2026年4月13日

マーケティング

広告の見えない半分 広告効果の測り方と見えない効果の捉え方

 

複素数という概念があります。
実数は数直線の上に並んでいます。正の数も負の数も、ゼロも、直線の上のどこかに必ず位置が決まります。この一本の線の上では、見えているものはすべて表せます。
ただ、直線には表れないものがあります。数直線と直角に交わる別の軸、虚軸を加えることで、一本の線では捉えられなかったものが平面の上に表れてきます。これが複素数平面です。
実部と虚部という二つの軸を持つことで、直線だけでは見えなかったものが、初めて位置を持ちます。

この考え方は、広告の効果を捉えるうえでも使えます。
広告を評価するとき、多くの場合、クリック数や問い合わせ件数、売上のような見えやすい数字が判断の軸になります。数字として確認しやすいからこそ、それだけを見てしまいやすいのですが、広告の効果には数字にならない部分も確かに存在します。認知の広がり、企業や商品への信頼感、比較のときに思い出してもらいやすくなること。こうした効果は、見える数字の軸には表れません。

さらに、短期的にはゼロや負に見える施策でも、見えない軸での働きを加えると全体としてプラスに転じることがあります。反対に、向きがそろっていない施策が複数重なると、それぞれは動いていても打ち消し合ってしまうことがある。複素数の性質は、こうした広告の動きを整理するのに都合のよい枠組みを提供してくれます。

もちろん、複素数そのものを広告の分析ツールとして使うわけではありません。ただ、複素数が持つ「実軸に表れないものが確かに存在する」「組み合わせによって符号が変わる」「方向がそろってはじめて力が加わる」という性質は、広告の動きを整理するうえで、なかなか役に立つ見方を提供してくれます。

ここでは、複素数の実部・虚部・絶対値・合成という概念を手がかりに、広告の見えない効果と負の判断が広告全体をどのように動かすのかについて説明します。

 

広告には実部と虚部がある

複素数は、実部と虚部という二つの成分で構成されています。広告の効果も、これと似た構造を持っています。
数字として見えやすい成果が実部であり、数字にはなりにくいが確かに存在する効果が虚部です。この二軸の構造を意識することが、広告を正しく捉えるための出発点になります。

実部として見えやすい成果

広告の実部として捉えやすいのは、クリック数や表示回数、問い合わせ件数、購入数、来店数、売上といった数字です。これらは変化を追いやすく、施策ごとの差も比べやすいため、判断の基準になりやすい指標です。どの施策がどれだけ反応につながったのかを把握するうえで、こうした数字を確認することは欠かせません。

交通広告や屋外広告では、掲出期間中の来店数や問い合わせ件数、売場での購買数といった数字が実部として確認しやすい成果になります。リテールメディアであれば、売場周辺での購買率や商品の手に取られた回数なども、実部として追える指標です。
デジタル広告ではクリック数や表示回数がリアルタイムで確認できますが、交通広告や店頭広告でも、QRコードや専用URLを組み合わせることで一部の動きを数字で捉えることができるようになっています。

ただし、こうした数字は広告が生み出した結果の一部にすぎません。把握しやすいからこそ重視されやすいのですが、見える数字だけで広告の価値を語ろうとすると、必ず見えない部分が取り残されます。実部は大切ですが、それだけでは全体は見えません。

虚部として見えにくい効果

広告の虚部として捉えられるのは、認知の広がり、企業や商品への信頼感、比較の場面で候補として思い出してもらいやすくなること、安心感の積み重ねなどです。こうした効果は、その場で問い合わせや購入として数字に表れにくいものです。しかし、広告が積み重なることで少しずつ効いてきます。

たとえば、今すぐ必要ではない商品やサービスでも、広告に何度か触れることで名前を覚えてもらえることがあります。そして必要な場面が来たときに、はじめて検索されたり、比較対象に入ったりします。
このような動きは広告の直後には数字として表れにくいものですが、その広告がなければ起きなかったことかもしれません。電車内や駅構内で繰り返し目にする広告が、あとから効いてくることはよく知られています。

虚数は「存在しない数」として誤解されることがありますが、実際には実軸に表れないだけであって、確かに存在しています。広告の見えない効果も同じです。数字になっていないからといって、存在していないわけではありません。測りにくいだけで、広告の働きの中に確かにあります。

実部と虚部は別の軸にある

複素数の重要な性質のひとつは、実部と虚部が直角の関係にあることです。
実軸と虚軸は交わりますが、どちらかがもう一方に含まれるわけではなく、それぞれが独立した軸の上にあります。一方の軸の値が変化しても、もう一方の軸の値が連動して変わるわけではありません。

