2026年8月3日
マーケティングそのピクトグラムで大丈夫? 広告で意味を正しく伝えるための注意点
駅や空港、商業施設、街なかの案内表示では、さまざまなピクトグラムが使われています。文字を読まなくても意味をつかみやすく、限られたスペースにも配置できるため、広告の中で取り入れられることも珍しくありません。
ただし、ピクトグラムを入れれば、必ず分かりやすくなるとは限りません。作り手には意味が分かっていても、初めて見る人には何を示しているのか伝わらない場合があります。企業や商品のイメージに合わせて形を変えすぎたり、一つの記号に多くの意味を持たせたりすると、かえって誤解を招く恐れもあります。
広告で大切なのは、記号を使うことではなく、意図した意味が正しく伝わることです。
ここでは、ピクトグラムの基本的な役割を整理しながら、広告で使用する際に注意したい点について説明します。
目次
ピクトグラムは見れば分かる記号なのか
ピクトグラムは、言葉を使わずに情報を伝えるための図記号です。経済産業省のサイトでも、案内用図記号(JIS Z8210)は文字や言語によらず情報を伝えることができるものと説明されており、駅や空港、商業施設などで案内や誘導、安全に関する情報を示すために広く使われています。しかし、図で表されているからといって、誰にでも同じ意味が伝わるとは限りません。
ピクトグラムとアイコンやイラストの違い

ピクトグラムは、人や物、行動、場所などの特徴を単純な形に置き換え、意味を伝える図記号です。トイレや非常口、エレベーターなどの表示は、文字を読まなくても内容を判断しやすいように作られています。
似たものに、アイコンやイラストがあります。アイコンは、Webサイトやアプリで検索や保存、メニューなどの機能を示すために使われることが多い記号です。イラストは、商品の特徴や雰囲気を見せたり、広告に親しみやすさを加えたりする役割を持っています。
見た目が似ていても、使う目的は異なります。広告の中に小さな絵を配置しただけで、必ずしもピクトグラムとして機能するわけではありません。その絵を初めて見た人が、説明を読まなくても意味を判断できるかどうかが分かれ目になります。
たとえば、店舗の特徴を示すために、独自の記号を並べる広告があります。制作者は「予約可能」「子ども連れ歓迎」「キャッシュレス対応」といった意味を込めていても、見る人には単なる装飾に映ることもあります。意味の理解に長い説明が必要になった時点で、情報を簡潔に伝えるというピクトグラム本来の役割から離れてしまいます。
意味は経験や文化によって変わる
広く知られているピクトグラムでも、すべての人が同じように理解できるとは限りません。記号の意味は、見る人の年齢や文化、生活環境、過去の経験によって受け取り方が変わります。
国際規格のISO7001では、意味が理解できる範囲であれば、国や文化の違いによってグラフィックをある程度変更することが認められています。日本規格協会の解説記事でも、この考え方のもとで各国が独自のデザインを加えながら案内用図記号を運用している状況が紹介されています。裏を返せば、骨格となる意味の伝わり方から外れてしまえば、文化を反映したデザインであっても理解されにくくなるということです。
たとえば、ある機器やサービスを利用した経験がある人には分かりやすい記号でも、初めて利用する人には意味が伝わらないことがあります。Webサイトで一般的に使われている記号も、インターネットの操作に不慣れな人にとっては、何を押すためのものか判断しにくい場合があります。
広告では、作り手が見慣れていることを、消費者も知っていると考えてしまいがちです。しかし分かりやすさは、作り手の感覚だけで判断できるものではありません。ピクトグラムを使うときは、「見れば分かるはず」と決めつけず、誰が、どこで、どのような状況で見るのかを考える視点が欠かせません。
広告のピクトグラムが伝わらない理由
広告では、限られたスペースに情報を収めるため、ピクトグラムが使われることがあります。ただし、見た目を整えることを優先しすぎると、本来伝えたい意味がかえって分かりにくくなります。
独自性を出しすぎて意味が分からなくなる

広告では、企業や商品のイメージに合わせて、ピクトグラムの形や色を調整することがあります。ブランドカラーを使ったり、線の太さや角の丸みをそろえたりして、広告全体に統一感を出すこともできます。
その一方で、デザインを変えすぎると、何を示す記号なのか判断しにくくなります。一般的に使われている図記号であっても、人物の形を大きく崩したり、必要な部分を省いたりすると、別の意味に見えてしまいます。
特に注意したいのは、ピクトグラムを装飾として扱ってしまう場合です。広告の雰囲気に合わせることを優先し、線を細くしすぎたり、背景との明暗差を弱めたりすると、記号そのものが見えにくくなります。小さなサイズで掲載する広告では、細部がつぶれてしまう恐れもあります。
独自性を持たせること自体は問題ではありません。ただ、ピクトグラムは見た人が意味を理解できて初めて役割を果たします。企業らしさを加える場合でも、何を表しているかが失われていないかを確認する視点が必要です。
すでに広く使われている図記号がある場合は、その基本的な形を保つことも大切です。広告ごとに異なる表現を作るより、消費者が見慣れている記号を使ったほうが、短い時間でも意味を判断しやすくなります。
一つの記号に多くの意味を持たせてしまう
ピクトグラムは、情報を簡潔に示すことには向いていますが、複雑な内容を細かく説明することには向いていません。一つの記号に多くの意味を込めると、伝えたい内容が曖昧になります。
たとえば、人と建物を組み合わせた記号を作っても、それが「来店歓迎」なのか、「店舗スタッフ募集」なのか、「施設を利用できる」という意味なのかは、図だけでは判断がつきません。作り手の中では明確な意味があっても、見る人が同じように受け取るとは限らないのです。
広告では、伝えたい内容が多くなるほど、一つのピクトグラムに情報を詰め込みたくなるものです。しかし要素を増やすほど図が複雑になり、ひと目では読み取りにくくなります。人物、商品、場所、動作などを小さな記号にまとめて入れると、単なる模様に見えてしまうこともあります。
また、同じピクトグラムを複数の意味で使い分けることにも注意が必要です。ある広告では「予約」を示し、別の広告では「問い合わせ」を示すといった使い方をすると、消費者は意味を判断しにくくなります。社内では使い方が共有されていても、広告を見る人にそのルールは伝わりません。
ピクトグラムを使うときは、一つの記号に一つの役割を持たせることが基本です。細かな条件や補足が必要な場合は、無理に図だけで表現せず、短い言葉を添えたほうが正確に伝わります。
広告で正しく使うための注意点
ピクトグラムを使うときは、見た目の整い方だけでなく、初めて見る人が意味を判断できるかを確かめる必要があります。図だけで伝えきれない場合は、文字や配置によって補うことも大切です。
図だけに頼らず短い言葉を添える

