渡 健志

福岡支社
営業部

取材日:2024年8月28日

公開日:2024年10月15日

環境の変化を冒険できる人

逆境に可能性を見出し、オフィス新設に動いた背景

外出の自粛や規制が広がった2020年当時、沖縄唯一の軌道系公共交通機関である沖縄都市モノレール(通称:ゆいレール)も乗降客が減少、車内広告に空き枠が目立った。

「いつか状況は元に戻る。その時に全国で蓄えたエリアマーケティングの知見で沖縄の経済を支えたい」
そうした信念のもと、キョウエイアドは沖縄都市モノレールと交渉を開始。2022年に指定代理店として認定され、翌年5月には広告枠を販売。完売したゆいレールの車内は一転して賑やかになった。

得た手応えをもとに、2023年5月にゆいレールの県庁前駅近くにまず事務所を開設。沖縄のクライアントと関係が深まるにつれ、常駐の人員を配置して地域に密着した活動により業務を発展させる必要が増す。

そうした状況で、2024年5月に沖縄オフィスのリーダーとして赴任したのが渡だ。

異動の打診を好機と捉える

渡が赴任の経緯を話してくれた。
「元の所属は広島支社です。以前の上長(現在の福岡支社長)から2023年の7月に声がけいただき、12月にあらためて意思を確認され、快諾しました。」

生まれてからずっと広島に暮らす渡。任期が設けられているとはいえ、慣れ親しんだ地からの異動には、リスクが伴うことが想像にかたくない。
「広島で続けるという選択肢もありました。妻にも相談しましたが、あなたの人生だからやりたいことをやればいいよ、と言ってもらえました。広島のお客様の管理は継続できましたので、ベースを保ちつつ新しい環境に挑戦できることはとてもありがたく、決断を後押ししてくれました。」

2024年の3月に那覇で住まい探しを開始。GW中には入居の準備で妻を伴い沖縄入りし、合間には二人で沖縄の風光に親しんだ。道路を行き交う路線バスにはたくさんの広告。気持がよりポジティブになった。

沖縄のマーケットと目指すオフィスリーダー像

業務を開始したのはGWが明けた5月8日。
渡の眼には、沖縄のマーケット独自の気風、そして人が集う場所に共通する熱気の両面が映っている。
「以前社員旅行で訪れ、とても楽しかった思い出があります。実際にお客様に接してみると、沖縄、本土どちらの出身であるかをよく聞かれますが、沖縄の風土や文化に対する自負と強い愛着の表れだとおもいます。
そうした意識をお持ちの沖縄出身の経営者の方から、自分という県外出身者の提案を理解くださり契約いただけた時は、少しずつこの土地に受け入れられているという実感があり、格別です。」

売上の基礎となる、提案に賛同してもらえるクライアントの数を着実に増やしていくことが、目下のミッションであると肝に銘じているが、そのために必要とされるオフィスリーダーの在り方とは、どのようなものなのか。

「まずは、自身の売上げ。会社には事務所や通信環境を整えていただいてもらっていますが、そうした「箱」の中身を実りあるものにするのは自分次第だと意識しています。
まず売り上げるための基礎を固め、次のステップは人員の拡充です。沖縄で採用した社員に、キョウエイアドの考え方を身につけてもらい、存分に活躍できるようフォローする役割も担いたい。そしてこの沖縄オフィスが、社内で存在感のある事業所に育っていくようにしたいです。」

渡の奮闘はまだ端緒に就いたばかりであるが、そうした展望を早期に実現するため、公共交通以外の移動手段の確保の必要性を強く感じている。
「行動範囲を広げて自分の目で地理を詳しく把握したい。特に交通広告ではより具体的な仮説に落とし込めて、説得力のある提案が可能になります。そして、機動力が増せば対応力の向上にも繋がります。」

現在所属先である福岡支社からは、人的交流や情報共有などによりサポートを受けている。
「福岡支社の方々とは何度か酒席をともにし、楽しい時間を過ごさせていただきました。日頃は広告の空き枠情報などを共有してもらっています。」

「沖縄セッション」を控えて

キョウエイアドでは、全国からメンバーを特定の拠点に集めて営業活動をおこなう「営業キャンペーン」の呼称を「セッション」と改めた。
「売上という成果」をきちんと実現しながら、同時に「今日的な働き方に沿った営業活動のあり方のバージョンアップ」を求めることが主旨で、すでに北海道・東京・静岡・青森のオフィスで実施された。

沖縄でも11月に渡をリーダーとして、実施が予定されている。
「せっかく遠方から営業活動のために集まっていただくので、きちんと結果を出してもらい、成功体験を得ることが「楽しさ」に繋がるものにしたい。そして、慣れない土地で得た契約の味をかみしめてほしいですね。そのために精一杯フォローしたいです。」

渡自身も、かつて他所で実施された「営業キャンペーン」に参加したことがある。
「1週間契約が取れず、精神的に負のサイクルに嵌っていく感覚には参りました。幸い2週目に契約が取れ、そこから脱することができました。」
その時のメンバーは、いわば戦友とも言える存在で、それぞれの所属に戻ってからも気安く連絡する関係が続いている。

今を受け入れ、状況にワクワクする

生来の気質とでもいえるだろうか。
単身沖縄で働くという、自らが置かれた立場を、ある種の冒険として楽しんでいるように見受けられる。
「確かに一人であることを楽しめるタイプかもしれません。異動はリスクを伴うものかも知れないし、時には凹むこともありますが、逆にそうした状況にワクワクしてしまう自分がいます。まだ着任して僅かな時間しか経っていませんが、自分の経験値を信じ仕事に向き合えばなんとかなるのかな、と考えています。」

定期的に広島の自宅に戻り、その間はオンラインで業務を遂行している。
しかし単身沖縄で生活することが基本となった現在、ワークライフバランスに対して自分なりの試みを続けている。

「まだあまり乗れていませんがロードバイクが趣味です。一度南部にあるアメリカンヴィレッジまで走りました。普段はジョギングや筋トレで体調維持につとめています。
これまで料理は妻に任せっきりでしたが、健康管理の一環で自炊も始めました。」

そうした日々を送るなか、沖縄本島の周囲に点在する離島を訪れてみたいという想いが募る。
「沖縄独特の鮮烈な景色や空気がそうしたところに凝縮されているのではないかと想像しています。」

「任期を全うする」というパッシブな言い方がある。渡は、むしろアクティブに土地を覆う空気の濃密さ、人々の温かさ、マーケットの賑いも含めた沖縄の全てを、見て、触れて、味わってみたいとおもっている。(了)