広告の実部と虚部も、同じように別の軸にあります。駅貼りポスターや車内広告の掲出枚数を増やしても、それだけで認知が深まるとは限りません。反対に、乗降客に毎日見てもらえる環境が整っていても、すぐに問い合わせ件数として表れるわけではありません。それぞれの軸は独立して動いています。

このことは、広告を評価するときにとても重要な意味を持ちます。
実軸の数字だけを追っていると、虚軸の変化はそもそも見えません。両方に目を向けなければ、広告の本来の働きは捉えられないのです。一方の軸だけで全体を語ろうとすれば、必ず見落としが生まれます。

また、二つの軸が直角に交わっているということは、一方を伸ばしても自動的にもう一方が伸びるわけではないことを意味します。実部の成果を上げるための施策と、虚部を育てるための施策は、別々に意識して設計する必要があります。
どちらか一方に集中すれば足りるというわけではなく、それぞれの軸に対して何をするのかを考えることが、広告全体の設計には欠かせません。

 

負に見えるものが負とは限らない

複素数では、実部が負の値を持つことがあります。数直線だけで見れば負ですが、虚部も合わせた全体としては、必ずしも負の方向に働いているとは限りません。
広告でも同じことが起きます。短期の数字だけを見ると損に見える施策が、虚部を加えて考えると全体にプラスの働きをしていることがあります。

短期ゼロが負を意味しない理由

広告の効果として短期にゼロが出た場合、その施策は無駄だったと判断されやすくなります。問い合わせが来なかった、クリックされなかった、売上が動かなかった。こうした結果は、実軸の数字だけで見れば確かにゼロです。
しかし、ゼロは負ではありません。そして虚軸では、静かに動いている可能性があります。

たとえば、ある企業が交通広告に出稿したとします。掲出期間中に問い合わせが増えなかったとしても、その広告を見た人が企業名を覚えていることはあります。しばらくして必要な場面が来たときに検索する、営業担当者の説明を聞いたときに「知っている」と感じる、比較の場面で候補に入る。
こうした動きは、広告の掲出中には実軸に表れません。しかし、広告がなければその動きも生まれなかったとも言えます。

短期ゼロは、虚軸での蓄積が始まっていないことを意味するのではなく、単に実軸にまだ表れていないことを意味している場合があります。短期の数字だけで施策の良し悪しを決めてしまうと、虚軸で積み上がっているものを見落とすことになりかねません。

コストだけに見える施策が虚部で動いている

実軸の数字だけを見ていると、コストが出て成果が見えない施策はマイナスとして評価されやすくなります。予算を使っているのに、問い合わせも売上も動いていない。確かに実軸での収支はマイナスです。しかし虚軸では、その施策が認知や信頼を少しずつ積み上げていることがあります。

企業や商品のブランドを育てるための広告は、その典型です。
すぐに売上につながるわけではありませんが、企業名を覚えてもらう、信頼感を持ってもらう、比較の場面で選択肢に入ってもらうという効果が、虚軸の上で積み重なっています。こうした蓄積がなければ、短期の獲得施策を打っても反応が変わってくることがあります。
認知のない状態での獲得施策と、ある程度認知が育った状態での獲得施策では、同じ予算でも結果が違ってくることがあるのはそのためです。

実軸だけで見るとコストに見える施策が、虚軸での動きを加えて考えると全体のプラスに貢献していることがある。複素数的に言えば、実部が負であっても、虚部がそれを補う形で絶対値を大きく保っている状態です。

虚部との組み合わせで符号は変わる

複素数の計算では、虚数単位iを掛けると数は90度回転します。正の実軸にあったものが虚軸に移り、さらにiを掛けると負の実軸に移ります。符号は、どの軸にいるかと何を組み合わせるかで変わります。
広告でも、見えない要素との組み合わせによって、当初の判断が変わることがあります。

短期の成果が出なかった広告でも、それが虚軸での認知を積み上げていれば、後から別の施策の反応率を押し上げることがあります。この場合、最初の広告は単独では負に見えても、全体の文脈では正の方向に働いています。逆に、短期では数字が出ていても、長い目で見ると価格訴求に偏りすぎて信頼を損なっている場合は、見えている成果がいずれ負の方向に転じるかもしれません。

符号は固定されているわけではありません。実部と虚部の組み合わせ、そして時間の経過によって、広告の持つ価値や方向性は変化します。見えている数字だけで効いた・無駄だったと断定する前に、虚部との組み合わせを考えることが必要です。

広告の判断を短期の数字だけに委ねることの危うさは、ここにあります。
ある時点での実部の数字が正であっても、虚部で何が起きているかによって、その判断は後から変わることがあります。複素数の符号と同じように、広告の評価も、見えている軸と見えていない軸の両方を合わせて考えることで、初めて正確に近づきます。

