2026年7月16日

自治体メディア

地方創生を法から考える 自治体と企業に求められる視点

 

地方創生という言葉は、地域の活性化や観光振興、移住促進など、幅広い意味で使われています。企業にとっても、地域貢献や自治体との連携、採用活動、店舗展開などと関わる場面が増えてきました。
ただ、地方創生は単なる地域のPRではありません。人口減少や少子高齢化、東京圏への人口集中といった課題に対して、地域の仕事、暮らし、人の流れをどう支えていくかという、国の政策的な考え方が背景にあります。その考え方は、まち・ひと・しごと創生法という法律にもとづいています。

また、地方創生の多くは自治体の取り組みと深く関わります。自治体には、住民の福祉を増進し、地域の行政を自主的かつ総合的に進めるという役割が、地方自治法によって定められています。そのため、企業が地方創生に関わるときも、自社のPRや販売促進だけでなく、自治体の立場や公共性を理解しておくことが大切になります。

ここでは、地方創生という言葉が法律のうえでどのような意味を持つのか、地方自治法から見た自治体の役割、そして企業が地域づくりに関わるときの視点について説明します。

 

地方創生とは何かを法律から確かめる

地方創生は、地域を盛り上げるための合言葉のように使われることがあります。しかし、制度のうえでの意味をたどると、単なる地域活性化や観光のPRだけを指す言葉ではないことが分かります。

まち・ひと・しごと創生法が定める考え方

地域の人口減少や担い手の不足は、以前から多くの自治体が向き合ってきた課題です。過疎が進む地域では、暮らしを支える仕組みをどう維持するか、若い世代にどう残ってもらうかが、長く模索されてきました。こうした地域の課題が積み重なり、国全体で人口減少に向き合う必要性が高まる中で、2014年にまち・ひと・しごと創生法が定められました。地方創生という言葉が国の政策としてはっきりと位置づけられたのも、この時期です。

この法律は、少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目的としています。
ここでいうまち・ひと・しごとには、それぞれ意味があります。まちは、一人ひとりが夢や希望を持ち、安心して暮らせる地域社会をつくること。ひとは、地域社会を担う多様な人材を確保すること。しごとは、地域における魅力ある多様な就業の機会を生み出すことです。この三つを切り離さず、一体のものとして進めていく考え方が、地方創生の土台になっています。

つまり、地方創生は、観光客を増やすことや特産品を広めることだけを指すわけではありません。働く場、住まい、子育て、人の流れといった、地域の暮らし全体に関わる政策なのです。国はこの法律にもとづいて総合戦略を定め、自治体もそれぞれの地域に合わせた戦略をつくって取り組みを進めてきました。

企業が地方創生に関わるときも、この前提を知っておくことが役に立ちます。地域のイベントに協賛する、広告を出す、自治体と連携するといった活動は目に見えやすいものですが、それが地域のどの課題に関わるのかを整理しなければ、単なる企業のPRに見えてしまうこともあるからです。

地域ごとの実情に合わせて考えるもの

地方創生は、全国どこでも同じ形で進めればよいというものではありません。法律が示しているのは方向性であり、実際の取り組みは地域ごとに考えることが前提になっています。

同じように人口が減っている地域でも、課題の中身は地域によって異なります。観光地であれば、訪れる人をどう地域経済につなげるかが課題になるかもしれません。郊外の住宅地であれば、子育て世帯や高齢者の暮らしをどう支えるかが重要になります。工業地域では、人材の確保や企業の誘致が大きなテーマになることもあります。
同じ地域を元気にするという言葉でも、必要な取り組みは地域によって変わります。交通手段、産業の構造、人口の構成、周辺の都市との関係、日常の移動範囲などを見なければ、その地域の本当の課題はつかみにくいものです。

だからこそ、地方創生では、地域の実情を見たうえで取り組みを考える姿勢が欠かせません。実際に地域づくりを進めるのは、自治体や地域団体、地元の企業、そこで暮らす人たちです。外から見た印象だけで地域を語るのではなく、その地域で暮らす人、働く人、訪れる人の動きを丁寧に見ることが大切になります。

さらに、同じ取り組みに見えても、その狙いによって進め方は変わってきます。たとえば企業誘致を考えるとき、地域に雇用を生み出すことを主な目的にするのか、働く人やその家族に移り住んでもらい、住民を増やすことを目指すのかによって、力を入れる部分は変わります。
前者であれば、地元で働きたい人と企業をどうつなぐかが大切になりますし、後者であれば、住まいや子育ての環境を含めた、移り住みやすさの整備が重要になります。

