松本 諒太郎

本社営業本部
地方創生事業部
ディレクター

取材日:2025年5月28日

公開日:2025年7月11日

地域の課題を
自分事として捉える人

地方の賑わいの創出
自社のビジネスにつなげる

エリアマーケティングを標榜し、地域を見つめ続けてきたキョウエイアドでは、ここ数年来「地域創生プロジェクト」として、ふるさと納税や観光のPR、そして企業誘致やDX人材の育成など、地域に活力をもたらすための施策に注力している。

地方創生事業部はそうした活動の中核をなす部署であり、今年の5月から事業部化されたことで、社の方針をいっそう押し進めることが期待されている。

松本は2022年9月に入社。交通広告の営業職として2年の月日を過ごした。
「自己採点では60~70点の営業パーソンだったのではないかとおもいます。好不調の波があるなかで、毎月新たな気持ちで仕事に取り組むようにしていました。」
簡単には答えが出ない物事に、セルフコントロールを以て粘り強く取り組める資質の持ち主である。

キョウエイアドは2023年2月に地方創生事業に関連した業務を受託した北海道沼田町にオフィスを開設。地元の雇用を創出し、自社の広告ビジネスの拠点として運用することは、「地域とともに歩んでいく」という意思の表明でもあった。
2024年7月には奈良県宇陀市から企業誘致事業を受託。信用金庫の建物を地元産の木材をふんだんに使用して改装した「奈良サテライトオフィスうだSOUDA」にオフィスを開設。沼田町同様、地元出身者を雇用する。

そうしたなか、地方創生の取り組みを事業部化しようとする機運が社内で芽生え、メンバーとしての参画を打診される。
「前職でサポートセンターの電話オペレーターの管理業務に就いていた点も考慮されたのかも知れません。地方創生に対する取り組みの様子を伝える社内掲示板を覗いてはいましたが、詳しくは知りませんでした。しかし、過疎化や少子化の解消など公共性のあるテーマに携われることは、自身が成長できる機会でもあるとおもい、とてもポジティブに受け止めていました。」

法人客相手の広告営業から、例えば自治体への視察ツアーの実施など、業務内容は変化した。基本的には各自治体の公募案件に対して提案をまとめて応札する。普段は在宅勤務と本社出勤を併用する勤務スタイルで、資料や提案書の作成では政府系機関の業務委託先で経験を積んだスタッフに質問しながら作業を進めることが多い。

宇陀市のオフィスでは指導をする立場とはいえ、現地採用スタッフである西谷流輝(りく)と、フランクな関係を築き広告営業の架電業務を遂行し、同時に多くのアポイントをこなす。

松本に宇陀市の印象と仕事のやりがいを話してもらった。
「宇陀市は吉野杉などの銘木の産地に近く、林業が盛んな土地です。そして、いにしえの書物に薬狩りについての記述があるように、歴史的に薬草、とくに「大和当帰」が有名で、いくつかの著名な製薬会社の創業にも深く関わりがあります。また、2022年には「オーガニックビレッジ宣言」により食と農業の活性化によるまちづくりを目指すなど、大きく言えば「いのち」に対して正面から取り組んでいる土地です。そんな宇陀をより魅力的な場所とするため、地域の方々と協力しながら企業誘致をはじめとしたさまざまな施策を推進することに、大きなやりがいを感じています。」

大和高原にある宇陀市は冷涼な気候が特徴だが、春には桜が綺麗に咲き揃う

日本書紀にも登場する墨坂神社

コミュニケーションを重ね、無形の財産を築く

今回の取材では、宇陀市の発展に熱意を寄せる方々が、松本との撮影を快諾してくださった。

「宇陀市ではかねてより地方創生関連事業に関するプロポーザルを実施しています。令和6年度のプロポーザルでは、他の事業者の提案との比較検討、審査過程を経た結果、キョウエイアドさんに発注することになりました。」と柔和な表情で語る、森嶋洋二 宇陀市農林商工部商工産業課 課長補佐は、「コネクションの豊富さにより、令和6年度事業では多くの企業の皆様とつながることができました。

今後、1件でも多く企業誘致につながるように取り組みたい。」と行政サイドの担当者としての意気込みとキョウエイアドへの感謝を述べた。

森嶋洋二 宇陀市農林商工部商工産業課
課長補佐と
※役職や肩書は取材時のもの


そして宇陀市で金属加工業を営み、独創的な商品開発で話題を呼んでいる植平秀次 植平工業株式会社 代表取締役社長からは、大阪と名古屋という2つの経済圏を両睨みできる宇陀市の産業的立地がもつ可能性をお話いただき、「キョウエイアドさんには提案力と実行力を望みたい」との言葉をいただいた。

口調は企業経営者として、毅然としたものであったが、松本に注がれる眼差しは、見知らぬ土地で奮闘する若者に対する温さを宿していた。

植平秀次 植平工業株式会社 代表取締役社長と
※役職や肩書は取材時のもの


一方、宇都宮に本社を構え、宇陀市で「ふるさと納税」関連事業を手掛ける石井利明 株式会社ファーマーズ・フォレスト 宇陀事業部所長からは、他所からの参入者として「同士」のような共感が伝わってきた。「今後協力しあえるところは、手を取り合って進んでいきたい」という言葉は、同社が有する地域活性化に対するヴィジョンと実績の確かさとあいまって、両社のビジネスに大きな可能性を展望できるものだった。

地域にさまざまなかたちで携わる方々のもとを訪れてコミュニケーションを重ね、提案や意見の交換を通じて信頼という目に見えない財産を築いていく。つまりキョウエイアドが創業以来およそ80年にわたり営々と紡いできた「エリアマーケティング」そのものの姿が、松本の活動に現場には息づいている。

石井利明 株式会社ファーマーズ・フォレスト
宇陀事業部 所長と
※役職や肩書は取材時のもの

地域の課題解決、その先にあるもの

「キョウエイアドは現在35の拠点を構えていますが、実績を積み上げ自治体から請われることで人員を拡充したいです。そして、自治体が望む産業や企業の誘致が進めやすくなる補助金制度のようなものの実現のお手伝いができたら、と考えています。」

プライベートでは6歳と3歳の男の子の父親。
「休日の一緒に過ごす時間がとても気分転換になります。また、動画配信サービスを利用して子供向けのアニメコンテンツを一緒に楽しんだりもします。もともと子供が遊んでいたゲームに自分の方が夢中になってしまったり。妻にすれば、騒がしい人が一人増えたような感じではないですかね。」
もともとボルダリングという人工的な凹凸が設定された壁面登っていくスポーツを楽しんでいて、最近は子供とそうした施設を訪れることもある。

「いま取り組んでいる仕事って、この子達の未来にもつながっているのだなって、最近よく思うんです。」
松本は人々との交流を通じ、地域の課題を自分ごととして、おもいを馳せている。(了)