 

絶対値でしか広告の大きさはわからない

複素数の大きさは絶対値で表されます。複素数 a+bi の絶対値は √(a²+b²) です。実部だけを見ても、虚部だけを見ても、この大きさは正確にはわかりません。どちらか一方だけでは、全体の大きさを過小評価することになります。
広告の効果も同じで、実部と虚部の両方を合わせて初めて、本当の大きさが見えてきます。

実部だけで測ると過小評価になる

広告の効果を実部、つまり見える数字だけで測ると、広告が持っている価値を過小評価しやすくなります。問い合わせ件数が少ない、売上が動いていない、クリック率が低い。こうした数字は確かに重要な情報ですが、それだけで広告の価値を判断してしまうと、虚部に蓄積されているものが評価の外に置かれます。

たとえば、認知が広がっていれば、同じ内容の営業提案でも受け取られ方が変わることがあります。企業名を知っている相手には、初対面でも最初から少し距離が縮まっていることがあります。こうした変化は問い合わせ件数には表れませんが、営業の現場では実感される効果です。
実部の数字には出ていなくても、虚部で積み上がっているものが実際の商談に影響しています。

実部だけで絶対値を計算しようとすると、虚部がゼロとして扱われます。しかし虚部がゼロでないなら、絶対値は実部の値より必ず大きくなります。実部だけを見ることは、広告の大きさを実際より小さく見積もることと同じです。

虚部だけを見ても判断できない

一方で、虚部だけを重視してもやはり判断は難しくなります。
認知や信頼が積み重なっていることは大切ですが、それが最終的に問い合わせや売上という行動につながっているかどうかは別の話です。虚部だけを見ていると、実際の事業への貢献が見えにくくなります。

広告の目的は、最終的には事業の成果に貢献することです。認知が広がるだけで終わっていては、事業として意味のある効果とは言えません。
虚部での蓄積が、いずれ実部の動きにつながっていくかどうかを確認することも必要です。指名検索の増加や再訪の変化、営業現場での反応の変化などは認知が検索へ、虚部が実部への橋渡しになっているかどうかを確かめるための手がかりになります。実部も虚部も、どちらか一方だけでは絶対値は測れません。

虚部は実部へ変換されることで、はじめて事業への貢献として見えやすくなります。
交通広告やリテールメディアでは、目に触れることで名前を覚えてもらい、売場や店頭での行動変化として表れ、やがて購買や問い合わせという実部の動きにつながります。この流れのどこかが途切れていれば、虚部がいくら大きくても実部には表れてきません。虚部を育てながら、実部への変換の流れも意識することが大切です。

二つの軸を合わせて初めて見えてくるもの

実部と虚部を合わせて絶対値を考えることは、広告の評価を立体的にすることでもあります。
問い合わせ件数や売上という実部の数字を確認しながら、認知や信頼、想起のしやすさという虚部の変化にも目を向ける。その両方を並べることで、施策の本当の大きさが見えてきます。

実務では、特定エリアでの指名検索の増加、営業担当者が感じる商談の入りやすさの変化、売場での立ち止まり方や手に取られ方の変化などが、虚部の動きを読む手がかりになります。交通広告であれば掲出エリアと来店データの重なり、リテールメディアであれば売場前の滞留時間や視線の変化も参考になります。
数字として見えにくいからこそ、意識的に集めようとしなければ見落としやすい情報でもあります。

絶対値の計算式が示すように、実部と虚部はどちらも合わさって全体の大きさを決めます。
広告でも、実部と虚部のどちらも充実していることが、全体としての効果の大きさにつながります。一方を軽視するのではなく、両方を丁寧に育てていくことが大切です。

もう一つ言えば、絶対値の計算では実部も虚部も二乗して足し合わせます。どちらか一方がゼロに近ければ、もう一方がどれだけ大きくても、絶対値はその一方の大きさにとどまります。実部で十分な成果が出ていても、虚部がほとんど育っていなければ、広告全体の絶対値は大きくなりません。
両軸を同時に意識することが、広告の絶対値を高めることにつながります。

 

向きがそろわないと打ち消し合う

複素数を合成するとき、向きが異なるベクトルは単純に足し算されません。逆方向のベクトルは互いに打ち消し合い、全体の大きさは小さくなります。広告施策でも同じことが起きます。
それぞれの施策が別々の方向を向いていると、個別には動いていても、合成したときに力が打ち消し合って全体としての効果が弱くなることがあります。

施策の方向がバラバラになるとき

広告を複数の媒体や形式で展開するとき、それぞれが別々のメッセージや印象を与えていることがあります。
獲得系の広告では価格や条件を前面に出し、別の場面では企業のブランドや価値を訴えているとします。受け手から見ると、同じ企業がバラバラなことを言っているように映ることがあります。