子育ての支援についても同じことが言えます。今その地域で暮らす世帯が子育てしやすい環境を整え、地域の中で安心して子どもを育てられるようにするのか、それとも子育て世代に新しく移り住んでもらうことを目指すのかで、必要な取り組みは変わってきます。どちらも子育てを支えるという点では同じように見えますが、向き合う相手も、伝えるべき相手も違ってくるのです。

だからこそ、地方創生では、何を目指すのかをはっきりさせることが欠かせません。目的があいまいなまま取り組みを進めると、施策どうしがかみ合わなかったり、効果が見えにくくなったりすることもあります。
これは企業の立場から考える場合も同じです。地域に関わる広告や情報発信は、広く目立てばよいというものではありません。誰に届けるのか、どの地域課題と関係しているのか、自治体や地域団体の目的とずれていないか。こうした点を確かめることで、地域との関わり方はより現実的なものになっていきます。

 

地方自治法から見た自治体の役割

地方創生は、国が方向性を示す政策である一方、実際の取り組みは地域ごとに進められます。その中心になるのが、都道府県や市区町村などの自治体です。自治体がどのような役割を担っているのかは、地方自治法という法律に定められています。

住民の福祉の増進が基本にある

地方自治法の第1条の2は、地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする、と定めています。自治体は、地域をPRするためだけに存在しているのではなく、そこで暮らす人の福祉を支えることを基本にしているのです。

この考え方は、地方創生にもそのまま当てはまります。観光客を増やすこと、移住者を呼び込むこと、企業を誘致すること、地域の産品を広めることは、地方創生の取り組みとしてよく見られます。ただし、それらはあくまで手段の一つです。最終的には、地域で暮らす人にとって、働きやすい、子育てしやすい、移動しやすい、安心して暮らし続けられるといった状態につながっているかが問われます。

たとえば観光のPRを行う場合でも、訪れる人が増えればそれでよいとは限りません。地域の事業者に経済の効果が広がるのか、住民の暮らしに負担がかかりすぎないか、地域の文化や景観を守りながら続けられるのか。自治体は、こうした複数の視点を見ながら取り組みを考える必要があります。

企業の広告であれば、商品やサービスを知ってもらうことが大きな目的になります。一方、自治体の情報発信では、地域全体にとっての意味が求められます。特定の人や企業だけに利益が偏っていないか、住民に対して説明できる内容になっているか。こうした点も大切になります。住民の福祉を支えるという基本を外して、地方創生を考えることはできないのです。

公共性と説明責任が求められる

自治体の地方創生では、民間企業の取り組み以上に、公共性と説明責任が重要になります。これも法律の定めと深く関わっています。
地方自治法の第2条は、地方公共団体は、その事務を処理するにあたっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない、と定めています。地域の魅力を発信する場合でも、自治体の予算を使う以上、なぜその取り組みを行うのか、誰に向けたものなのか、どのような効果を見込むのかを説明できることが求められます。

さらに、地方自治法の第96条では、条例を設けたり改めたりすること、予算を定めること、決算を認定することなどが、議会の議決すべき事件として定められています。地方創生に関わる取り組みも、予算を伴う場合には、こうした自治体の手続きの中で進められます。
これは、自治体の動きが遅いという話ではありません。地域全体に関わる取り組みだからこそ、一定の手続きや合意の形成が必要になるということです。

企業が自治体に地方創生の提案をするときは、この点を理解しておくと役に立ちます。自社にとって魅力的な企画であっても、自治体の側から見れば、住民への説明、公平性、予算の妥当性、地域課題との関係を確かめなければならないからです。自治体の立場から見ると、目立つ企画であること以上に、地域にとってなぜ必要なのかを説明できることが大切になります。

 

企業が地方創生に関わるときの視点

地方創生は、自治体だけで進めるものではありません。地域で事業を行う企業、地域に拠点を持つ企業、地域との連携を考える企業にとっても、関わりのあるテーマです。法律が定める自治体の役割を理解しておくことで、企業の関わり方はより実りのあるものになります。

企業の活動も地域づくりの一部になる

企業は、地域の中でさまざまな役割を持っています。店舗を出す、工場を置く、雇用を生む、商品やサービスを提供する、イベントに協賛する、地域の情報を発信する。こうした活動は、企業にとっては事業の一部ですが、地域から見れば、雇用、買い物の環境、にぎわい、移動、観光、採用などに関わる要素になります。

