2025年11月12日
WEBCookieがなくなる時代、スマホ広告はどう変わる? ――“追いかける広告”から“お客さまに寄り添う広告”へ 予算が限られる中小企業こそチャンスです――
「なぜ私の行動がわかるの?」スマホ広告の仕組みが変わる背景
「あれ、昨日ちょっと見てみた商品が、今度は別のアプリやSNSの広告として出てきた…」
インターネットを使っていて、こんな“追いかけられているような体験”をしたことはありませんか? 多くの人が「便利だけど、ちょっと怖い」「どうして私の行動がわかるんだろう?」と感じたことがあるでしょう。
この不思議な現象を支えていたのが、「Cookie(クッキー)」という仕組みです。ウェブサイトやアプリが一時的に情報を保存し、それをもとにユーザーの行動履歴をたどることで、広告を出す側が「この人はこの商品に興味がある」と把握できるようにしていたのです。
特に、自分のサイト以外(他社のサイト)での行動まで追いかける「サードパーティCookie」は、広告の精密なターゲット設定には欠かせないものでした。
目次
広告の「便利さ」と「不安」のバランスが崩れた
しかし今、このCookieに頼った広告のあり方が世界的に大きな転換点を迎えています。理由はとてもシンプルで、「個人のプライバシーを守るため」です。
これまで広告業界では、Cookieを使ってユーザーの行動を追跡し、できるだけ精密にターゲットを絞り込むことが主流でした。しかし、多くの人が「自分の行動が知らないうちに勝手に追われている」という感覚に不安を覚えるようになりました。
世界中で個人情報保護の法律や規制が次々に強化されています。特に大きな影響力を持つAppleやGoogleも、この流れに追従しています。
- Apple(Safari)
- iPhoneの標準ブラウザであるSafariでは、すでに「ITP(トラッキング防止機能)」が導入され、サードパーティCookieは数日で使えなくなっています。
- Google(Chrome)
- 段階的にサードパーティCookieの利用を廃止することを進めています。
つまり、私たちのスマホ広告は、今後「追いかけ広告」がほとんど機能しない「Cookieレス(Cookieを使わない)」の時代を迎えようとしているのです。
Cookieレス時代の広告主の課題:「誰に届けるか」が見えなくなる?
Cookieがなくなると、「昨日見ていた靴が今日も明日も出てくる」といった、しつこい広告は確実に減ります。ユーザーにとっては快適な環境になるでしょう。
一方で、私たち広告主にとっては大きな課題が生まれます。「では、どうやって必要な人に、必要な情報を届けたらいいのか?」という問いに、正面から向き合わなければなりません。
これまでの手法は、予算さえあれば「とりあえずCookieでターゲットを追いかければ、どこかで見てくれるだろう」という考え方が通用しました。しかし、今後はこの手法が通用しません。
例えるなら、これまでの広告は「街ゆく人に手当たり次第チラシを配る」ようなもの。Cookieレス時代の広告は、「興味を持って立ち止まってくれた人に、顔を見て話しかける」ような、より丁寧で誠実なコミュニケーションが求められるのです。
中小企業・個人事業主こそチャンス! Cookieレス時代の3つの成功戦略
予算や人員が限られる中小企業や個人事業主にとって、「大手と同じ土俵で追いかけっこをする」のはもともと不利でした。しかし、Cookieレス時代は、広告の「質」と「信頼」が勝負になります。これは、小回りが利き、お客さまとの距離が近い皆さまにとって、まさに大きなチャンスになり得ます。
ここからは、皆さまがすぐに取り組めるCookieレス時代の3つのスマホ広告戦略を具体的に解説します。
戦略1:自分の「お客さまデータ」を徹底的に大事にする(ファーストパーティデータ戦略)
まず一番に取り組むべきは、自社で直接得られるデータを最大限に活用することです。これは「ファーストパーティデータ」と呼ばれ、最も信頼できる、資産となる情報です。
アプリをダウンロードしてくれた人
会員登録(無料・有料問わず)してくれた人
メルマガやLINEに登録してくれた人
過去に商品を購入してくれた人
自社サイトの閲覧履歴
これらの情報は、Cookieが廃止されても、皆さま自身の資産として活用できます。
【具体的なアクション例】
メールアドレスの再評価: 顧客のメールアドレスを単なる連絡先で終わらせず、登録してくれた人限定の特別な情報や特典を提供する「ファンクラブ」のような仕組みを作ります。
- LINE公式アカウントの徹底活用
- LINEはユーザーと企業が一対一でつながる最も強力なファーストパーティデータの一つです。商品やサービスに関連する診断コンテンツ、限定クーポンなどを配信し、飽きさせない工夫が必要です。
- 既存顧客への「感謝」
- 一度でも購入してくれたお客さまに対し、関連商品の情報ではなく、「商品の使い方を深掘りする情報」や「開発秘話」など、ファンを育てるためのコンテンツを配信します。
- 会員登録のハードルを下げる