このとき、それぞれの施策は実軸でも虚軸でも動いているかもしれません。しかし向きがそろっていないと、受け手の中で積み上がるはずの印象が定まらず、認知は広がっても選ぶ理由が育ちにくくなります。
虚軸でのベクトルが逆方向を向いていれば、積み上がるはずの信頼が打ち消し合います。

施策の数が増えるほど、向きをそろえることの重要性は高くなります。それぞれが独立して動いているだけでは、合成したときに期待した効果が出ないことがあります。
広告のメッセージが一貫していないことは、受け手の判断を曇らせます。どの接点でも同じ印象を積み重ねていけるかどうかが、広告全体の力を左右します。

複素数の平面上で逆方向のベクトルが打ち消し合うように、向きのちがう広告施策は互いの効果を削り合います。予算をかけて施策の数を増やしても、向きがそろっていなければ全体の力は大きくなりません。
むしろ施策を整理して向きをそろえることのほうが、予算の使い方として合理的なことがあります。

接点全体で向きをそろえる考え方

向きをそろえるためには、まず何を伝えたいのかを明確にする必要があります。
企業として、あるいはサービスとして、受け手にどのような印象を持ってもらいたいのかが決まっていれば、各施策のメッセージを同じ方向に向けることができます。

接点ごとに役割の違いはあってもいいのですが、向かっている方向は共通している必要があります。
認知を広げる施策、比較検討を後押しする施策、最後の行動を促す施策は、それぞれ別の働きをしていますが、受け手の中に積み上げたい印象という軸は一致しているべきです。電車内の広告も、デジタルの広告も、営業資料も、受け手が受け取る企業の印象は一貫していることが理想です。

実部と虚部のどちらの軸でも、向きがそろっていれば合成したときに力が加わります。逆に向きがバラバラだと、それぞれの動きが相殺されてしまいます。複数の施策を展開するほど、全体の方向性を意識することが重要になります。

複素数の合成が教えてくれること

複素数の合成では、絶対値の大きさだけでなく向きも重要です。
同じ方向のベクトルは足し合わさって大きくなりますが、逆方向のベクトルは引き算になります。直角方向のベクトルはピタゴラスの定理に従って合成されます。広告施策でも、向きが同じなら力は加わり、向きが逆なら打ち消し合います。

大切なのは、施策ごとの数字だけを個別に見ていても、合成した結果はわからないことです。
それぞれが単独で数字を出していても、全体として向きがそろっていなければ、最終的に受け手に届く力は弱くなります。問い合わせが来ているのに選ばれない、認知はあるのに信頼が育たない、といった状況は、施策の向きがそろっていないことのサインかもしれません。

複素数の合成が教えてくれることは、個別の大きさではなく全体の方向性こそが重要だということです。広告の施策を増やすことより、向きをそろえることのほうが、全体としての力を大きくすることにつながります。

 

まとめ

広告の効果は、数字として見えやすい実部と、数字にはなりにくい虚部の両方で成り立っています。
クリック数や問い合わせ件数、売上のような実部の成果は大切ですが、それだけで広告の絶対値、つまり本当の大きさは測れません。認知、信頼、想起のしやすさといった虚部の働きを合わせて初めて、広告が持っている効果の全体が見えてきます。

短期にゼロや負に見える施策でも、虚部で積み上がっているものがあれば、それは全体として正の方向に働いていることがあります。
実部の数字だけで施策を切り捨てる前に、虚軸での変化を確かめる必要があります。そして、複数の施策を展開するときは、向きをそろえることが重要です。向きがバラバラな施策が重なると、それぞれの力は打ち消し合い、全体としての効果は弱くなります。

複素数という枠組みは、広告をひとつの軸だけで見ることの限界を示しています。実部と虚部、短期と中長期、見える成果と見えない効果。どちらかだけを見るのではなく、両方の軸で考えることが、広告の価値を正しく捉えることにつながります。

実部の数字は見えやすいからこそ頼りにしやすく、虚部の効果は見えにくいからこそ後回しになりやすい。この非対称さが、広告の評価を偏らせる原因になります。
両方の軸を意識して設計し、両方の変化を丁寧に見ていくことが、広告の絶対値を高めることにつながります。

自社の広告施策を整理したい、見えている成果と見えていない効果をあわせて考えたいとお感じでしたら、ぜひお問い合わせフォームからご相談ください。交通広告・Web広告を軸に、広告全体の設計をお手伝いします。

 

 

 

運営者情報

運営者
株式会社キョウエイアドインターナショナル
住所
東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル17階
お問い合わせ
https://kyoeiad.co.jp/contact/
電話番号
0120-609-450

関連記事