たとえば、地元の企業が採用の情報を発信することは、自社の人材確保だけでなく、若い世代が地域で働くという選択肢を知る機会にもなります。商業施設や店舗の広告は、地域の消費をうながすだけでなく、日常の行動範囲の中に新しい目的地をつくることにもつながります。観光地での広告や案内は、訪れた人の回遊をうながし、地域の事業者との接点を広げる役割を持つこともあります。

もちろん、企業の活動のすべてが地方創生になるわけではありません。大切なのは、その活動が地域のどの課題と関係しているのかを整理することです。地域の雇用につながるのか、訪れる人を増やすのか、地域内の移動を助けるのか、地域の産業の認知を広げるのか。目的をはっきりさせると、企業の取り組みは単なる広告や協賛ではなく、地域づくりの一部として見えやすくなります。

自治体の目的を理解した連携が必要になる

企業が自治体や地域団体と連携するときは、相手の目的を理解することが欠かせません。
企業は、売上、認知度、採用、ブランドのイメージといった成果を重視します。一方で、自治体は、地方自治法が定めるとおり、住民の暮らし、公共性、公平性、説明責任を重視します。この違いを理解しないまま提案すると、企業の側では地域貢献のつもりでも、自治体の側には自社のPRの色が強い企画として受け止められることがあります。

たとえば地域のイベントへの協賛を考える場合でも、企業名を大きく出すことだけが目的になると、地域の取り組みとしての意味は弱くなります。自治体や地域団体が見ているのは、そのイベントが地域にどのような効果を生むのか、住民や訪れる人にどのような価値があるのか、続けて実施できるのかといった点です。
広告や情報発信でも同じです。交通広告、屋外広告、ウェブ広告、地域のメディアなどは、地域に情報を届ける手段として有効です。ただし、媒体を使うこと自体が目的になってしまうと、地方創生の文脈からは離れてしまいます。誰に伝えるのか、どの地域課題と関係しているのか、自治体や地域団体の取り組みとどうつながるのかを考えることが、地域に受け入れられる関わり方につながります。

 

まとめ

地方創生は、地域を元気にするための取り組みとして語られることの多い言葉です。しかし、その中身を法律からたどると、単なる観光のPRやイベントの開催だけを指すものではないことが分かります。
まち・ひと・しごと創生法が示すとおり、人口減少や少子高齢化、東京圏への人口集中といった課題に向き合い、地域の仕事、暮らし、人の流れを支えていく政策なのです。

自治体にとっての地方創生は、住民の暮らしを支え、地域の将来を考える取り組みです。地方自治法の第1条の2が定めるように、自治体は住民の福祉の増進を基本として、地域の行政を自主的かつ総合的に進める役割を担っています。そのため、地方創生に関わる取り組みには、公共性、公平性、説明責任が求められます。目立つ企画であることよりも、地域にとってなぜ必要なのかを説明できることが大切になります。

一方、企業にとっての地方創生は、地域との関わり方を見直す機会でもあります。店舗の展開、採用の活動、地域イベントへの協賛、広告の出稿、自治体や地域団体との連携など、企業の活動は地域と無関係ではありません。
ただし、自社のPRや販売促進だけを前面に出すと、地域の側の目的とずれてしまうことがあります。まず地域の課題を理解し、そのうえで自社の活動が地域の雇用、にぎわい、移動、観光、産業、暮らしにどのような意味を持つのかを考えることが、地域に受け入れられる関わり方につながります。

地方創生は、自治体だけのものでも、企業だけのものでもありません。地域で暮らす人、働く人、訪れる人にとって意味のある取り組みとして進めることが大切です。広告や広報も、そのための手段の一つです。誰に、何を、どこで、どのように伝えるのかを丁寧に設計することで、地域の取り組みはより伝わりやすくなります。

私たちは、全国の拠点を通じて、交通広告や屋外広告、エリアマーケティングを軸とした地域に根ざした広告展開を支援してきました。自治体や地域団体と連携した情報発信、地域課題に寄り添った広告のご提案も承っています。
地域に向けた広告や情報発信をご検討の際は、ぜひお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

 

運営者情報

運営者
株式会社キョウエイアドインターナショナル
住所
東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル17階
お問い合わせ
https://kyoeiad.co.jp/contact/
電話番号
0120-609-450

関連記事