく、デジタル画面との相性も良いため、見出しや広告、サイネージなどで広く使われています。

この構造の違いが印象の差を生んでいるからこそ、明朝体とゴシック体の選択は、目的に基づいて判断すべき要素になります。

 

明朝体とゴシック体の使い分けと実務上の判断基準

フォントが印象や理解に関わることを踏まえたうえで、ここからは実務で迷わないための使い分けの考え方を確認します。

明朝体が力を発揮する場面

明朝体は、書籍や新聞など長文を読む媒体で長年使われてきた背景があり、落ち着きや知的さ、誠実さといった印象と結びつきやすい書体です。

企業の情報発信では、代表あいさつや企業理念、事業紹介など、ある程度の文章量があり、じっくり読んでもらいたい場面で力を発揮します。BtoB企業や士業、医療、教育といった分野では、信頼感を重視した選択肢として使われることが多くあります。

実務で使われる代表的なフォントとしては、游明朝やヒラギノ明朝があります。
游明朝はWindowsとMacの両方に標準搭載されているため、社内資料でも使いやすい書体です。ヒラギノ明朝はMac環境で広く使われており、やや現代的で洗練された印象を持っています。
Web上で明朝体を使いたい場合は、Google FontsのNoto Serif JPが選択肢に入ります。無料で利用でき、表示の安定性にも優れています。

ただし、細い明朝体を小さなサイズで使用すると、デジタル画面では線がかすれて読みづらくなることがあります。明朝体を選ぶ場合は、フォントサイズや太さ、行間のバランスまで含めて設計することが前提になります。

ゴシック体が力を発揮する場面

ゴシック体は、瞬時に情報を伝える場面に適しています。ポスターや看板、広告バナー、Webサイトの見出しなど、限られた時間で目に入る必要がある媒体で広く使われているのはそのためです。

スマートフォンでの閲覧が多い現在、ゴシック体の強みはさらに増しています。ある程度の太さを持つゴシック体は、小さな画面でも安定して読みやすさを保ちやすいという利点があります。線の均一さは現代的でシンプルな印象にもつながるため、スタートアップや若年層向けサービスではゴシック体を基調としたデザインが多く見られます。

実務でよく使われるフォントとしては、游ゴシックやヒラギノ角ゴシックがあります。
游ゴシックはWindowsとMacの両方に搭載されており、本文にも見出しにも使いやすい書体です。
Web制作では、Google FontsのNoto Sans JPが定番になっています。ウェイト(太さ)のバリエーションが豊富で、見出しから本文まで一つのフォントファミリーで対応できるため、統一感のあるデザインを作りやすいのが特長です。

組み合わせるという発想

明朝体とゴシック体は、どちらか一方に絞る必要はありません。役割ごとに使い分けることで、情報の整理と印象づけを両立できます。

たとえば、見出しには力強いゴシック体を使い、本文には読みやすい明朝体を使う方法があります。逆に、全体をゴシック体で統一しつつ、キャッチコピーや重要なメッセージだけを明朝体にして印象を変えるという設計も考えられます。

大事なのは、意図を持って使い分けることです。なんとなく混在させるのではなく、どの書体がどの役割を担っているのかを整理すれば、情報の階層が明確になり、読み手は自然と重要な部分に目が向くようになります。

 

目的と媒体から考える実践的なフォント設計

書体の特徴を理解したうえで、次に考えるべきは「誰に、どの場面で、どんな行動を促したいのか」という視点です。同じフォントでも、媒体や目的が変われば最適な使い方は変わります。

コーポレートサイトとブランドページの場合

コーポレートサイトは企業の顔です。初めて訪れた人がその企業をどう感じるかに直結するため、安定感や信頼性を損なわない設計が求められます。

代表あいさつや企業理念、沿革といったページは文章量が多くなりがちです。こうしたページでは、明朝体の持つ抑揚が視線の流れを助け、読みやすさを支えてくれます。一方で、トップページのメインビジュアルやキャッチコピーにはゴシック体を使って視認性を高めるなど、ページの役割に応じた組み合わせが有効です。採用ページのように若い世代に語りかける場面では、全体をゴシック体で統一してカジュアルな印象にするという判断もあり得ます。
ブランドの方向性と各ページの目的を軸にして、どこにどの書体を使うかを設計していきます。

注意すべきなのは、Webフォントの読み込み速度です。
明朝体のWebフォントはファイルサイズが大きくなりがちで、ページの表示速度に影響することがあります。Google FontsのNoto Serif JPを使う場合も、必要なウェイトだけを読み込む設定にするなど、表示速度とのバランスを考慮する必要があります。
表示速度はSEOの評価にも関わるため、見た目の美しさだけで判断しないことが大切です。

