2026年8月24日

マーケティング

配達無料から考える予算設計 広告費・販促費・流通コストを目的から考える

 

最近、飲食店の宅配サービスの中に、店舗で食べる時と同じ価格で、しかも配送料もサービス料も一切かからないというアプリが登場し、話題になっています。
これまでの宅配サービスでは、商品価格が店頭より高く設定される場合があり、さらに配送料やサービス料が加わることも珍しくありませんでした。それだけに、なぜここまで無料にできるのか、不思議に思った方も多いのではないでしょうか。
無料でサービスを提供し続けるからには、どこかにその費用を負担している存在があるはずです。

広告宣伝費、販売促進費、販売手数料、配送費といった費用は、それぞれ目的や社内の基準にもとづいて、今も別々に区分されています。ただ、経営の立場から見れば、これらの費用は、消費者に『知ってもらう』『選んでもらう』『使い続けてもらう』という共通の目的に関わる場合があります。
会計上は別の勘定科目であっても、目的を軸に置けば、横断して比較できる部分がある、ということです。

ここでは、この「目的から費用を考える」という視点が、昔からどのように使われてきたのか、そして今、宅配サービスの世界でどう形を変えているのかを、実例を交えながら掘り下げていきます。

 

費用は分かれても目的は重なる

まず押さえておきたいのは、広告宣伝費と販売促進費という区分は、支出の目的や内容、企業の会計方針にもとづいて、今もしっかりと使い分けられているという点です。
ただし、その目的をたどっていくと、どちらも「消費者に知ってもらい、選んでもらう」という同じゴールにつながっていることが少なくありません。

会計上の区分と共通の目的

国税庁が公開している資料では、交際費等と広告宣伝費との区分について説明されており、抽選による金品の交付や、金品引換券付き販売による景品の交付など、不特定多数の消費者に対して宣伝的な効果を意図した費用は、交際費ではなく広告宣伝費として扱われると示されています。
ここでのポイントは、対象が「不特定多数」であるかどうかという点であり、金額の大小や施策の派手さで区分されているわけではありません。

これは交際費との線引きを説明したものであり、広告宣伝費と販売促進費の違いそのものを定めたものではありませんが、不特定多数への宣伝を目的とした支出が広告宣伝費に位置づけられるという考え方は、この資料からも読み取れます。

販売促進費については、広告宣伝費との違いを一律に判断できる明確な線引きがあるわけではなく、支出の内容や企業の会計方針に応じて処理されています。
つまり、勘定科目としては分かれていても、どちらも「消費者に商品やサービスを知ってもらい、選んでもらう」という目的を担っている場合が多いのです。

万博で幸之助が示した視点

よく知られている例に、1970年に開かれた大阪万博での出来事があります。
松下電器(現、パナソニック株式会社)が出展した松下館は、会期中760万人もの入場者でにぎわい、炎天下での入館待ちの行列が長く伸びる日が続きました。
当時の会長であった松下幸之助は、待つ人のために日よけの大傘を用意させるとともに、館のマークを入れた紙の帽子を配るよう指示しました。来場者への配慮として始まった支出でしたが、結果として松下館の名前を印象づける役割も果たしたといわれています。

後年、幸之助自身は、同じ万博で展示したタイムカプセルについて、松下の名前が5000年後まで残ることを、宣伝費としては安く済ませられたという趣旨の発言を残しています。紙の帽子とタイムカプセルは別の取り組みですが、来場者への配慮や展示の工夫に、宣伝につながる価値を見いだしていたのでしょう。

同じような視点は、現代の販促施策にも受け継がれています。
たとえば食品メーカーが街頭でキッチンカーを使った試食・サンプリングイベントを実施するケースがあります。ある食品メーカーは、卵を使ったブランド商品の試食イベントを都内と大阪で行い、若い世代との接点を増やしながら、商品の認知向上と購入のきっかけづくりを目指したと紹介されています。
名目上の費用区分にかかわらず、こうした施策が果たしている役割は、広告宣伝費が担うはずの目的と大きく重なっているのです。

 

宅配業界に見る目的からの発想

こうした「目的から費用を考える」という視点は、近年のフードデリバリー業界の動きを見ると、さらにわかりやすい形で見えてきます。

「お店と同価格」という選択

韓国のEC大手クーパンの日本法人が展開する宅配サービス「ロケットナウ」は、2025年1月に東京都内の一部地域でサービスを開始し、配送料とサービス料を無料にする方針を打ち出しました。一部の加盟店では、アプリ上の商品価格を店頭価格と同一に設定しており、対象となる店舗にはその旨を示すバッジが表示されます。
2026年6月には、アプリの累計ダウンロード数が700万を突破したと発表されており、対象エリアも段階的に拡大しています。

