2026年9月17日

マーケティング

生成AIの文章は誰のもの? 著作権と利用規約から考える法律の基本

 

生成AIが作成した文章について、誰に権利があるのか、著作権はどのように扱われるのかという問題は、社内でもしばしば議論に上がります。

生成AIを提供する企業は、それぞれ利用規約やポリシーを定めていますが、その内容だけで著作権の有無が決まるわけではありません。国によって法律やその解釈も異なり、日本で利用する場合には日本の著作権法などに基づいて考える必要があります。

生成AIと著作権の関係については、判例や裁判例がまだ十分に積み重なっているとはいえません。文化庁も、こうした状況を踏まえて「AIと著作権に関する考え方について」を公表しています。

ここでは、生成AIで作った文章を中心に、AI企業の考え方や利用規約の違い、日本の法律ではどのように考えられているのかについて説明します。

 

生成AIで作った文章は誰のもの?

生成AIで文章を作ったとき、最初に気になるのが、その文章を誰がどこまで自由に使えるのかという問題です。生成AIを提供する企業が利用規約で定めている生成物の扱いと、日本の法律上で著作権が認められるかどうかは、分けて考える必要があります。

生成AIごとに出力の扱いが違う

ChatGPTを提供するOpenAIは、利用者とOpenAIとの関係では、適用される法律で認められる範囲において、利用者が生成された文章や画像などの出力を所有すると定めています。OpenAIが出力について何らかの権利を持つ場合も、その権利を利用者へ譲渡するとしています。一方で、生成AIの性質上、似た内容がほかの利用者にも生成される可能性があることも明記されています。
つまり、ChatGPTが作った文章は規約上は利用者が使えるものであり、OpenAIが自社のものとして囲い込む考え方ではありません。ただし、似た文章が別の利用者にも生成される可能性があるため、自分だけが独占して使える文章とは限らない、という点には注意が必要です。

Claudeを提供するAnthropicも、利用規約で、出力についてAnthropicが持つ権利がある場合には、それを利用者へ譲渡するという考え方を示しています。適用される規約は、個人向けと法人向けなどプランによって内容が異なるため、実際に利用する際には自分に適用される規約を確認する必要があります。

なお、Anthropicは2026年8月、今後リリースするClaudeモデルが生成する文章に、機械的に読み取れる透かしを入れることを発表しました。これは、EU AI法が求める、AIが生成したコンテンツを識別できるようにする義務に対応するためのものです。文章の中に利用者の名前や見える文字を書き込むのではなく、文章を生成する際の言葉の選び方にごくわずかな規則性を持たせ、後から「Claudeがこの文章の作成に関わった可能性がある」と統計的に推定できるようにする仕組みです。特定の利用者や組織、会話を特定できる情報は含まれないとされており、透かしが付いていることと、その文章の所有権や著作権が誰にあるかは別の問題だと、Anthropicも明言しています。

Geminiを提供するGoogleも、一部のサービスで生成したオリジナルコンテンツについて、Googleが所有権を主張しないと利用規約に記載しています。
Googleでは、AIが生成したコンテンツを識別しやすくするために「SynthID」という技術も使われており、文章の場合はAIが次の言葉を選ぶ確率をわずかに調整することで、人の目には分からない特徴を持たせています。Anthropicが採用したテキストの透かしも、この技術のもとになったGoogle DeepMindの手法をベースにしたものです。
Googleの利用規約では、生成AIによるコンテンツを人間が作成したものだと誤解させるような利用も禁止事項として挙げられています。

このように、ChatGPT、Claude、Geminiはいずれも、生成した文章をAI企業が一方的に自社のものとして独占する考え方ではありません。一方で、AIが作った文章をどのように識別するか、どのような使い方を認めるかについては違いがあります。

生成AIはこの3つだけではなく、個人向け、法人向け、外部システムと連携するためのAPIなど、サービスの形によって適用される規約が変わる場合もあります。生成AIならすべて同じと考えず、自分が使っているサービスの最新の利用規約やポリシーを確認することが必要です。

AIに聞いても判断は人間

利用規約のどこを見ればよいか分からないときは、使っているAI自身に聞いてみる方法があります。生成した文章の権利について運営会社はどのように定めているか、その根拠となる規約はどこにあるかを尋ねれば、調べる手掛かりを得ることができます。

ただし、AIが答えた内容をそのまま信じて終わりにするのは危険です。生成AIは、回答の内容が正しいことを保証したうえで文章を作っているわけではありません。根拠があいまいな内容や、実際には存在しない情報を、もっともらしい文章として答えることもあります。こうした現象は「ハルシネーション」と呼ばれています。
OpenAIは、AIの出力が常に正確とは限らず、利用者自身が正確性や利用目的への適切さを確認する必要があると規約に記載しています。Anthropicも出力の正確性を独自に確認するよう求めており、GoogleもGeminiが不正確な情報を事実のように提示することがあると説明しています。