ランディングページと広告の場合

ランディングページや広告では、訪問者の滞在時間が短く、瞬時の判断が求められます。視認性と理解のしやすさが優先される場面です。

見出しやボタンなど目立たせたい部分にはゴシック体が適しています。とくにスマートフォン経由の流入が多い場合、小さな画面でもはっきり読めるかどうかが離脱率に直結します。
ボタンのテキストや価格表示は、迷いなく一瞬で読めることが前提です。読みづらさは離脱の原因になりますし、先ほど紹介したSongとSchwarzの研究が示すように、読みにくいだけで「面倒そうだ」という印象を持たれるおそれがあります。

フォントの選択は、コンバージョン率にも間接的に影響する要素です。
文言やレイアウトだけでなく、書体やサイズも含めて検証する価値があります。実際に、ボタンのフォントサイズを1段階上げただけでクリック率が変わったという事例は、Web制作の現場ではめずらしくありません。

紙媒体とデジタル媒体での考え方の違い

紙のパンフレットやチラシと、Webサイトやサイネージでは、フォント選びの前提条件が異なります。

紙は解像度が高く、細い線もきれいに再現できます。明朝体のうろこやはらいといった繊細な表情を活かしやすい媒体です。高級感を出したいパンフレットや、じっくり読ませたい会社案内では、明朝体の良さが存分に発揮されます。企業の周年記念誌や、格式を求められる挨拶状などでも、明朝体は安心感のある選択肢です。

一方、デジタル媒体では閲覧環境がさまざまです。パソコン、タブレット、スマートフォンと画面サイズや解像度が異なり、とくにスマートフォンでは細い線が視認しにくくなります。Web制作でゴシック体が多く採用されているのは、こうした表示環境との相性が理由のひとつです。

また、店頭サイネージのように離れた場所から視認する媒体では、文字の太さとコントラストの強さが重要になります。遠目でも判読できる書体を選ぶことが前提です。媒体ごとの表示条件を把握し、それに応じた設計を行うことが実務の基本になります。

 

よくある失敗と改善の進め方

フォントの重要性を理解していても、実際の制作現場では見落としが起こりがちです。ここでは、中小企業や個人事業主の現場でよく見られるケースと、無理なく改善するための進め方を整理します。

フォントを深く考えずに選んでしまう

もっとも多いのは、書体の選定に十分な検討をしないまま制作が進むケースです。
パソコンの初期設定のまま使い続けている、過去の資料をそのまま流用している、といった状況は珍しくありません。その結果、企業が目指している方向性と、実際に使っている書体の印象がずれていることがあります。

まず取り組みたいのは、自社がどのような印象を持たれたいのかを言語化することです。
信頼感を最優先するのか、親しみやすさを打ち出したいのか、革新性を強調したいのか。その方針が定まれば、明朝体とゴシック体のどちらを軸にするかの判断がしやすくなります。
フォント選びは感覚ではなく、目的から逆算して決めるものです。とくに、ホームページのリニューアルや新しいチラシの制作を予定している場合は、デザインの方向性を決める前にフォントの方針を確認しておくと、制作会社への依頼もスムーズに進みます。

書体の統一感がない

部署ごと、担当者ごとに資料を作っていると、使うフォントがばらばらになることがあります。見出しはあるゴシック体、本文は別のゴシック体、強調部分には装飾的なフォント。こうした不統一は、ひとつひとつは小さなことでも、全体として見ると企業イメージの安定感を損ないます。

改善策はそれほどむずかしくありません。見出し用、本文用、強調用の基本ルールを決め、使用するフォントを2つか3つに絞るだけでも、印象は大きく変わります。本格的なブランドガイドラインを作る余裕がなくても、「見出しは游ゴシックのBold、本文は游ゴシックのRegular」のように決めておくだけで十分です。

さらに一歩進めるなら、社内用のテンプレートを用意しておくことをおすすめします。
PowerPointや提案資料のテンプレートに使用フォントを組み込んでおけば、誰が作成しても統一感のある資料ができあがります。外部への発信物だけでなく、社内資料の書体がそろっていると、取引先との打ち合わせでもブランドの一貫性が伝わります。