ピクトグラムは、情報を素早く伝えるためのものですが、細かな条件や具体的な内容まで表現することはできません。何を示しているか分かりにくい場合は、短い言葉を添えたほうが、意味を正確に伝えられます。
案内用図記号のガイドラインでも、図記号によっては文字による補助表示が必要とされ、図記号だけでの単独使用は避けるよう定められています。公共の案内表示ですら図だけに頼っていないことは、広告での使い方を考えるうえでも参考になります。
たとえば、時計の記号だけでは、「営業時間」を示しているのか、「予約時間」を示しているのか、「所要時間」を示しているのか判断がつきません。「営業時間」「要予約」「所要時間30分」といった言葉を添えれば、見る人は迷わず意味をつかめます。
広告のスペースが限られていると、できるだけ文字を減らしたくなるものです。しかし文字をなくした結果、意味が伝わらなくなってしまえば、情報を簡潔にしたとはいえません。ピクトグラムは説明をすべて置き換えるものではなく、文章を読みやすくしたり、重要な情報に目を向けてもらったりするための補助と考える必要があります。
ピクトグラムと文字を併用するときは、両者が同じ意味を示しているかも確認します。図と文章の内容がずれていると、どちらを信じればよいのか分からなくなります。広告を作る側では意味が通じていても、予備知識のない人が見て迷わないかという視点が欠かせません。
掲載場所と見る人を想定して確認する
同じピクトグラムでも、掲載する場所や大きさによって見え方は変わります。パソコンの画面では分かりやすく見えても、駅貼りポスターや車内広告として掲出すると、小さすぎて形を認識できないことがあります。
案内用図記号のガイドラインでは、地図に用いる場合の最小寸法を8ミリ角、視距離1メートルで表示する場合の最小寸法を35ミリ角とするなど、具体的な基準が示されています。広告でピクトグラムを使う際も、実際に掲出するサイズで細部までつぶれずに見えるかを確かめる必要があります。
屋外広告では、歩きながら見たり、車や電車の中から見たりすることもあります。表示時間や見る距離が限られるため、細かな線や複雑な形は読み取れないかもしれません。背景と似た色を使うと、記号の輪郭が目立たず、存在そのものに気づかれないこともあります。
Web広告では、スマートフォンでの表示も確認が必要です。画面が小さくなると、複数のピクトグラムが並んでいても違いが分かりにくくなります。タップするためのボタンとして使う場合は、記号の意味だけでなく、押せる場所であることが伝わるかも重要です。
広告を見る人について考えることも欠かせません。子ども、高齢者、外国人、サービスを初めて利用する人では、見慣れている記号や理解しやすい表現が異なります。制作に関わっていない人に見てもらい、何を示しているように見えるかを確認する方法も有効です。
ピクトグラムの分かりやすさは、制作画面の中だけでは判断できません。実際に掲載される大きさや距離まで確認し、意図した意味が伝わるかを確かめることが大切です。
まとめ
ピクトグラムは、限られたスペースの中で情報を示したり、文字を読む前に内容へ気づいてもらったりするために使われています。広告でも、案内や特徴を簡潔に見せる手段として活用できます。
ただし、図で表しただけで、誰にでも同じ意味が伝わるわけではありません。作り手が分かりやすいと感じていても、見る人には別の意味に見えたり、単なる装飾として受け取られたりすることがあります。独自性を加えすぎれば、ピクトグラムとしての分かりやすさが失われる可能性もあります。
大切なのは、ピクトグラムを使うこと自体ではなく、広告を見る人が意図した意味を正しく理解できるかどうかです。図だけで伝わりにくい場合は短い言葉を添え、掲載する場所や大きさまで想定して確認する必要があります。
広告は、目を引くだけでは役割を果たせません。伝えたい情報が正しく届き、次の行動に迷わず進めることも大切です。ピクトグラムを使う際は、「見れば分かるはず」と決めつけず、本当に意味が伝わる表現になっているかを見直してみましょう。
広告の情報整理やデザインの見せ方でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。