生成AIは、既存の文章をそのまま切り貼りして回答しているわけではありません。大量の文章などから言葉の使われ方や並び方の傾向を学び、入力された内容に応じて次に続く言葉を予測しながら文章を作っています。人間も、これまでに読んだ本や記事、仕事で得た知識、会話や経験などをもとに言葉を組み立てるという点では、過去の情報を材料に新しい文章を作るという共通点があります。

大きく違うのは、その文章に対する責任です。人間が自分の名前で文章を出すときには、内容が正しいか、読み手に誤解を与えないか、公開して問題がないかを考えます。間違った情報を出せば、訂正を求められたり、信用を失ったりすることもあります。生成AI自体は、そのような意味で文章に責任を持つ主体ではありません。もっともらしい文章を作ることはできても、公開してよいか、事実として使ってよいかを最終的に判断するのは人間です。

そして、利用規約に「生成した文章は利用者のもの」と書かれていたとしても、それだけで日本の著作権法上、その文章に利用者の著作権が認められるわけではありません。

 

AI生成物と日本の著作権法

AI企業の利用規約は、企業と利用者との間で定められたルールです。一方、その文章が日本の著作権法で保護される著作物になるかどうかは、日本の法律に基づいて判断されます。

AI利用だけで著作権は生まれない

日本の著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」としています。そのため、人がほとんど創作に関わらず、AIが自律的に生成しただけの文章について、AI自身が著作者になるとは考えられていません。

一方、人間が自分の考えを表現するための道具としてAIを使った場合には、AIを使って作った文章であっても著作物として認められる可能性があります。
文化庁は、人間に「創作意図」があり、生成する過程で「創作的寄与」が認められるかどうかを、一連の過程から総合的に判断するという考え方を示しています。何を作りたいかという意思があり、完成した表現に人間自身の創作がどこまで反映されているかを見る、ということです。

たとえば、「旅行についてコラムを書いて」とAIに指示し、出てきた文章をほぼそのまま使う場合と、伝えたい内容や構成を人間が考え、細かな指示を出し、AIの文章を確認しながら表現を修正して自分の文章として仕上げる場合では、人間の関わり方が違います。
ただし、長いプロンプトを書けば著作権が発生する、生成し直した回数が多ければ著作物になる、何割書き換えればよい、といった明確な基準があるわけではありません。文化庁も、生成を試した回数が多いこと自体は創作的な関与にはならず、人間が生成された内容を確認しながら指示を修正するなど、一連の過程を見て判断する必要があるとしています。また、人間がAI生成物に創作的な加筆や修正を行った場合には、その加筆や修正部分について著作物性が認められることが一般的に考えられます。

ここで、利用規約との違いがはっきりします。OpenAIやGoogleなどが「生成物の所有権を主張しない」と定めていることと、その文章について日本の法律上、自分に著作権が発生することは同じではありません。AI企業との関係では自由に使える文章でも、その文章自体が著作権によって保護されるかどうかは別に考える必要があります。

AI生成物も著作権侵害になりうる

自分が作った文章に著作権があるかという問題とは別に、その文章が誰かの著作権を侵害していないかという問題もあります。AIが作った文章だからといって、既存の著作物との関係を考えなくてよいわけではありません。
著作権侵害を考える際には、「類似性」と「依拠性」という言葉がよく使われます。類似性とは、既存の作品にある創作的な表現と似ているかどうかです。依拠性とは、その既存作品をもとにして作ったと考えられるかどうかです。AI生成物であっても、こうした要素が認められれば、生成や利用が著作権侵害になる可能性があります。

たとえば、他社のWebサイトの記事をAIに入力し、意味は変えずに別の文章にしてほしいと指示したとします。言葉を少し置き換えただけで、元の記事にある特徴的な表現が残っていれば、AIを使ったから問題がなくなるわけではありません。

また、「AIの学習」と「AIが作った文章を公開すること」も分けて考える必要があります。日本の著作権法第30条の4では、情報解析など、著作物に表現された思想や感情を楽しんだり味わったりすることを目的としない一定の利用について、著作権者の許諾を得ずに利用できる場合があります。AI開発のために著作物を学習用データとして利用することも、この規定が関係する場合があります。
ただし、AIの学習であれば何を使っても自由という意味ではなく、利用の目的や方法によっては、この規定が適用されない場合もあります。学習する段階、文章を生成する段階、生成した文章を広告やWebサイトなどで公開する段階では、確認すべき問題が異なります。

生成AIの利用者としては、AIが作ったのだから大丈夫と考えるのではなく、生成された文章を自分で確認し、既存の記事や作品と不自然に似ていないか、公開して問題のない内容かを判断する必要があります。