一度決めたら検証しない

フォントを決めると、そのまま何年も変更しないケースもよくあります。しかし、事業内容やターゲット層が変われば、最適な書体も変わる可能性があります。

Webサイトや広告であれば、書体を変えたパターンを用意して反応を比較するA/Bテストが実施できます。
Googleオプティマイズは2023年にサービスを終了しましたが、現在はVWO、AB Tasty、Optimizelyなどのツールが利用可能です。大がかりなテストを実施しなくても、見出しの書体だけを変更する、ボタンの文字サイズを一段階上げるといった小さな調整から始めることができます。

また、ヒートマップツールを使えば、ユーザーがページのどこに注目しているかを可視化できます。
フォントを変更する前後でヒートマップを比較すれば、変更が読者の行動に影響しているかどうかをある程度確認できます。数値やデータに基づいて判断することで、感覚に頼らない改善が可能になります。フォントも文章や画像と同じように、検証しながら最適化していく対象です。

 

Webフォントを導入する際の実務的な注意点

フォントの選び方が定まったら、とくにWeb制作の現場ではWebフォントをどう扱うかという問題に向き合うことになります。ここでは、導入時に知っておきたい実務上のポイントを整理します。

Webフォントの基本的な仕組み

通常、Webサイトの文字は閲覧者のパソコンやスマートフォンにインストールされているフォント(デバイスフォント)で表示されます。そのため、制作側が意図した書体が閲覧者の端末にない場合、別のフォントで表示されてしまうことがあります。

Webフォントは、サーバー上に置かれたフォントデータを読み込んで表示する仕組みです。これにより、閲覧環境に関係なく、制作側が指定した書体で文字を表示できます。
Google Fontsのように無料で利用できるサービスもあり、日本語フォントのラインナップも充実してきています。Noto Sans JPやNoto Serif JPのほか、M PLUS 1pやZen角ゴシックなど、商用利用可能な日本語Webフォントの選択肢は年々増えています。

表示速度とのバランス

Webフォントの導入で注意が必要なのは、ページの表示速度への影響です。日本語フォントはひらがな、カタカナ、漢字を含むためファイルサイズが大きく、英語フォントに比べて読み込みに時間がかかります。

対策としては、必要なウェイトだけを読み込む、サブセット化(使用する文字だけを抽出して軽量化する)を行う、といった方法があります。Google Fontsでは、日本語フォントが自動的にサブセット配信される仕組みになっているため、比較的手軽に導入できます。

表示速度はユーザー体験だけでなく、検索エンジンの評価にも関わります。
Googleが提唱するCore Web Vitalsの指標にも、ページの読み込み速度は含まれています。フォントの美しさを追求するあまり表示速度が犠牲になると、SEOにも悪影響が出る可能性があるため、両方のバランスを見ながら設計することが求められます。

フォールバックの設定

Webフォントの読み込みに時間がかかる場合や、読み込みが失敗した場合に備えて、代替フォント(フォールバック)を指定しておくことも実務上の基本です。
たとえば、Noto Sans JPを指定したうえで、フォールバックとして游ゴシックやヒラギノ角ゴシックを指定しておけば、Webフォントが読み込まれない環境でも、近い印象の書体で表示されます。

こうした設定はCSS上で行うもので、制作会社やエンジニアに依頼する領域になりますが、発注する側もこの仕組みを知っておくと、打ち合わせがスムーズに進みます。「Webフォントを使いたいが、表示速度も気になる」という相談ができるだけで、制作側との認識のずれを防ぐことができます。

 

まとめ

明朝体とゴシック体には、それぞれ異なる構造があり、読み手に与える印象も異なります。読みやすさや視認性は、内容の理解だけでなく、情報の評価そのものにまで影響します。フォントは単なる装飾ではなく、企業の声色を形づくる要素です。

信頼性を重視するのか、親しみやすさを優先するのか、あるいは行動を促すことを目的とするのか。目的と媒体、ターゲットを整理し、意図を持って書体を選ぶことが出発点になります。そのうえで、使用するフォントを絞り込み、社内でルールを共有し、媒体ごとの表示条件に合わせて設計していく。
この一連の流れを整えるだけで、企業の発信物全体に一貫した印象が生まれます。

基本ルールを定め、小さく検証を重ねることで、クリエイティブ全体の質は着実に向上していきます。フォントの見直しは、大規模なリニューアルを行わなくても、今あるホームページやチラシ、広告の印象を変えられる手軽な改善策です。

自社のホームページや広告、販促物の印象を見直したいとお考えでしたら、フォント設計を含めたクリエイティブ全体のご相談を承ります。目的やターゲットに合わせた最適な設計をご提案いたしますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

 

 

 

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