ロケットナウの加盟店向けページでは、店頭と同じ価格にすることで価格を理由とした迷いを減らし、注文やリピート利用につなげると説明されています。広告でお得さを伝えるだけでなく、消費者が実際に支払う価格の負担を抑えること自体が、注文を後押しする役割を担っているのです。

広告という選択肢も併用する

ロケットナウは、同価格での提供という価格面の工夫だけでなく、加盟店向けの広告サービスも別途提供しています。
現在提供されているこの広告サービスは、店舗ごとに1日の広告予算を設定し、AIが表示条件や広告費を自動的に調整する仕組みです。対象店舗はアプリのカテゴリ画面や検索結果などに表示され、飲食店の露出機会を増やし、注文につなげることを目的としています。

同価格による提供は、購入時の価格面の迷いを減らす役割を担います。一方、アプリ内広告は店舗の露出を増やし、まだ利用したことのない消費者との接点をつくります。役割は異なりますが、どちらも注文につなげるという共通の目的に向けた施策です。

 

発注側企業に必要な視点

こうした動きは、飲食宅配という一つの業界にとどまる話ではありません。広告や販促を発注する側の企業にとっても、日々の予算の考え方を見直すきっかけになります。

目的から費用を組み立て直す

広告費、販売促進費、流通コストをそれぞれ別々の枠として管理していると、ある施策にどの枠を使うかを先に決めてしまい、その枠の中だけで効果を評価しがちになります。
ある施策は広告費の枠でしか評価されず、別の施策は販促費の枠でしか評価されないとなると、本来であれば横並びで比較すべき効果が、部門や勘定科目の違いによって見えにくくなってしまいます。

仮に、地域密着型のスーパーマーケットが、来店ポイントの還元を販促費、最寄り駅構内の広告を広告費、店内のデジタルサイネージを設備投資として、それぞれ別の担当者が別の基準で管理していたとします。この場合、駅の広告で来店のきっかけをつくり、店内のサイネージで追加購入を後押しし、ポイント還元で次回来店につなげるという一連の流れがあっても、効果を横並びで検証する仕組みがなければ、どの施策にどれだけ予算を厚くすべきかを正しく判断することは難しくなります。
もちろんここで挙げたのは一つの例にすぎませんが、勘定科目の違いを一度脇に置き、消費者に何を実現したいのかという目的を先に整理することで、見えてくるものは大きく変わります。

媒体プランニングという専門性

とはいえ、価格や送料、購入までの手間といった、消費者が購入をためらう要因を洗い出したうえで、そこに広告がどう関われるかを考える作業は、一つの媒体を単体で検討するのとは勝手が違います。
認知が足りていないのか、商品を体験する機会が不足しているのか、それとも購入時の負担が大きいのか。原因によって、有効な組み合わせは変わってきます。

当社では、交通広告や屋外広告、Web広告、店頭でのインストアメディア、イベントといった性質の異なる手法を扱ってきました。その経験をもとに、課題の整理から媒体の組み合わせまで、企画の段階からご提案しています。
特に地方自治体と連携した地域振興のプロジェクトでは、交通広告や屋外広告による認知形成と、自治体の広報媒体、店頭のインストアメディアを組み合わせて展開することも多く、目的から逆算して手法を組み立て直すという発想そのものが、すでに日々の業務になっています。

 

まとめ

配達無料という身近な事例から見えてきたのは、広告費・販売促進費・流通コストが会計上溶け合っているということではなく、これらの費用が「消費者に知ってもらい、選んでもらう」という共通の目的のもとで、横断して比較できるようになっているという現実です。
松下館の紙の帽子、ロケットナウの価格設計、アプリ内の広告サービスは、それぞれ異なる役割を担っています。それでも、消費者との接点をつくり、商品やサービスを選ぶきっかけを生み出すという目的ではつながっています。

広告や販促の予算を見直す際は、媒体を選ぶ前に、認知・体験・購入のどこに課題があるかを整理することが大切です。交通広告や屋外広告、Web広告、店頭施策などを組み合わせた展開を検討されている場合は、ぜひご相談ください。
お問い合わせフォームからお気軽にお声がけいただければ、目的に応じた媒体プランをご提案いたします。

 

 

運営者情報

運営者
株式会社キョウエイアドインターナショナル
住所
東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル17階
お問い合わせ
https://kyoeiad.co.jp/contact/
電話番号
0120-609-450

関連記事