- 「購入時でなくても、情報を受け取るだけでもOK」といった形で、気軽にメールアドレスなどを登録してもらえるよう、ウェブサイトの入り口を見直しましょう。
これは、昔ながらの商店街で「いつも来てくれるお客さんの好みを覚えていて、ちょうどいい商品が入ったら声をかける」イメージに近いでしょう。派手さはなくても、信頼関係があるからこそ「また来よう」と思ってもらえる、最も強固な戦略です。

戦略2:見ている「コンテンツ」に合わせた広告を出す(文脈ターゲティング)
Cookieがなくても、「その人が今見ているコンテンツ」に合わせた広告を出すことは可能です。これは「コンテクスチュアル・ターゲティング(文脈ターゲティング)」とも呼ばれます。
ユーザーは、そのコンテンツを見ている時点で、そのテーマに関心があることが証明されています。そこに合わせた広告は、押しつけがましさがなく、自然に受け入れられやすいのです。
例えば、皆さまが「オーガニック食品」を扱っているとしましょう。
- 誤った(従来の)ターゲティング
- 過去に高級バッグのサイトを見ていた履歴がある人(→Cookieベース)
- 正しい(文脈)ターゲティング
- 「無添加レシピ」や「子どものアレルギー対策」といった記事を今まさに読んでいる人
「今、まさに興味があること」に関する広告は、むしろ「今欲しい情報がちょうど来た」と感じてもらえる可能性が高いのです。広告を出すプラットフォーム(Googleや各種SNS)の設定で、「〇〇というキーワードを含むサイト」や「〇〇のカテゴリの記事」といった形で指定できることが多いので、ぜひ確認してみましょう。
【具体的なアクション例】
- 広告配信先の「場所」を厳選する
- 広告を出すプラットフォームで、自社の商品と関連性の高いニュースカテゴリやブログジャンルを細かく指定します。
- 広告文を記事のトーンに合わせる
- 記事のトーン(例:真面目な解説記事、カジュアルな体験談)に合わせて広告のコピーも調整すると、読者に違和感なく受け入れてもらえます。
戦略3:広告そのものを「体験」に変えて楽しんでもらう(クリエイティブの勝負)
そして最も大切なのが、広告を「単なる邪魔な情報」ではなく、「見てよかった」「ちょっと楽しかった」と思ってもらえる体験にすることです。
Cookieでターゲットを絞り込めない分、「広告自体の魅力」で立ち止まってもらうしかありません。
最近のスマホ広告で人気なのは、以下のような「参加型」「体験型」のクリエイティブです。
- 短い動画で笑える、共感できる広告
- ストーリー性があり、続きが気になってしまうような短い動画。
- タップして遊べるゲーム型広告
- 5秒で遊べるミニゲームをクリアしたらクーポンがもらえるなど。
- 診断コンテンツを兼ねた広告
- 「あなたの性格に合うコーヒーは?」「あなたの肌質に合う化粧品は?」といった診断結果を、SNSでシェアしたくなる仕組みにする。
たとえば、ある飲料メーカーの広告が「好きなフレーバー診断」と題したコンテンツで、結果がSNSでシェアされると、自然に拡散が広がります。これは「押しつけ」ではなく「楽しさ」として受け止められるため、ブランドへの好感度が格段に上がるのです。
【具体的なアクション例】
共感と悩みの提示から始める: 広告の動画や静止画の冒頭で、「〇〇がなかなかうまくいかない…」といったターゲットの悩みを提示し、「これ、私のことだ!」と思ってもらう工夫をします。
「クリック」の次のステップを明確にする: 広告をクリックした先のページ(ランディングページ)で、「診断する」「クーポンをもらう」「限定動画を見る」など、次の行動をすぐにとれる導線を設計します。
まとめ:追いかける広告から、信頼をベースにした「寄り添う広告」へ
Cookieがなくなることで、スマホ広告はこれから確実に姿を変えていきます。予算や規模で勝負する時代は終わり、「お客さまへの誠実さ」と「創意工夫」が最も求められる時代が到来しました。
- データよりも信頼を大事にする
- 自社で集めた「ファン」のデータを大切に育てる。
- 追いかけるよりも文脈に合わせる
- ユーザーが今興味を持っている話題にそっと寄り添う広告を出す。
- 広告自体を楽しめる体験にする
- 思わずタップしたくなる、シェアしたくなる、体験型のクリエイティブを追求する。
広告はこれから、“生活者を追跡する存在”から、“生活にそっと寄り添い、価値を提供する存在”へと進化していきます。
皆さまのビジネスが、新しい時代で多くのお客さまと信頼関係を築くための第一歩として、まずは「ファーストパーティデータ」の集め方と「コンテンツに合った広告作り」から見直してみることをおすすめします。
自社の現状に合わせたCookieレス時代の具体的な広告戦略や、ファーストパーティデータを活用した顧客育成の設計について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのフォームよりお気軽にご相談ください。専門の担当者が、御社のビジネスに合った最適な方法をご提案いたします。