 

著作権以外に注意したい法律

生成AIを仕事で使う場合、確認したいのは著作権だけではありません。他人の文章や画像を利用する場合には著作者の人格的な権利が関係することがあります。実在する人物について文章や画像を生成すれば、肖像やプライバシー、名誉などの問題が生じる可能性もあります。

著作者人格権とプライバシー

著作権と一緒に語られることが多いものに「著作者人格権」があります。著作者人格権は、著作者本人の人格的な利益を守る権利です。著作物をいつ公表するかを決める公表権、名前をどのように表示するかを決める氏名表示権、自分の意に反して作品を改変されないための同一性保持権があり、財産的な権利である著作権とは別のものです。
生成AIとの関係では、すでに存在する文章や画像をAIで加工するときなどに関係する可能性があります。他人が書いた文章をAIに入力して大きく書き換えたり、他人が制作した画像を本人の意図とは異なる形に変更したりすれば、著作権だけでなく著作者人格権についても考える必要があります。

一方、実在する人物の顔や名前などに関係する問題は、著作者人格権とは別のものです。生成AIで実在する人物によく似た画像を作ったり、本人が発言していないことを、あたかも本人が話したような文章や音声にしたりすれば、肖像に関する権利、プライバシー、名誉などが問題になる可能性があります。著名人を広告に登場させたような生成物では、氏名や肖像が持つ顧客吸引力を保護するパブリシティ権との関係も考える必要があります。
AIが作ったものだから実在する本人とは関係がない、とは言い切れません。特に広告や企業のWebサイトで公開する場合には、誰かの権利や信用を傷つける内容になっていないかを確認する必要があります。

AIへ入力してよい情報かも考える

生成AIでは、出てきた文章だけでなく、AIへ何を入力するかにも注意が必要です。顧客の氏名や連絡先、取引履歴、社員情報、未公開の企画書、取引先から預かった資料などを、そのままAIへ入力する場面が考えられます。

個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、利用目的の範囲内であるかなどを確認するとともに、その情報がサービス提供者によって機械学習に利用されないことなどを十分に確認するよう注意喚起しています。
個人情報に該当しなければ何でも入力してよいわけでもなく、取引先との秘密保持契約がある情報、社外秘の企画、公開前の商品情報、営業上重要な情報などは、会社のルールや契約内容も確認する必要があります。

利用する生成AIによって、入力したデータをサービス改善や学習に利用するかどうか、設定によって利用を拒否できるかどうかなども異なります。ここでも、自分が使っているサービスの最新の利用規約やプライバシーポリシーを確認することが重要です。

日本では2025年に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」、いわゆるAI法も施行されました。2025年6月4日に公布・一部施行され、同年9月1日に全面施行されています。
AIの活用を促進するとともに、AIによって生じるリスクにも対応するための基本的な枠組みを定めた法律です。ただし、このAI法によって、AIで作った文章の著作権は誰にあるかが直接決められたわけではありません。著作権については著作権法、個人情報については個人情報保護法というように、既存の法律も引き続き関係します。
また、2026年3月にはAI事業者ガイドラインが第1.2版へ改定されており、AIをめぐる制度や考え方は現在も更新が続いています。

 

まとめ

生成AIで作った文章は、利用しているサービスの規約上は自由に使える場合でも、日本の法律上で必ず著作権が認められるとは限りません。反対に、自分に著作権があるかどうかとは別に、生成された内容が既存の著作物や他人の権利を侵害していないかも確認する必要があります。

ChatGPT、Claude、Geminiを見ても、生成物の扱いやAI生成物を識別する方法には違いがあります。ほかの生成AIも含め、利用するサービスごとに規約やポリシーを確認することが必要です。
分からなければ、使っているAIに、この文章は自由に使えるのか、その根拠となる規約はどこにあるのかと聞いてみることもできます。ただし、AIが示した答えそのものを根拠にするのではなく、案内された公式情報まで確認することが大切です。

生成AIは文章を作ることができます。しかし、その文章が正しいか、誰かの権利を侵害していないか、企業として公開してよい内容かを判断し、その結果に責任を持つことまでAIに任せることはできません。
広告やWebサイトの制作でも、生成AIを活用する場面は今後さらに広がると考えられます。便利さや効率だけを見るのではなく、最後は人の目で内容や権利関係を確認し、どのように使うかを判断することが必要です。

生成AIを活用した広告やWebコンテンツの企画・制作をご検討の際は、ぜひご相談ください。

※本記事は生成AIと法律について一般的な考え方を紹介するもので、個別の事案について法的な判断を示すものではありません。具体的な権利関係について判断が必要な場合は、弁護士などの専門家へご相談ください。

 

 

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